2003年8月2日(土)「ハルク」

HULK・2003・米・2時間11分

日本語字幕:ゴシック体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(1.66、with Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS/日本語吹替版もあり

(米PG-13指定)

http://www.uipjapan.com/hulk/
(Safari不可。Flashなくてもアクセス不可。全国劇場案内もあるが動かしすぎでADSL12Mでも遅い。音にも注意)

1966年、砂漠の研究所で人体の免疫の研究をしていたデビッドは、軍の命令により研究を中止させられてしまう。しかし自分の体で試すなど、密かに研究をしていた。そしてやがて子供が生まれ、デビッドはそのブルースとなづけた我が子に異常があることに気づく。そしてあの事件が起きる。やがて里親の元で育てられたブルース(エリック・バナ)は大学に進み、バークレー校で元恋人のベティ(ジェニファー・コネリー)らとともに細胞組織の再生の研究をしていた。そんなある日、事故からブルースはガンマ線を浴びてしまい、身体に変化が起こる。

74点

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 なかなか面白い。まるでコミックをそのまま実写にしたような構成。

 ハリウッドではマーヴェリック・コミックが大人気……というか、ハリウッドは映画になりそうなネタならなんだってやるのだ。なにしろ世界の夢工場なのだから。日本の「呪怨」までリメイクするらしい。

 日本公開されたマーヴェリック・コミックの最新版といえば盲目のヒーローがニューヨークの悪を懲らしめる「デアデビル(Daredevil・2003・米)」だが、味付けや飾りが違うだけで、中身は一緒という感じ。暗くて、主人公は重い十字架を背負っている。

 もちろんアン・リー監督なので、感情が良く出ていて面白い。感動もある。関係ない話だが、監督が来日したときのインタビューを聞いていたら、自分のことを「アング・リー」と言っていたが。だって「アン」じゃあ女性の名前だもんなあ。「g」は発音しないと思って日本語で「アン」と書いちゃったとか。

 アン・リー監督作品は、ボクは「楽園をください(Ride with the Devil・1999・米)」と「グリーン・デスティニー(Crouching Tiger, Hidden Dragon・2000・米)」しか見ていないがどちらも傑作だと思う。そのアン・リー監督だからこそ主人公の苦悩がよくこちらに伝わってくる。家庭の崩壊、感情を抑制しなければならない生活、恋人との別離……本当にアメコミは屈折している。

 ただし、SFXによる変身シーンや格闘シーンはトーンと突き抜けている。抜けるような青空の下、さわやかにクリアにリアルに驚異の映像が展開する。これはすごい。巨人化したハルクの動きに、CGにありがちな不自然さがない。巨大化するときにシューズや服が破れるので裸同然になるが(1つのシーン以外パンツだけはなぜか伸び縮みする)、筋肉の細かなこぶの1つ1つまで微妙に動かされていてとにかく素晴らしい。顔も非常にリアルで、ちっともCG臭くない。これだけでも見る価値はあるだろう。

 演出的には現実的ドラマ手法でありながら、場面転換やマルチ画面などといった工夫を凝らし、コミックを読んでいるような雰囲気を加えている。たとえば1つのシーンをマルチ・アングルで見せたり、たくさんの人の行動をマルチ画面で同時に見せたり、画面が立方体になって回転したり、車のヘッドライトが夜空に浮かぶ月になったり、画面を横切る人と一緒にワイプしたり……とにかくありとあらゆる手法を使っているのだ。これがまたすごい。たぶん今までこんなにたくさんの小さな工夫を凝らした映画はなかったと思う。

 主人公を演じた「ブラックホーク・ダウン」のデルタ隊員で強い印象を残したエリック・バナも悪くないし、自分勝手な父親を「ブレイド」のクリス・クリストファーソンのように髪とひげをぼうぼうにのばして演じたニック・ノルティも悪くない。普通の軍人だがちょっとしたガンコさで悪役になってしまうロス将軍を演じたサム・エリオットも存在感がある。しかし、何と言っても、この映画で光っているのはヒロインのジェニファー・コネリーだ。ドクター(博士)という役なのでほとんどスッピンに近いナチュラル・メイクだが、とにかくきれい。光っている。バナを思う気持ちもけなげだし、強い女が多い今かえって可憐な感じがいい。極端な言い方をすれば、この映画は最先端の映像マジックを見せてくれるSFXと、女性らしい女性ジェニファー・コネリーの魅力がすべてだ。

 公開初日の初回、新宿の劇場にちょっと遅れて35分前に着いたら、すでに開場していた。しかも前売り券に記載されている大きめの劇場ではなく地下にある小さな劇場に変更になっている。地上の大きめの劇場は「踊る大捜査線2」。おいおい、その隣でも「踊る大捜査線2」をやっているじゃないの。日本語吹き替えがあるわけでもないのに。大ヒット映画が出ると、こんな感じで他の映画に影響が出る。

 あれだけTVで宣伝しておきながら、劇場ランクが落とされているわけだ。音響もデジタルではなくアナログにランク・ダウン。ここまでくるとお金を何割か返して欲しい感じだ。座席もフラットに近く、座席が千鳥配列になっていてもなお前席の人の頭がじゃまで下に出る字幕がよく見えない。タテに出ればまだいいのだが、ビデオの影響で下に出すことが普通になってしまったから始末に悪い。やれやれ。

 場内には20人ほどの人。小学生が4人くらい。うち一人は女の子だった。たぶん20代のカップルが5組。残りは中高年。その後、父と少年、母と少年、若いカップルも増え、最終的には指定席なしの350席の5.5割ほどが埋まった。

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