シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル
地震か火山の噴火か、それともテロなのか、ある日突然日本が壊滅する。新幹線で修学旅行中だった高校生の青木テル(妻夫木聡)と瀬戸アコ(SAYAKA)と高橋ノブオ(山田孝之)の3人だけが生き残った。そしてやがてノブオは発狂し異常な行動を取るようになる。 |
映画界で人気の望月峯太郎原作の漫画「ドラゴンヘッド」の映画化。ボクは原作を読んでいないのだが、見に来ていた若い女の子の話(もれ聞こえてきた)によれば、もっと道中でたくさんの人に出会うんだとか。どうやらそれが面白いらしい。だから映画と漫画は違うと。ラストは似たようなものらしい。そのラストでボクは力が抜けた。なんじゃこれ、大風呂敷を広げすぎて収拾がつかなくなったってこと? とにかく何の説明もない。何が起きたのか、最後の最後まで観客はほったらかし。短編だったらそれでもいいのだが、本作は当然長編として作られたものであり、まして三部作の中の一つというのでもない。この作品の中でちゃんと落とし前をつけておかなければいけないんじゃないかなあ。漫画は連載だからどちらかといえばラストのインパクトよりは、中盤をいかに面白くつないでいくかにポイントが置かれると思う。それをそのまま映画化すると、何か尻切れトンボのような印象になってしまう。まさに、その感じ。一体、思わせぶりな「赤い光」って何なんだ? なぜ人が狂気に走るのか? タイトルの「ドラゴンヘッド」の意味は? 廃墟となった東京の街並みや、トンネルの中でスタックした新幹線、火山灰?(最初死の灰かと思った)に覆われた大地……などウズペキスタンに建設されたというオープン・セットは素晴らしい。非常にリアルだ。いままでここまで被災地をリアルに再現した日本映画はなかったのではないかと思えるほど。「地震列島(1980・日)」の丸ノ内線赤坂見附駅もよくできていたが、やはりオープンセットということもありスケールと存在感が違う気がする。 ヘリもセットというか大道具というか、作り物のようだが、良くできている。ホームページでは自衛隊のUH1イロコイの後継機UH60ブラックホークを取材して作ったと紹介されていたが……。どうもボクにはイロコイに見えたんだけど……。 それから、広告やメイン・ビジュアルとして奇怪メークをしたノブオの顔ばかりが大きく扱われているので、てっきりストーリーを動かしていくキー・キャラクターだと思っていたら、違うのね。イントロのトンネル脱出までのステージ・ボスみたいな役だったのね。予告とかの作り方に問題はないのかなあ。 SAYAKAだけどうにもボクは感情移入できなかった。あまりヒロインという感じではないと思うのだが。たしか神田正樹と松田聖子の娘だったような。神田正樹にそっくりで、こういったホラー系には合う顔だとは思うけど。 自衛隊の武器として登場するガバメントは、ウズペキスタンで撮影しているのだから当然、実銃かと思ったのだが(予告編ではそう見えた)、本編で見てみるとどうやらモデルガンのようだ。マズル・フラッシュは加工しているようだし、どうも軽そう。 それに今時カップ・アンド・ソーサーなんていう古い銃の構え方はないでしょう。「天使の牙」でもそんな構え方だったけど、いま日本映画で流行っているのだろうか。一時期くぇんてぃん・タランティーノ映画の真似をして銃を水平に傾けて撃つ撃ち方が流行ったけれど、真似にしか見えないからカッコ良くない。いまの撃ち方は手を二重にかぶせる握り方で、トリガー・ガードに指をかけないのが主流。ちょっとは最新のハリウッド・アクション映画を見て欲しいなあ。一部を除いて、その辺はハリウッド映画はしっかりしているから。 いずれにしても銃声はNG。たぶん実銃の音をアフレコしていると思うが、それはそれで問題なしとしても、火山灰の降り積もっているところで撃ってチャリーンと空薬莢の落ちる音はしないでしょ。堅い床面で撃った音をサンプリングしたため、薬莢の落下音まで入っていたのだ。それを使うとは。スタッフに1人でも銃に詳しい人がいればと悔やまれる。DVDの時には直して欲しい。 フォーマットがシネスコとは驚いた。日本映画ではあまり見ていない感じがする。いいなあ、映画っぽくって。ただ、それが生かされていたのは廃墟とかのランドスケープのみで、人物の絡むシーンではビスタにトリミングできるような構図ばかり。シネスコを生かした構図はほとんど見られなかった気がする。DVDはオリジナル通りとしても、テレビ放映のことを意識してフレーミングしていたのだろうかと邪推もしたくなる。 前半は絵が粗く、狙いらしいが、あまりきれいではないので、正直疲れた。時間が経つに連れて徐々に良くなっていくので気にならなくなったが。デジタル撮影だろうか。ちょっといじりすぎている気もしないではない。 ところどころ映画らしい素晴らしい絵を見せる。廃墟はもちろん、島田久作演じる教師の死体をノブオが他の女の子の死体と一緒に飾られているところや、口紅で顔を含む全身に不気味ペインティングを施した姿など、実に印象的。演出も鮮やかで、結構ドキドキする。さすがは「らせん(1998・日)」や「NIGHT HEAD(1994・日)」の飯田譲治監督。ただし、ドキドキするのは新幹線がスタックしたトンネルを脱出するまでで、それ以後だんだん逆にダレてくる。うーん、なんなんだろう。 オープニングのキャストなどの名前の出し方はカッコイイ。ローマ字と漢字が併記されていることから、国際的マーケットを意識して作られているようだ。日本映画には珍しくクール。もっとこういう作品が増えてもいいはずだ。 公開初日の初回、新宿の劇場は60分前で0人。すぐに自分も入れて3人になったが、あまり出足は良くないようだ。自分と若いカップル1組。45分前になって15〜16人ほどになった。9割はハイティーンから大学生くらいという構成。やはり原作が漫画だということも関係あるのだろう。 30分前に開場し、この時点で30人ほどに。やや若い女性が増えて、男女比は4対6で女性の方が多くなった。親子連れもいるし、女の子同士というのも多い。下は小学生くらいから、上は老人まで。ただし中心は若者で変わらず。 最終的には指定席なしの586席にどうにか5割の入り。予告編の時ピントが甘かったので不安だったが、本編が始まったらどうにか合ってきた。1,800円とかのお金を取るんだからもっと気を遣って欲しいなあ。 |