日本語字幕:手書き書体下、根本理恵/シネスコ・サイズ/ドルビー
1980年、ベルリンで北朝鮮のスパイが自国の重要機密情報を持ってイム・ビョンホ(ハン・ソッキュ)が亡命した。激しい拷問の後、厳しい監視付きで軍の対スパイ戦訓練の教官に就き、信頼を得て1984年にまだ監視付きながら国家安全企画部の分析センターに配属される。やがて機密情報にアクセスできるようになったイム・ビョンホは、韓国生まれで女性アナウンサーのユン・スミ(コ・ソヨン)と接触しスパイとしての活動を始める。 |
わずか20年前にこの話とほぼ同様なことが実際に起こっていたというのが驚きだ。20年というのは20代の人にとっては昔という感覚だろうが、40代以上にはちょっと前の出来事。1984年ころは韓国はまだ軍事政権で民主化されていなかった。あの「E.T.(E.T. the Extra-Terrestrial・1982・米)」が公開されたのは1982年で、名作「ビバリーヒルズ・コップ(Beverly Hills Cop・1984・米)」が公開されたのが1984年。 話自体は悲しい現実を扱ったものではあるのだけれど、結末はまあ当然の成り行きというか、自業自得という感じが、日本人のボクからするとある。せめて韓国暮らしで自由に目覚め(当時は軍事政権で自由がかなり限定されていたが、北よりは自由があった)、本心で亡命するという展開になってはじめて、この結末が効いてくる気がする。 主演のハン・ソッキュは一般の人には「八月のクリスマス(1998)」が有名なんだろうけれど、ボクには「シュリ(Shuri・1999・韓)」や「カル(Tell Me Something・1999・韓)」でしか見ていない。とにかくいい役者さんだと思う。smapの草なぎクンがあこがれて韓国語を習い始めたというのもわかる気がする。 相手役の女優さんは、これまた美形のコ・ソヨン。本国韓国では大人気の女優さんなんだとか。ただ、日本ではなぜか韓国女優さんは、連続して映画の登場することが少なく、どの人もなじみが薄い。とりあえず覚えておこう。 ちょっと気になったのは、全体に一昔前の映画のような古くささを感じたこと。それは物語の舞台が1984年だということであえてそうしているのかもしれないが、登場人物までが古臭く見えるのは、本当に計算? だとするとこの映画の監督はただ者ではない。 監督はキム・ヒョンジョンという人で、なんと本作が劇場長編映画デビューなんだとか。しかも1973年生まれというから30歳という若さ。それでこの重厚な作品が撮れるとはスゴイ。つまり韓国映画界は才能ある人が多く層も厚いのだ。うらやましい。 公開初日の初回、銀座の劇場は10分前に到着したら、なんと1Fが9割、2Fが5割という混みよう。510席の8割方が埋まっている感じ。入口にお知らせが貼ってあって、「コ・ソヨン舞台あいさつ」とあった。しまった。混んでいるわけだ。でも正直なところ、ボクはハン・ソッキュが見たかった。もちろんコ・ソヨンはきれいなんだけど。 ほとんどは中高年で、20代はいたのかもしれないが見つけられなかった。男女比はほぼ半々。まあ、内容からして妥当な線だろう。 ビスト・サイズの予告編から本編のシネスコになってレンズが変わったら、いきなりピンボケに。なんだこれは。徐々に直っていったが、うーんこれがプロの技か。まっ、ここはコーヒーがうまいのが救い(淹れ立てなら)。 冒頭、JBLスピーカーのデモあり。タイトルのロシア語がモーフしてハングルになっていくデザインは秀逸。出し方もうまかった。イマジナリー・フォースっぽい。韓国はすでにそのレベルまで行っているということか。 |