ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビーデジタル
(日本R-15指定)「バトルロワイヤル」で生き残った七原秋也(藤原竜也)は、海外に逃れたものの同志を集めて日本にもどり「軍艦島」に立てこもると、すべての大人たちに対して宣戦を布告した。政府は、子供たちの反乱には子供たちで当たらせると、全国の落ちこぼればかりをあつめた中学のあるクラス全員に強制的に武器を持たせて島に投入する。 |
深作欣二監督の遺作となった本作、どこまで深作監督が撮ったのかわからないが、スゴイ映画ができあがった。これは中学生を主人公にした戦争映画だ。4/5くらいが戦闘シーン。しかしよく感情が伝わってくる。彼らの友を思う気持ち、無念さ、ほのかな恋心……ただ、テロに関してはよくわからなかったし、何をどうしたいのかもよくわからなかった。「すべての大人たちに宣戦布告」する割には、ここが弱い気がする。奇妙な理論を振り回すよりは、ずっとさっぱりしていると思うけれど。見た目がセンデロ・ルミノソのようだったのは狙い? とにかく良かったのは、ちょっとエキセントリック過ぎる感じはするけれど、竹内力役の竹内力だろう(そう、役名が自分の名前と同じ)。この役は前作の北野武が演じた教師キタノと同じなのだ。ただキタノはほとんど感情の起伏がない感じで、竹内は逆にありすぎるという設定。乱暴なのか丁寧なのか、竹内力はキレまくっていて、いい。良い味を出している。ラスト、にこやかにラグビー・スタイルで登場してきたのには参ってしまったが。 近未来という設定で、子供たちに持たせる武器はFA-MASベースのオリジナルのデザイン・ライフル。デザインしたのはイラストレーターの佐藤仁彦さん。なかなかありそうで説得力があり、かっこいい。ホームページでそのデザイン画の一部を見ることができる。なぜ自衛隊の銃もこの03式BR銃にしなかったのだろう。もちろんビッグショットが銃器特殊効果を担当しているので、フォアグラウンドの銃はみな薬莢が出て銃口からマズル・フラッシュも出ていた。うるさいくらいに薬莢の落ちる音もちゃんと付けられていたし。 何カ所か、いろんな映画へのオマージュが見られる。一番わかりやすいのは上陸作戦だろう。早いシャッター・スピードで、色を抑えてモノトーンで撮る……というのは「プライベート・ライアン(Saving Private Ryan・1998・米)」でしょう。「銃を向けたら、撃て」なんてマカロニ・ウェスタンそのままのりセリフもあったけど。 今回の中心人物となるキレやすい青井拓馬を演じた忍成修吾はほとんど叫ぶだけで、次第に生理的に不快で腹が立ってくる。なんとかあいつを早く画面から消せと思ってしまう。これは損な役だと思う。ラストだけちょっといいだけで、後は……。 気になったのは、スナイパー・ライフルのドラグノフを持っていた女の子。一見、柴咲コウかと思ったが、彼女は前作で死んでいるし。公式サイトを見てもよくわからなかった。ひょっとしたら加藤夏希っていう女の子? いままであまり見かけたことがなかったけど、なかなかいい雰囲気です。 それから前作では声の主演だけだった教師キタノの娘役、前田愛がいい。戦闘が始まってしまうとほとんどセリフはないが、無言の演技に光るものがあり、ちゃんと感情が伝わってきた。アクションをばかにする役者さんも多い中、激しいアクションの中でちゃんと感情を伝えられる俳優さんは貴重だし、まして女優さん、素晴らしいと思う。 もともと「バトル・ロワイヤル」の企画は深作欣二監督の長男、深作健太監督のものだったと聞く。撮影中に深作欣二監督が亡くなったことといい、ほとんどを深作健太監督が撮ったことといい、いろいろな意味で「BRII」の完成は感慨深いものがあるのではないだろうか。 「BRII」のストーリー展開には強引なところもあったが、日本でもアクション中心のドラマが成立することを「BR」シリーズは証明して見せてくれた。「BRII」もぜひ大ヒットとなることを祈りたい。ただ、テロを美化していませんかね? 公開2日目の朝の回、銀座の劇場は50分前に着いたら、60人くらいの行列。おお、さすがに人が多い。雨だったこともあってか、45分前には開場された。嬉しい。 観客層は。下は中学生くらい(15歳?)から20歳くらいが全体の1/3、30代以上が2/3という感じだが、中高年はやや少なかった。女性は1/5というところ。一部オバサンもいた。 最終的には、2階席も全席自由の510席に6〜7割ほどの入り。2階席にいたので1階の状況がよくわからなかった。 JBLのデモから始まり、音響はクリアで非常に良好。見やすく、シートもカップ・ホルダーが付いてゆったりめで言うことなし。こういう劇場で見た方が絶対にお得だ。銃声や爆発音にも迫力があった。 |