日本語吹き替え/リアリティ・システム(ソニーHDTV・3Dカメラ)・上映は15/70mm IMAX(1:1.78)/6chデジタル(無圧縮)
(米G、英PG)「タイタニック」(Titanic・1997・米)を監督し大ヒットさせたジェームズ・キャメロンは、ソニーとの共同開発により新しい3Dハイビジョン・ビデオ・カメラを完成させ、さらに弟のマイケル・キャメロンが開発した2台の水中リモートカメラを携え、ロシアの調査船キルディッシュ号に深海潜水艦ミールを3隻積み込み、再びタイタニック号の沈没現場に赴き潜水調査を開始する。 |
やはりIMAXはすごい。画面の迫力、圧縮していないデジタル・サウンドの高音質かつリアルさは一般映画の比ではない。70mmというだけでも高画質だが、通常の70mmが5パーフォレーションしか使わないのに対して、IMAXは15パーフォレーション分使ってフィルムを横走りさせる。それだけで映像は瑞々しく立体感を持っている。これを3Dにするわけだから立体感はさらに高まる。 しかも3D上映方式も進歩していて、数年前まではシャッター式のヘッド・ギアのような大型のグラスを被るため30分物でも疲れてしようがなかったが、いまやちょっと大きなサングラスと変わりない。たぶん偏向ガラスを使っているのだと思うが、ディズニー・ランドと同じものだろう。唯一の欠点は、偏光グラスが画面を暗くしてしまうこと。シャッター式でも同様だったが、かなりスクリーンが暗く見える。これが解決されたら素晴らしいが、たぶん時間の問題だろう。 とにかく目の前まで映像が飛び出してくる。手でつかめそうなほど近く見える。隣にいたオバサンはおもわず「怖い」と叫んでいた。たぶん船上のシーンがもっと続いていたら、船酔いをしてしまったに違いない。それほど臨場感がある。荒波を本当にかぶりそうな気さえした。 しかし、それも潜水艦が潜水を開始する冒頭10分ほどの話。水中に潜ってしまうと、よくあるように飛び出すというよりは奥行きがあるという表現になってしまう。つまり自然に撮影するとそうなるのだ。意図して飛び出すようにし、かつフィックスのカメラでパンフォーカスで撮らないとあそこまでの立体感は生まれないのだ。 これはドキュメンタリーだから水中部分は3Dカメラで撮ったとはいえ、ほとんど演出が効かない。しかも3,000mを超える深海ではライティングがままならない。いくら照明潜水艦メデューサを使っても一部しか照らすことができない。当然ピントは浅くなるので立体感が失われる。これはしようがないだろう。臨場感があることにはまちがいない。しかも速いパンをすると画面がフリッカーを起こす。 もうひとつ気になったのは、短くてまったくドキュメンタリーとして完成していない感じがしたこと。おかしいなあ、何が言いたかったのかさっぱりわからない。彼らは何をしに入ったのだ。これでは巨費と長時間(2時間かけてもぐり、6時間活動して、さらに長時間かけて浮上してくる)かけて入った意味がない。どこが「秘密」なのだろうか。 そして調べたら、アメリカ版は59分だった。なのに日本上映はたったの45分。1/4を削るということは、作品が違う物なってしまうということだ。本当にキャメロンが切っているのだろうか。だから何が言いたいのかさっぱりわからなかったのだ。ただいってきましたよという報告に過ぎない。これはオリジナルが見たい。3D上映するために日本語字幕を入れたくなかったのだろうが、3Dを多少犠牲にしても、字幕でいいから全長版で上映して欲しい。これでは意味がない。作品の形をなしていない。そういう意味では、内容だけだったら59点というのがいいところだろう。 公開3日目の初回、品川のIMAXシアターは40分前に着いたら誰もいなかった。劇場はちょうど開けるところ。30分前で2〜3人。あれ、「タイタニック」はあんなにみんな盛り上がったのに。日本人はさめやすいということだろうか。 20分前に開場。全席自由で、中はかつい新宿の高島屋にあったIMAXシアターとうり二つ。企画が同じなのか……。 10分前で17〜18人になった。男女比はほぼ半々で、30〜40代がほとんど。カップルが多めで、あとで若いカップルも1〜2組来た。最終的には273席に25人くらい。話題性からすればもっと混んでも良いと思うが、60分ものを45分にカットしたのではこれでも良い方かとも思う。見て良かったのか、悪かったのか、正直よくわからない。ただ、この作品を見る限り、キャメロンは評判を落としてもしようがないと思う。 |