2003年10月25日(土)「ティアーズ・オブ・ザ・サン」

TEARS OF THE SUN・2003・米・1時間58分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS

(米R指定)

http://www.movies.co.jp/tears/index.html

アフリカ、内戦下のナイジェリアから米国籍の女医リーナ・ケンドリックス(モニカ・ベルッチ)を救出するよう、A.K.ウォーター大尉(ブルース・ウィリス)率いる米海軍特殊部隊に命令が下された。しかし、現地に到着するとリーナは患者たちと一緒でなければ脱出しないと言い張り、結局は全員で歩いて国境を目指すことになる。それだけの任務と思われたが、敵は執拗に追いかけてきた。なぜ敵はたかが1人の女医を追ってくるのか。

80点

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 久々の感動巨編だった。ちょっと両目から涙が溢れてしまった。これは、ジャーナリスト好みの表現でいえば、「アメリカ流の正義押し売り」というようなことになるのだろうが。ボクの意見はちょっと違う。もちろん映画を見てどんな感想を持とうと自由だが、ボクはこれは、目の前で困っている人がいたらどうするか、殺されようとしている人がいたらどうするか、という話に思えた。アメリカ人であろうが日本人であろうが、そんな現場に立ち会ってしまったら、しかも自分にパワー(武器)があったとしたら、無視できるだろうか。見過ごすことができるだろうか。

 実際、命がかかった場面では怖じ気づいてしまうのが普通だろう。しかし、それではいけないのだ。良いか悪いか考えている間に、その人は殺されてしまう。それだけは止めなければ。人を殺すことで解決することなど何もないはずだ。そして、この問題は死刑廃止論にもつながっていく。この映画のテーマは大きく、重い。「アメリカ流の正義押し売り」という見方をしてしまえば、それでおしまいだ。

 その苦悩の決断を迫られるのが、ブルース・ウィリス演じるウォーター大尉で、LTと呼ばれている。大尉は米陸軍ではキャプテンだが、米海軍ではルテナンなのだ。で海軍特殊部隊(ネービー・シールズ)のウォーター大尉はルテナンだからLTというわけ。で、その苦悩がよく表現されていた。彼は最初は冷静に上官の命令と行動規範を守り、一線を越えず、深入りしないようにしているわけだ。しかし、どうしても見逃せない事態を目撃するに及んで、一線を越えてしまう。軍人としてはやってはいけないことだろうが、1人の人間としてはどうなのだろう。

 そして、自分の行為が「内政干渉」になるのではないかとつねに自問自答し続けている。この悩む姿がまたいいわけだ。それがないと、ただのエエカッコシーや、正義の押し売りになりかねない。

 見た人同士で、たっぶりと話すことがあるだろう。自分ならどうするか。介入するか、立ち去るか。しかし、ラストはどうなんだろう。映画の構成として、盛り上がりを付ける必要からナパームによる爆撃は必要にちがいないが、現実的にはどうなんだろう。これこそがまさに「内政干渉」そのものではないか。こんなことをしたら、国際社会から総スカンを食らってしまうだろう。戦争行為と断罪されても言い逃れられないものだ。これを当事者である特殊部隊員がやるならまだしも、諫めるべきであり、実際諫めていた上官が、こんなとんでもないことを許可もしくは命令するだろうか。もちろん、それも苦渋の選択の問題ではあるけれど。

 特殊部隊だけに、メインの武器はSOPMODを搭載したM4またはM4A1カービン、しかもバーチカル・グリップやIRポインター、スコープなどが付いている。分隊支援火器はM60E3で、スナイパーはM14ベースのM21、ショットガンなどを装備している。ピストルは、なんとSOCOMピストル。CQB(近接戦闘)では拳銃に持ち替えて、わざわざサイレンサーを装着するところから見せてくれる。

 監督は、まだ若いアントワン・フークワといって「リプレイスメント・キラー」で監督デビューを飾り、その後「トレーニング・デイ」を撮っている人。これはかなりの実力の持ち主と見て良いだろう。今後も大注目だ。

 初日の初回、50分前に着いたら、新宿の劇場はほとんど人がいない。あれ、時間を間違えたのか。良く見たら、当日券の窓口にオヤジが2人。前売り券はボク1人。25分前に開場した時でさえ、当日5人の前売り15人という低調さ。広告のやり方に問題ありか。だって内容としてはいい映画だと思う。頭髪が薄くなってきたブルース・ウィリスにもう力がなくなったということか。脱がないモニカ・ベルッチじゃ魅力半減ということか。

 ほとんどは中高年で、それもたぶん40代以上。下は小学生からいたが、この激しい戦闘シーンなどを見せていいものだろうか。悪影響があるというより、小さな子にはとてもショッキングなはずだから。今の子はこれくらいでは悪夢を見たりしないのかもしれないが。当のアメリカではR指定で成人映画。18歳未満は見ることができない。

 その後、20代のカップなどやや増えたものの、12席×5列の指定席も全席自由だったのに、1,044席の2.5割ほどしか埋まらなかった。その8割はオヤジ。しかも映画好きが多いらしく、ほとんどは600円もするプログラムを勝っていた(ボクも久しぶりに買ってしまったが)。もっと入っていい映画なのに……。若い人たちは「キル・ビル」に行ったということか。

 予告編は「バッド・ボーイズ2バッド」「タイムライン」「マスター&コマンダー」など。うーん、見たい。


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