日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision(特殊効果はSONYのHDCAM))/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米PG-13指定)過去、2度アカデミー賞にノミネートされたこともあるヴィクター・タランスキー監督(アル・パチーノ)は、最近全くヒット作がなく、プロデューサーの妻とも別れ、映画の製作もできない状態に陥っていた。そんなある日、ハンク・アリーノ(イライス・コティーズ)と名乗る自称タランスキー・ファンコンピューターのソフト・エンジニアが現れ、完璧なCG女優ヴァーチャル・アクトレス、ヴァクトレスを作るシステムを開発したので、科学と芸術を融合させ2人で映画を作ろうという。 |
コメディという売りだったが、ハッキリ言って笑いを期待していくと肩すかしを食らうことになる。もちろん笑いの要素はあるが、それよりは……あえて一言で言うなら「ファンタジー」だと思う。 正直言って、「コメディ」と「トルゥーマン・ショー」(Truman Show・1998・米)からまったく期待していなかった。ボクは「トルゥーマン・ショー」がどうにも好きになれない。発想だけは面白いが、あののぞき趣味的なネガティブな感じがどうにも楽しめないのだ。今回もCGの女優が人気を得るという発想の奇抜さと、シリアス演技のアル・パチーノの組み合わせから、またネガティブなものなのではという予想があった。 つまるところ、監督の感性というのが大きいのだろう。本作の監督は「トルゥーマン・ショー」の脚本を書いてアカデミー脚本賞にノミネートされたアンドリュー・ニコルという人。あるいは「トルゥーマン・ショー」も本当はこういう雰囲気になるのだったかも……いや、一緒かな、わからないけど。 だから、このファンタジーが受け入れられる人にはこの映画は面白いだろうし、受け入れられない人にはアラばかりが目立ってつまらない映画に写るだろう。ボクはOK。あなたはどっち? おそらく使われている技術のほとんどは実現可能だと思う。操作する人間の動きをCGキャラクターに同じようにやらせたり、自分のしゃべる声をCFキャラクターのものに変換したり、その声に合わせて口を動かしたり、CGキャラクターのホログラムを煙のスクリーンに投影してあたかもそこにいるように見せたり……ただし、映画に使われていた程度のわずかでシンプルな構成では無理だと思う。モーション・キャプチャー、データ・グローブ……そんなものが最低でも必要だろう。そこが映画、ファンタジーなわけで。 最初はシモーヌのキャラクターというか顔になじめなかったが、不思議なことにどんどん魅力的に非人に見えてくる。映画の登場人物たちと一緒に彼女が好きになってしまうのだ。ここがうまい。おそらく、観客はCGだと知ってみているから愛情というか感情を抱けないのだろう。ところが見ているに従ってそのキャラクターが生き生きとしてくるから、だんだん魅力を感じるのではないだろうか。 シモーヌはそのシステム全体に名付けられた「simmuration」の短縮で、真ん中を抜いたもの。sim+onでsimon、女性にしてsimoneと。うまいネーミング。しかも日本のタイトルはともかく、オリジナルの英語タイトルは「I」と「O」がそれぞれ「1」と「0」になっている凝りよう。当然キャストやスタッフの表記もすべてそうなっている。この辺の気の使い方も巧い……と思っていたら、デザインはやっぱりイマジナリーフォース。さすがでございます。 ともすれば単にデジタル技術への批判になってしまいそうなところを、ちゃんとエンターテインメントに仕上げて、否定的になっていないところが良い。もちろん警鐘を鳴らすべきところは鳴らし、現状のスター俳優と監督、プロデューサーとの問題などちゃんと描いているところもグッド。 エンディングのクレジットではグリーン・スクリーン前で楽しそうに演技するアル・パチーノの映像などもあり。全部終わった最後の最後にオマケ映像もあるので、物語が終わってもすぐ席を立たないように。 公開初日の初回、寝坊したため銀座の劇場に着いた時には上映20分前。すでに開場していて、あわてて中に入ったら初回のみ全席自由の524席に30人ほど。あれれ、劇場も銀座以外は小さくて設備の良くないところばかりだし……9時15分という早めの時間のせいか。初日プレゼントがあって、ファウンデーションだか何だかをもらった。何かもらうのは嬉しいけど、もらっても使わないしなあ。 2/3は中高年。やっぱりアル・パチーノだとこの年齢層になるんだろうなと。男女比はほぼ半々か、やや男が多い感じ。この劇場は大きめのシートにカップ・ホルダーに傘ホルダーまで完備。音も良いしスクリーンもまあまあで同じ料金。多少の交通費を掛けてもここで見た方が良いと思う。 最終的に中高年が増えて50人ほどに。ちと、さみしい。 |