日本語字幕:手書き書体下、古田由紀子/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米R指定)南仏で開催されている国際的な映画祭の会場から、1.8kgの金、510個のダイヤモンド、合計385カラットを使った時価1,000万ドルの宝石“蛇のビスチェ”が強奪された。窃盗グループの1人、ロール・アッシュ(レベッカ・ローミン=ステイモス)は仲間を裏切り蛇のビスチェを持って逃走するが、途中でつかまりビルから投げ落とされる。しかし落下した場所が資材の置かれた場所だったことから、九死に一生を得る。さらに、自分そっくりの人物と間違えられ、知らない家に連れて行かれる……。 |
さすがはヒッチコックを継ぐもの、ブライアン・デ・パルマ監督。オリジナルでヒッチ・タッチの極上サスペンスを作り上げた、という感じ。いたるところにヒッチコック作品へのオマージュが込められ、どうなるのかまったく先を読ませない。こういう話だったとは。 タイトルのファム・ファタールというのは、フランス語で運命の女、英語ではFatal Femaleということか。もっというと男性を破滅に導く女性だそうで、下げマン? 冒頭、女が男を裏切る映画(悪女ミステリーの古典「深夜の告白(Double Indemnity・1944・米)」らしい)をテレビで見ている女から始まるが、なかなか女はしゃべらないし顔も見せない。これは何かあるなと思ったら、そういう謎の連続という仕組み。すでにいくつかエラーも報告されているようだが、それは別としてたくさんの鍵が散りばめられているのは確かで、スクリーンの隅々まで気を抜かずにじっくりと見たい。 エッチさかげんについては、予想通りで、なかなかエロい。アメリカでは成人指定にされている。蛇のビスチェ(まあブラジャーですね)はスイスのショバールが作った本物だそうで、あんなもので乳首を隠せるはずもなく、映画祭のシーンではポロポロこぼれて着ていないも同じ。しかもその直後に激しいレズ・シーンが用意されているわけで……。 主演の女優さん、レベッカ・ローミン=ステイモスはものすごい美人で、もとモデル出身、どこかで見たような……と思ったら、「X-Men(X-Men・2000・米)」のミスティークだった。金髪でスカーフを巻いて、黒いサングラスをかけると、まるでグレース・ケリーのよう。この美しさ。 あまり書くとストーリー展開にふれてしまうので書かないが、とにかく画面から目を離せない。散りばめられた記号やヒントは小さいこともあるので、ビデオになってから見てもそれらはわかりにくいかもしれない。わからなくてもストーリーはわかる構成だが。 気になったのは、主人公が前半あまりにも悪女過ぎて、次第に感情移入できなくなっていくこと。それでアントニオ・バンデラスが代わって主人公を演じるのかと思うと、これまた違って、じゃあ一体誰に感情移入しろというのだ。 音楽は我が教授こと坂本龍一。たぶんブライアン・デ・パルマ監督の指示なのだろうが、坂本龍一というよりはヒッチコック的というか、バーナード・ハーマン的というか、そんな印象。そして、一番目立っていた曲は、なぜかモーリス・ラヴェルの「ボレロ」風。フランスを強く意識したということなのだろうか。 公開2日目の初回、銀座の劇場には60分前でオヤジ3人の30代くらいの女性1人。おやおや、意外に人気がないらしい。日差しの強い日だったので45分前に開場してくれ、その時点で12〜13人。場内は涼しかった。嬉しい。 飛行機で言えばビジネス・クラスのようなプレミアム・シート6席×4列はさすがに自由席にはならないが、それでも3人座っていたのでビックリ。不景気でもお金はあるところにはあるということね。最終的には612席の6.5割くらいが埋まった。7対3で男性が多い。まあポスターとか見れば男性向きになっているわけだし、当然の結果だろう。やや若い人も最期の方で増えたが、ブライアン・デ・パルマだとオヤジが多いということにはなるようだ。 まあ本作をきっかけに、過去のヒッチコック作品を見直してみるのも良いのではないだろうか。「ハリーの災難」「裏窓」「レベッカ」「泥棒成金」「マーニー」「めまい」などに共通点を見いだせると思う。 |