2003年6月28日(土)「ミニミニ大作戦」

THE ITALIAN JOB・2003・米/仏/伊・1時間51分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・dts

(米PG-13指定)

http://www.minimini-jp.com
(全国劇場案内もあり)
イタリアのベニスで3500万ドルの金塊を奪ったアメリカの窃盗グループは、1人の裏切り者によってすべての金塊を奪われ、仲間も1人失ってしまう。1年後、グループは裏切り者の居場所を突き止め、金塊奪還を図る。

74点

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 おもしろい。ミニ・クーパーが欲しくなった。カッコいいなあ。ひさびさにスッキリするお話で梅雨のじめじめをぶっ飛ばせるという感じ。

 驚くべきは、これだけの犯罪者が主人公のピカレスクものなのに、直接的な過剰な暴力表現やセックス描写がほとんどないこと。アメリカではPG-13指定ということにはなってはいるものの、ボクなんかは子供に見せてもいいんじゃないかと思う。シャーリーズ・セロンが出ているのに、キスさえもないというのは本当に驚きだ。

 そして、よく練られたストーリー展開。定石通りではあるけれど、それが気持ちいい。だいたいの方向性は読めても、どうなるのかわからない面白さ。こうやって略奪するのだなと見せておいて、それが直前でダメになって別の手でやる、その鮮やかさ。うまいなあ。たとえは良くないが、まるで「スパイ大作戦」みたい。これが「スティング(The Sting・1973・米)」まで行っちゃうと別次元に突入して“窯変”してしまうんだろうけど。さすがにそこまでは行っていない。

 最初のエピソードはヨーロッパで展開するので、銃器もCz75とか出ていたが、後半になってアメリカが舞台になるとKG-9など古いサブ・マシンガンも登場しなかなか見せてくれる。一番感心したのは。水中に向かって銃を撃つシーンで、いかにも銃弾が浴びせられているかのように、水中に気泡を引いて飛び込んでくる銃弾の表現。CGなんだろうがとてもリアルで感心した。

 で、だれが監督したのかと見てみたら、あの傑作ポリス・アクション「交渉人(The Negotiator・1998・米)」を監督したゲイリー・グレイだった。緊張感の作り方、保たせ方がうまいはずだ。あれが撮れれば、これも撮れるかという感じ。

 アップ・カットとロー・アングルが多めで、それがいい雰囲気を作っている。開巻わずか数分でオール・スター・キャストのような豪華な出演者全員を見せてしまうなど、素晴らしい手腕を発揮し、 今後注目の監督の一人であることは間違いない。

 脚本はレニー・ハーリンのサメ映画「ディープ・ブルー(Deep Blue Sea・1999・米)」や「バレンタイン(Varentine・2001・米)」のドナ・パワーズ。

 「オーシャンズ11(Ocean's Eleven・2001・米)」にしても、「スニーカーズ(Sneakers・1992・米)」にしても、「ホット・ロック(The Hot Rock・1971・米)」とか「プロフェッショナル(The Professionals・1966・米)」「ザ・プロフェッショナル(Heist・2001・米)」「RONIN(Ronin・1998・米)」にしても、みなキャラクターがよく立っていて、その道の達人を集める過程であるとか、それぞれが特技を生かして大活躍するシーンが楽しいのだ。それが実に良くできている。映画の王道といっても良いだろう。それをはずしていない。究極は「七人の侍(1954)」か。

 公開8日目の初回、銀座の大劇場は50分前に着いたら、20人ほどの人が並んでいた。45分前に開場するものの、開いたのは2劇場ある内の小さい方で、大きい方が開いたのは25分前になってから。半分は小さい方へ行ったので10人ほどに減ったが、どうにか30人ほどまでに増えた。

 男女比はほぼ半々。1/3は20代で、残り2/3がオヤジ年齢以上。初回のみ全席自由で、17席かける2列もすべてOK。最終的には654席の3.5割ほどが埋まった。この面白さから考えるとちょっと少なすぎるのではないだろうか。

 銀座のこの劇場はとにかく音が良い。スクリーンも見えやすいが、2回目以降は全席指定の完全入れ替え制でちょっと手続きが面倒くさい。


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