日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・dts
(米R指定、英15指定)1885年、イギリスに支配されるエジプトの隣国スーダンでマーディに率いられた一団による暴動が起き、イギリス軍の将軍が惨殺された。さっそくイギリスは軍隊を派遣することにし、カンブリア師団が派遣されることになった。同じ士官学校の同期ハリー(ヒース・レジャー)、ジャック(ウェス・ベントレー)、トレンチ(マイケル・シーン)、ウィロビー(ルパート・ベンリー=ジョーンズ)、キャスルトン(クリス・マーシャル)も一緒に派遣されることになるが、ハリーはエスネ(ケイト・ハドソン)と婚約しており戦場などに行く気はなく除隊を願い出る。そんなハリーに臆病者のシンボルである白い羽根が4つ届く。 |
うーん、すごく予算もかかっていて、設定もすごくドラマチックになるはずが、どこか冷めた視点で半歩退いたような所があり、主人公の感情を共感できない。淡々と進んでいく感じ。 とにかく観客が感情移入しにくいのは、冒頭で主人公が悩みながらも戦場に派遣されることがイヤで軍を辞めてしまうせいだ。後で主人公自身が語るように、臆病風に吹かれてのことだ。リアルさで言えばリアルこのうえないことなんだろうが、これから物語が語られようとしているところで、主人公がそういう男では、観客は同情的になれない。婚約者や、友人たちから臆病者の印である白い羽根を送られても、しようがないだろうなとなってしまう。 これが、もし潔く戦場に行って、観客が主人公を十分に好きになってから、何かが起きて臆病になるのなら観客はそう簡単に主人公を見捨てたりはしない。まっ、普通の人間関係と一緒ってことだけど。冒頭のわざとらしいふざけっこなどは、主人公をナイスガイに見せようと無理しているようにしか見えない。 この映画が失敗していることのほとんどはそこにある。あとは良くできていると言っても良いのではないだろうか。ちゃんと人間関係を築けないまま、物語が進んでしまうから、観客は冷めて状況を見てしまう。そして、映画の視点がいまひとつ突っ込んでいっていないから、よけい冷静に見てしまう。 とすると、ひとつには脚本か。同じタイトルの映画は過去4本ほど作られていて、いずれもイギリス人作家のA.E.W.メイソンの原作がベースになっているらしい。最初に映画化されたのはなんと1915年だ。1つ前の作品でさえ「四枚の羽根」(The Four Feathers・1939・英)で、なぜ今なのかはよくわからない。脚本家はマイケル・シファー。デニス・ホッパーが監督し、ショーン・ペンが主演した「カラーズ/天使の消えた街」(Colors・1988・米)、デンゼル・ワシントンの潜水艦映画「クリムゾン・タイド」(Crimson Tide・1995・米)、ジョージ・クルーニーとニコール・キッドマンが共演した「ピース・メーカー」(The Peacemaker・1997・米)を書いた人なので、手慣れていないわけはないんだけど。とすると監督か。 監督はシェカール・カプール・「エリザベス」で数々の賞を総なめにし、アカデミー賞7部門ノミネートという快挙(受賞は1賞)を成し遂げた人。しかし、それ以前はほとんど作品を撮っていない。部分監督などが多い。話題作としてはトータルに監督したのは本作が2作目という感じ。しかも、アクションが主体となる本作において、アクション・ユニットと第2班は「ダイ・アナザー・デイ」(Die Another Day・2002・英米)のアクション・シーンも手がけたジェームズ・アームストロングという人が担当している。 まあ、これはよくあることだが、主要キャストが出ているアクション・シーンは良くなくて、引きの戦闘シーンはとてもいいのだ。旧式のフォーメーションによる兵の動かし方や、敵の包囲攻撃などは息をのむほど素晴らしい。この1点だけは、上をいっているというわけではないが「アラビアのロレンス」(Lawrence of Arabia・1963・英)以来という言葉を使っても良いだろう。でもドラマ部分など、いかがなものか。 銃などの設定はリアルで、メイン・ライフルはおそらくM1866スナイダー・エンフィールドMk IIIあたりだろう。ブリーチがトラップ・ドアのようになっていて、レシーバーの右側に開くのだ。日本にも幕末から村田銃が行き渡るまで使用されていた。当時はスナイドルとかエンピールと呼ばれていたが。実は日本になじみの深い銃なのである。 タイトルは、漂うように現れては消える見せ方ながら特に凝った感じはなく、あまり印象に残らなかったがイマジナリーフォースが手掛けていた。このさりげなさが技なのかもしれない。 公開初日の初回、40分前、銀座の劇場は40分前で10人ほどの行列。ほとんどがオバサン。2人若めの女の子がいただけ。30分前に開場したときには40人ほどに。ややオヤジが増えた感じ。それでも男性は1/3ほど。 10代は0で、20代が1/5いるかどうか。「アラビア……」の年代と言えば、やっぱりオジサンだろうし、ヒース・レジャーということでオバサンか。そうか「エリザベス」というキー・ワードもあったか。 最終的に612席に4.5〜5割ほどの入り。それなのに後ろで立っている怪しげな集団が20人ほど。やっばり配給会社とかの人たちだろうか。どうも気になる。 |