日本語字幕:手書き書体タテ、川上純一(スクリーンでは表記なし)/ビスタ・サイズ(16mm撮影)/ドルビーデジタル
(英15、米R、日R-15指定(プレスシートはなぜかPG-12))人里を遠く離れたスコットランド高地で。キャンパーが何ものかに惨殺される事件が頻発していた。ちょうどその頃、その地域へ6名の兵士からなる分隊が演習のためヘリで運ばれてきた。敵役は特殊部隊だという。しかし特殊部隊は隊長のライアン大尉(リアム・カニンガム)以外ひとりも残っておらず、大尉自身も重傷を負っていた。分隊長のウェルズ軍曹(ショーン・パートウィー)は、ライアン大尉から襲ってきたのは大型の獣で、一匹だけではないと知らされる。ウェルズ軍曹は演習用の装備をすべて捨てさせ、残っていた特殊部隊の実弾を装備すると、その地域からの脱出を試みるが……。 |
超B級、ゲテモノ映画……という売り方だったので、たいして期待もしないで見に行った。だってキャッチ・コピーが「生き残るのは獣様か、俺様か?」だもの、「死霊の盆踊り」クラスかと思った。 ところが、これがおもしろい。ドキドキ、ヒヤヒヤ、ありふれた設定のストーリーはほぼ予想通りの展開を見せるものの、とにかく見せ方・演出がうまい。細かな展開はアイディアに富んでいて、その点では全く先を読ませない。ここがこの作品の評価されたところだろう。 狼男だって、どうみてもかぶり物というデザインだし、頭でっかちであんなに素早く動けると思えない代物。冷静に見ればちっとも怖くない。むしろ滑稽かもしれない。しかし、映画を見ている間はそれほほとんど感じさせない。「プレデター」(Predator・1987・米)のような手に汗握る展開を見せてくれる。モンスター対特殊部隊。観客は事件現場に立ち会い、登場人物たちと一緒に脱出を試みるわけだ。つまり観客のノセ方がうまい。 驚くのは、これを16mmフィルムという映画学科の学生が使うような(海外の場合で、日本は8mmフィルムだが)を使って撮られていること。上映フィルムは35mmにブローアップされているわけだが、ほとんど気にならなかった。設定なのかもしれないが、シャッター速度が速く(「プライベート・ライアン」(Saving Private Ruyan・1998・米)以来アクション・シーンはみな真似をするようになってしまった)ちょっとリッカー気味になっている。それとカメラが小型のせいか手持ち撮影されているらしく、多くのカットで微妙に揺れ動く。それと速いカット割り、アップめのサイズで、ちょっと目が回る。 プレス・シートによれば、監督はこれが劇場作品のデビューとなるニール・マーシャルという人。映画学校を卒業後、テレビの編集を経て、短編を監督・脚本、友人と製作会社を設立して短編を製作し今回の抜擢となったらしい。どうやらアクション映画をずっと作ってきた人らしい。 そのニール・マーシャルを抜擢したのがプロデューサーのクリストファー・フィッグで、どうやらこの人は映画界でずっと助監督を務めてきた人で、「ヘル・レイザー」(Hellraser・1987・英)でプロデューサーを務めクライブ・バーカーを抜擢して注目されたのだとか。その後「トレインスポッティング」(Trainspotting・1996・英)でダニー・ボイルを抜擢したらしい(共同プロデューサー)。 役者は当然なのだろうが、あまり有名な人が出ていない。かろうじてウェルズ軍曹役にショーン・パートウィーが出ているくらい。ショーン・パートウィーは最近では「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)や「ケミカル51」(The 51th State・2002・米/英/加)、「ロンドン・ドッグス」(Love, Honour and Obey・2000・英)などに出ていた人。あまりいい役は少ないが、良い味の役者さんだ。本作は少ないお得な役だったのではないだろうか。 拾いものは、紅一点、メーガンを演じた女優エマ・クレズビー。「チャリ・エン」のドリュー・バリモアとモニカ・ベルッチを足して二で割ったような美貌。男勝りに度胸があって、強い女を好演していた。舞台やTVで活躍していて、本作が劇場映画デビュー作になるそう。今後注目の女優さんかもしれない。 公開2日目の初回、30分前に着いたら誰もいないし、新宿の劇場はまだ開いていなかった。待っていると20分前になってようやく開場。この時点で7〜8人だった。全員男性で、30代初めくらいの年齢層が多い。ちょっとオタクっぽい人が多かったかも。 最終的には、指定席なしの300席に、ジイさん2人のオバさん1人、金髪の外人さん1人をふくむ40人ほどの入り。もっと混んでも良いはずだが「生き残るのは獣様か、俺様か」なんていうふざけた感じのコピーでは敬遠されてもしようがない。実際にはもっと真剣に一生懸命作っているのに、かわいそうだ。 現代のイギリス軍の話だけに、一般兵士は演習用ライフルにブルバップ形式のL85を持っている。一方、相手の特殊部隊が持っているのが実弾入りのMP5サブ・マシンガン。自分たちの身を守るために弾がなくなるまで撃ちまくってくれる。とにかく怒濤の攻撃を見逃すのはもったいない。 |