日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米R指定)
ロサンゼルスの麻薬取締局(DEA)捜査官のショーン(ヴィン・ディーゼル)は、コロンビアからアメリカへ持ち込まれる麻薬を動かしているメキシコの組織のボス、ルセロ(ジーノ・シルヴァ)を逮捕する。しかし、ディアプロと名乗る新しいボスが現れ、従来のルートを整理するととともに、新しいルートを開拓しこれまで以上の麻薬を持ち込もうとしていた。そして、ショーンの妻がディアブロの手下によって射殺されてしまう。 |
ヴィン・ディーゼル主演なので、ついついまたB級テイストのお手軽アクションかと思ったら、意外なことにとても骨太でリアルなお話。「ブルドッグ」なんていう、いかにものタイトルからもB級テイストがいっぱいするが、これらに惑わされてはいけない。監督は「交渉人」「ミニミニ大作戦」のF・ゲイリー・グレイなのだ。もしこれを知らなければ、ボクはきっと見なかっただろうが、あるTV番組でそれを聞いて気が変わった。 どうしてもヴィン・ディーゼル主演だと、スーパー・ヒーロー系だと思ってしまうが、本作では妻を殺された怒りと悲しみのために暴走してしまう人間くさい警察官という設定になっている。事件に絡んで妻が殺されるというのはよくある設定で、妻との愛を描く部分が気恥ずかしくなるほどだが、そこは「交渉人」のF・ゲイリー・グレイ監督、うまく押さえた演出で説得力を出そうとしている。 また、全体に現実感を出すため、色を浅めにしドキュメンタリーっぼい雰囲気を出そうとしている。銃声も高く鋭く、まがまがしい感じにされている。かなり怖い。 そして語られるのは、毎月20トン(!)もの麻薬がコロンビアからメキシコを経由してアメリカ国内に持ち込まれているという事実だ。この恐ろしい現実の前には、捜査官たちの過激な捜査さえ子供の悪ふざけ程度にしか感じられない。アメリカはテロよりもまず先にこちらに対処しなければならないのではないかという気がした。 ひるがえって、日本の実態はどうなんだろう。芸能人がよく逮捕されたりしているが、どれほど麻薬は日本をむしばんでいるのだろう。知るのが恐ろしい気もするが……。 日本にも麻薬取締官はいるが、アメリカのDEAは「毎月20トン」の数値から、比較にならないほど過酷な仕事なのではないかという想像はつく。彼らは麻薬の侵入を防ごうと日夜、自らの命をかけて戦い続けているのだ。そんな思いが、この映画を見るとわいてくる。 そして語られるのが「魔物を倒すには、自分も魔物になるしかない」という言葉。主人公は本当に魔物になってしまうのか、それとも一線で正気を保つのか。 といっても社会派ドラマというやつではなくて、アクション映画、エンターテインメントだ。派手な撃戦も用意されている。そして「交渉人」を彷彿とさせる息詰まるやりとり。これはやっぱり見ておかないと。 ヴィン・ディーゼルが使うのはグロックのたぶん17。街中のカフェ前で展開される派手な銃撃戦では、M60マシンガンやマイクロ・ウージーに混じって、一瞬でよくわからないがフィンランドのサコが作っているAK系のM90も使われていたようだ。そしてハリウッド・ジャックというキザなヤクザが、ガバメントの彫刻入りという高価なピストルを持っている。なかなか銃選びにもF・ゲイリー・グレイ監督は凝っている。 公開9日目の初回、銀座の劇場は35分前で5〜7人ほど。驚いたことに、ほとんどが中高年。オバサンが2人ほど。どうやら若い人たちは話題作以外見ないようだ。まあ、料金が高いということもあるかもしれないが。とにかくオヤジたちは(自分も含めて)映画をよく見る。B級のゲテモノでも、映画好きのオヤジはちゃんと劇場でチェックしている。 25分前に開場して、この時点で10人ほどに。驚いたことに全席自由は初回だけでなく、終日のようだった。いい劇場なのに。ただ、ここもついに前売り券でも当日券との交換が必要となってしまった。面倒くさいのがいやなこともあって前売りを買っているというのに……。ただし、ちゃんとその分サービスがあって、引き替えにポップコーンの割引券をくれた。定価250円が、当日限りだが150円になるという。これはうまい手だと思う。なんか得した気になって150円くらいならと、ついつい買ってしまいそう。ボクはガマンしたが。 最終的には、余裕の435席に40人くらいの入り。あらら、やっぱりタイトルのせいじゃないかなあ。あまりにBしてるもんなあ。若い人、女性、ともに数人。老夫婦が目立った。こんな過激な映画を見て、平気なんだろうか。ちょっと気になった。 |