日本語字幕:手書き書体下、柴田京子/シネスコ・サイズ(in Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS/コダック・デラックス
(米PG-13指定)シカゴ記念病院ERの医師ジョー(ケビン・コスナー)は、ボランティア医療のため赴任したベネズエラで不慮の事故によって妻のエミリー(スザンナ・トンプソン)を失う。うちひしがれたジョーは仕事に打ち込むが、その日から奇妙な出来事が身の回りで起こり始める。 |
神が信じられなくても、無宗教でも、信じる心があれば奇跡は誰にでも起こるし、その奇跡を信じることができると、この映画はいう。だからか、アメリカでの受けは良くなかったよう。だだいたい、ここのところずっとケビン・コスナーはアメリカでは受けないようだが。偶然の一致、シンクロニシティともいえる話題。もちろんテーマは“愛”。これを何のてらいもなく堂々と描けるところがアメリカらしい。しかし、手法はちょっと「シックス・センス(The Sixth Sense・1999・米)」チックでホラーな雰囲気。 日本はキリスト教的な下地があまり無いので、むしろこういう話の方が受け入れやすいのではないだろうか。臨死体験を研究しているシスターが、超常現象に悩む主人公に言う「あなたは、自分が医者になりたいと強く希望して医者になったのではないですか。強く思うことは、それを現実にしてしまうのです」。つまり、思うことと、現実とはつながっていて、境目など無いのだと。うーむ、これは確かに難しい問題だ。そうかもしれない。 とすれば、人間が考えつくようなことは、ほとんどなんでも実現する。そこでこういう話が出てくるわけだ。 テイストはホラー。どうも亡くなった最愛の妻が何かを訴えたがっているようなのだが、いくら愛していたとはいえ、起こるちょっとした超常現象は、結構怖い。ぞっとする。夫婦愛を描いた映画とは思えないほど。でも、これがいい。これが後で効いてくるのだ。 そして、原題にもなっている「ドラゴンフライ(トンボ)」かがいい。妻が好きだったトンボのオブジェ。そして現れるトンボのような記号。ラストのラストでも現れるこのトンボ。なぜタイトルを「コーリング」などと直接的なものにしてしまったのだろう。トンボがいろんなところに関わってくるから原題は「ドラゴンフライ」なのに。 それでも、そんなこととは関係なく、映画は素晴らしい出来。最初ホラーだった映画は謎解きになり、やがて謎が解けたとき愛の賛歌となる。出来過ぎかもしれないが、ケビン・コスナーがスーパー・ヒーロー・タイプではなく、普通の人を演じているのもマル。 奥さんを演じている美女は、不倫映画「ランダム・ハーツ」でハリソン・フォードの事故死する妻を演じたスザンナ・トンプソン。「ランダム……」自体が酷い映画だったので印象は薄いが、本作ではすごくいい。 隣家に住むあまり重要ではない役をキャシー・ベイツが演じている。でもこれはいかがなものか。観客はキャシー・ベイツが演じるくらいだから、きっとなにか隠し球があるはずだと期待する。ところが……。これはミス・キャストじゃないかなあ。もっと無名の普通の役者さんで良かったのに。キャシー・ベイツが演じるとそれだけで意味が出てきてしまう。 公開2日目の初回、渋谷の劇場は「名探偵コナン」のモーニングショーのあとの上映で、ややスロー・スタート。全席指定なのでのんびり見られるのは良いが、場内を良く知らずに座席を選ぶのは難しい。何回か来ているのだが、そのたびに座席選びは後悔している。 35分前で中年カップル2、若いカップル1、若い女性2、と自分。30分前に開場し、20分前くらいになったら10人ほどに。若い女の子が多い印象。 最終的には30人ちょっとという寂しい入り。もっとたくさんの人が見て良い映画だと思うが、いかんせん広告していない。男女比は4対6で女性が多く、中高年はわずか数人。うーむ……。劇場も新しく、スクリーン・サイズもまあまあで、音もデジタルですばらしいのに、なんとも惜しい。 |