スタンダード・サイズ(HD編集)/ドルビーデジタル
世界三大自転車レースの1つ、スペインの「ブエルタ・ア・エスパーニャ」のレース中、ペペ(声:大泉洋)はスポンサーのパオパオビールから解雇通告されてしまう。しかし思わぬ事故により、チームの主力選手であるギルモアがリタイア、チームの命運をかけてアタックをすることになる。 |
講談社の月刊アフタヌーンに連載された黒田硫黄の漫画「茄子」シリーズ(茄子がキーワードになっている連作)の中の第5話と第6話の「アンダルシアの夏」を完全アニメ化……って、うーん、どうなんだろう。47分はあまりに短すぎて、レースは描き切れていると思うけれど、それに絡んでくる兄アンヘルとの関係や兄に奪われた元恋人カルメンとの関係、彼を応援する人々との関係が物足りない、というか消化不良というか。原作に忠実ということも大切だと思うが、映画にするにあたってふくらます所をふくらましたり、映画的な演出とか構成を加えないと、成立しないような気がした。つまり47分では短すぎてわからない。見終わった後、だからどうしたの、という感じ。印刷の漫画では問題ないと思うけれど……。 自転車レースは素晴らしい。3Dと2Dをうまく使い分け、自然なレース展開をアニメならではの自由かつダイナミックな構図、アングルで切り取って見せてくれる。テレビの中継などでは見ることのできないそれは、レースをよりドラマチックに、そしてエキサイティングにする。思わず本物の自転車レースを見てみたいと思ったほど。これだけの台数の自転車を同時に自然に動かしたり、カメラ移動を可能にしているのは、CG以外考えにくい。手描きでできないこともないだろうが、とんでもないマン・パワーが必要だ。 このレースは有名なフランスで行われる「ツール・ド・フランス」ではなく、スペインで行われる「ヴェルタ・ア・エスパーニャ」なんだそうで、イタリアで行われる「ジロ・デ・イタリア」と合わせて世界三大自転車レースというのだそうだ。ちなみに世界の自転車三大国というのはフランス、イタリア、ベルギーなんだとか。てっきり中国かと思ったが。 ロボコンでもなんでもそうだが、試合当日に至るまでの苦難の道、仲間との確執、挫折、連帯、恋……そういったいろんなバック・ストーリーを知ることによって、レース(試合)がドラマチックになっていく。ライバルは誰なのか、このレースに賭けているものはなんなのか、そんなことがわかるとついつい応援したくなる。どっちが勝つのか気になる、というもの。それが47分ではレースそのものを描くのが精一杯で……。 公開初日の初回、銀座の劇場に35分前に着いたら前売りの行列は7人。いずれも20代後半から30代といったところ。女性はオバサン2人を含む3人。30分前に当日券が発売になって行列は15〜16人に増えた。25分前に開場、指定席なしの360席に5分前で30〜40人。最終的には20代前半と高齢者もちょっと増えて50〜60人ほどに。その3割が女性。やはりジブリ風というのかかジブリ臭というのかが、観客を引っ張っているのかかもしれない。観客層を見ていたらそんな気がした。 それにしてもスタンダード・サイズとは。それだけ背景も小さくてすみ、安く上がるということなのだろうか。今の時代にスタンダードとはねえ。テレビで見ても一緒ということか。ラストのスタッフ・クレジットの横には、原作者の黒田硫黄の絵が出るので見逃さないように。アニメは宮崎駿調の絵だが、かなり原作の味を生かしたキャラクター作りがなされていることがわかる。 |