日本語字幕:手書き書体、タテ右、樋口裕子/中国語字幕:ゴシック体、下/ビスタ・サイズ/dts
レイトショー日本軍の敗戦が迫っていた1944年秋、満州鉄道の山の中の小さな駅に助役として赴任していた日本兵、菊地浩太郎(緒方直人)が死体で発見された。軍は早速、調査のために憲兵隊を派遣する。容疑者は4人。駅長(ワン・シュエチー)、その妻(ワン・ラン)、孤児のタートウピエン(チャン・ホエクー)、雇われ人ターツイ(ディン・ハイフォン)。それぞれに動機があり、みな怪しく、またみな無実に見えた。憲兵隊の隊長(平田 満)は厳しい取り調べを開始する。 |
映画としては良くできていると思うが、見終わった後とてもブルーになる。日本人としては特に辛い映画だし、かりにこれが旧日本軍の話でなかったとしても、大いなる悲劇。充分現代でも通じる話になっている。 捜査を進めるに従って次第に明らかになってくる人間模様。そして様々な事情。これらが良くできている。上質なミステリーを見ているようだ。ただ、この悲惨な話をお金を出して見たいかということだ。しかも、事件はすべて鬼子(クイヅ、日本人)が元凶で、事件の経過も鬼子がいなければこんな悲惨なことにはならなかった。ここも辛い。 「戦場のピアニスト」で描かれていたように、侵略者は自分の国ではないからちょっとした行いさえ尊大となり横暴に振る舞う。そして誰からもそれを諫められることがない。知っている人は誰も見ていないのと一緒。旅の恥はかき捨て。ドイツ人だろうと、日本人だろうと、戦争で敵の国を占領したらみなそうなってしまうのだろう。現代はマスコミが発達して、瞬時にしてそういう状況が報道されてしまうから、世界の警察たるアメリカ軍でもそれは許されない。だから多くの国、軍が情報操作を最初に行う。 この映画は舞台が1944年という昔であり、山の中のほとんど密室状態の小さな駅で、容疑者の中国人と捜査官の日本軍の憲兵は敵同士だから、最初から情報は極端に制限されている。菊地が死んだのは、事故なのか、殺人なのか、自殺なのか。容疑者を次々と尋問していく内に、事件の全貌が……というより日本軍の軍人、菊地の人生が見えてくる。 この手法はよく使われる。代表的な作品は黒澤明の「羅生門」だろう。人それぞれの事件の真実があって、それをたくさん重ねる内に全体像がおぼろげながらにわかってくるというやつ。子供までが容疑者になっているところが新しい。ちゃんと殺害動機もある。 しかし、先が読めてしまう。ここが一番辛い。いい話になっているのに、たぶんこんなことになのだろうという事件の真相は予想が付く。 ただし、この結末は予想が付かなかった。主人公が一生後悔することになるような結末までは。つまり、あまり後味のいい映画とは言えないのだ。どんな悲惨な話でも希望のない話は好きになれない。どうなんだろう。それは彼は横暴な振る舞いをしたかもしれない。しかしそれを悔いてやり直すことができないなんて。人間は過ちを犯す。しかし、悔いて改めることができるのも人間のはず。残りの人生をずっと悔いて過ごすなんて……。うーん、辛い。 公開2日目。上映劇場が変更されている。窓口で今日の上映があるか聞いたときには教えてくれなかった。2〜3分前になっても電気が消えたままなので窓口に聞くと、劇場が違うという。だったら最初に聞いたと先に教えてくれればいいのに。 新宿の劇場のみの公開で、305席に12人。うち女性が2人。ほぼ中年層のみ。 |