ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル
新しい麻薬“アフターバーナー”がすごい勢いで広まりつつあった。その組織「クライン」は君国(萩原健一)という決して表には出ない男によって動かされていた。そしてクラインは既存の麻薬組織をつぶし、独占状態を作り出そうとしていた。ある日、君国の愛人、神崎はつみ(佐田真由美)から保護して欲しいとの連絡を受け、捜査にあたる銃器麻薬取締課の刑事(大沢たかお)とその恋人、河野明日香刑事(黒谷友香)はコンタクトをとろうとするが、それを知った君国が刺客を送り込んでくる。 |
なかなか日本映画らしからぬアクション映画。ラストはちょっとプチ007映画のようでさえある。緊張感を保ったまま2時間の長丁場を乗り切るのは簡単なことではないが、西村了監督はこれが劇場映画デビュー作とは思えないほど、職人的手腕を発揮している。 ただし、大沢在昌ファン、原作の「天使の牙」ファンにはどうなんだろう。ボクも大沢在昌ファンで原作は読んでいるが、同じ話という印象は全くなかった。映画は映画として存在している感じ。あえて言えば、イントロとエンディング(これで事件解決と呼べるなら)をいただいて、ジョン・ウー監督の「フェイス/オフ」や大林宣彦監督の「転校生」のように外見と心が入れ替わっておきる問題、ボスとはつみの愛人関係、古吉と明日香の恋愛関係をメインに描いたという感じ。 映画は、事件の発端と、瀕死の重傷を負ってハイブリッドな主人公が生まれ、すぐに事件のクライマックスが訪れるという構成。これはどうなんだろう。警察ものの長編小説の場合、おもしろいのは捜査過程、事件解決のプロセスで、結末はそれほど意外でなくても納得できるものであればOK。それを感動的で、ちょっとひねってあればなお良いという部分があると思う。それが何の捜査もしていないのにいきなりボスが出てきて、大団円でいいのかということ。2時間という映画としては長目の時間を使ってこれだけかという印象があるのは否めない。つまり、ちょっと脚本に異議ありではある。ラストもこれじゃ話が終わらないじゃないか。 銃器の効果はデジタルを組み合わせて使うことによって、リアルに派手になってきている。「マトリックス」のように飛ぶ銃弾を見せ、頭部にヒットして血が飛ぶ様までをリアルに見せてくれる。それは銃弾が前方から入ったか、後方からかというケネディ暗殺事件のような問題まで明かしてくれるわけだ。ただし、ちゃんとした検視をやればCGを使うまでもなく、すぐにどちらから撃たれたかはケネディの昔ならいざ知らず、現代の科学捜査ならすぐにわかるはずだ。ラストになってそんなことを言い出すのは観客を欺くことに他ならない。これはいかんでしょう。 また女優陣がどうなんだろう。2人の外見と心が入れ替わってしまうところをメインにしているのなら、それにふさわしい有名女優さんを配役するのが常套手段ではないだろうか。男性陣が萩原健一、大沢たかお、佐野史郎、西村雅彦といったそうそうたるメンバーなのに、映画では新人のような2人。実際、佐田真由美は雑誌「ViVi」の専属モデルで映画初出演なわけだし。だからか女性には人気があるようだが、男性にはどうなんだろう。 曲はバツグンにいい、というかボク好み。t.A.T.u.の「 Not Gonna Get Us」がよく使えたものだなあと。正直なところ予告編でこの曲を使っていたから、これを見る気になったというわけ。 サラウンドはさすがデジタル大変良い。温室が良いのはもちろん、セバレーションがしっかりしているので定位も素晴らしい。はっきりと右後方から聞こえた声が前に回っていったり、効果的に使われている。ただ、色は演出意図なのだろうが、あまりきれいではない。ほととんど粗い画質でシロ飛びクロつぶれに近い青系寒色の色調。ライトでこれが暖色系に変わるわけだが。 銀座の爆破シーンは予想していなかったので驚いた。CGしか考えられないが、なかなか頑張っている。ミニチュアなんかと併用すればもっとリアルになったかも。技術的には日本もアメリカ並みだとしても、予算からそれを使えないところが日本の悲しいところ。これからは今まで考えられなかったこんな派手な効果もどんどん使われるようになるだろう。そうしてどんどんスケールが大きくなって欲しい。 初日初回、知らずに行ったら新宿の劇場は舞台あいさつの日。混まないだろうと思って40分前に着いたらすでに開場済み。763席の5.5割ほどが埋まっている。失敗したあ。ただ個人的には生で動いている大沢在昌さんを見ることができたのは嬉しかった。 初日の初回から指定席があり、11席×5列も8割方埋まったからスゴイ。 ほとんど半数以上が20代の若い女性。「ViVi」の読者、佐田真由美ファンということか。はたまた大沢たかお(背が高い!!)ファンか。高校生もいたようだ。ほぼ全員が真ん中より前の方に座っている。本当の映画ファンではない。映画ファンはたいてい中央よりに座るから。 7.5対2.5で女性が多く、次第にオバサンも増えてきた。どういう人たちなんだろう。ちょっと気になる。やや男性も増え、最終的には7対3で女性。全763席の7.5割が埋まった。すごいなあ、スターの力は。 |