2003年7月27日(日)「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」

THE LIFE OF DAVID GALE・2003・米・2時間11分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS

(米R指定)

http://www.uipjapan.com/davidgale/top.htm

大学で哲学を教えるデビッド・ゲイル(ケビン・スペイシー)は、死刑反対の市民グループに参加し活動していた。あるパーティーで酒に酔い、落第した女学生に誘惑されてつい関係を持ってしまう。すると女学生はレイプだとしてデビッドを訴え、行方をくらましてしまう。レイピストのレッテルを貼られたデビッドはやがて職を失い、妻と子を失い、社会的信用も失う。そしてさらに、死刑反対の市民グループにいた友人の女性、コンスタンス(ローラ・リニー)殺害の容疑で逮捕、裁判にかけられ死刑が確定するが……。

76点

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 もし死刑制度に反対する映画を作るとしたら、どんな映画にするか。無実の人間が死刑で殺されるのがベストだろう。これは、そういう映画だ。実際、映画の中でもそういう指摘がある。死刑推進派の知事がデビッドとのテレビ討論で追いつめられ言う。「わかった。私が許可した死刑の中で、えん罪があったのなら考え直そう。さあ指摘してくれ」と。

 監督は観客に考えて、議論して欲しくてこの映画を作ったらしいが、やはり立場としては反対だとと思う。盛り上げるたためとはいえ、ラストで必要以上に死刑推進派が過激な言葉を並べている。

 その監督とはアラン・パーカー。日本で大ヒットした「小さな恋のメロディー(Melody・1971・英)」の脚本家でデビューした人だ。その後、傑作ミュージカル子供ギャング映画「ダウンタウン物語(Bugsy Malone・1976・英)」、オリバーストーンが脚本を書いた麻薬所持が重犯罪となるトルコで地獄の体験をするアメリカ人青年の経験を描いた「ミッドナイト・エクスプレス(Midnight Express・1978・米)」や「フェーム」「エンゼル・ハート」「ミシシッピー・バーニング」などを監督している。ちょっと最近は「エビータ」とか「アセンジェラの灰」とか地味な作品が多い感じはある。

 プロデューサーがアラン・パーカー自身の他に俳優のニコラス・ケイジとあった。なかなか才能豊かな人らしい。お金も持っているし、ヒット作に続けて出られたというのは脚本を読む力があるということかもしれない。当然そういう人は映画になったときにいい作品を見抜く力があるわけで、プロデューサーに向いているわけだ。

 「ユージュアル・サスペクツ(The Usual Suspectss・1995・米)」ばりの想像も付かないストーリー展開。大どんでん返し……と言いたいところだが、ラストの結末は何となく想像できる。完璧予想は無理としても、大ざっぱにならたいていの人が予想できるだろう。ただ、謎のカウボーイだけは最後まで読めなかったけれど。

 怖いのは、犯罪者(中でも一番下として扱われるという強姦などの性犯罪者)のレッテルを貼られただけで、それが真実かどうかに関係なく、公になればその人の人生を破壊してしまうこと。そして、それに説得力があるから怖くなってくる。

 パーティーの席上で、したたかに酔っぱらっていて、美人の女性からアプローチされてきたらはたしてどれだけの男が拒めるのか。それもモデル出身のエキゾチック美女、ローナ・ミトラのような女性だったとしたら。こういうのを日本では古来より「据え膳くわぬは男の恥」などという。

 同士にしてけんか相手でもある数少ない主人公の友人、コンスタンスを演じているのはローラ・リニー。ホームページの情報によると、リチャード・ギアと共演した「真実の行方(Primal Fear・1996・米)」を見たクリント・イーストウッドが自らの監督作品「目撃(Absolute Power・1997・米)」に娘役で出演させたのだとか。なんとなくわかる気がする。派手さはないが、なにかいると心落ち着くようないい雰囲気を持った女優さんだ。それなのに、結構際どい格好をしている。吹き替えだろうが、全裸で登場している。

 ほかにも「濃い」役者がぞろぞろ登場する。ここがまたいい。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は15分前に着いたらフラットでスクリーンが見づらい192席は9.5割が埋まっていた。しまった、コーヒーなんか買ってから来るんじゃなかった。しかもこの劇場は本当は持ち込み禁止なんだし。

 観客は3対7でほとんど女性。老若比は7対3だから、普段は映画をあまり見ないようなオバサンが多い。何でこの映画のことを知ったのだろうか。「主婦の友」とかそういう雑誌か? 普段あまり映画を見ない人はマナーの悪い人が多く、あまり雰囲気がよろしくない。


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