2003年12月7日(日)「スティール」

RIDERS・2002・英/仏/加・1時間24分

日本語字幕:手書き書体下、風間陵平/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts

(英15指定)

http://www.steal.jp/
(音に注意。全国劇場案内もあり)
誰も殺さず大金を奪う強盗チーム、リーダー、のスリム(スティーヴン・ドーフ)、紅一点のアレックス(カレン・クリシェ)、アーティス(クレ・ベネット)、フランク(スティーブン・マッカーシー)の4人は、強奪した現金の中に2,000万ドルの無記名証券が入っていたことから、これを現金化したら強盗をやめる気でいた。ところが、何者かが正体を警察にバラされたくなかったら、言うとおりの仕事をしろと脅してくる。さらに2,000万ドルの無記名証券の持ち主である組織が、処理屋を雇い差し向けてくる。はたして4人の運命は?!

76点

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 うわ、びっくり。あまりいい劇場で公開されないので、お手軽なB級エクストリーム・アクション映画かと思ったら、先の読めないハラハラ、ドキドキのサスペンス。そこまで期待していなかっただけに、とっても得した気分。おもしろい。さすがにおもしろかった「TAXi」の監督ジェラール・ピレスだけのことはある。ツボをよく心得ている。しかも今回はほとんど笑いなし。真っ向、ハードに攻めている。だからかなり怖くもある。この怖さも、この映画をおもしろくしているのではないだろうか。そしてカッコイイ。

 チェイス・シーンは、さすがジェラール・ピレス監督。他作品とひと味もふた味も違う。まずアングルがいい。この絵を見せるならこの角度という絶妙のカメラ配置。スピード感、危険度(ハラハラ、ドキドキ度)満点。

 予告編はB級エクストリーム・アクションの部分しか取り上げていなかったけれど、とにかく脚本がすばらしいのだ。普通、主人公たちに降りかかる災難は1つだが、本作では2つある。正体不明の脅迫者と、組織に雇われた冷酷な処理屋だ。よって、ストーリー・ラインは、銀行強盗をどう成功させるかと、脅迫者をどうやって排除し、冷酷な処理屋の魔の手からどうやって逃れるか、という3つになる。その1つでも解説するのが難しいというのに、それぞれが同時に進行する。どう考えても主人公たちは絶体絶命ではないか。まさに「前門の狼、後門の虎」状態。そして最後にはきっちりと過不足なく解決してみせるのだ。これがすばらしい。多少、ご都合主義でも、これだけ楽しませてくれるのなら、別にいいではないか。そんな気になってくる。

 書いたのはマーク・エズラという人。脚本ではほとんど知られていないが、あのブラックなコメディの「ウェイクアップ!ネッド(Waking Ned・1998・アイルランド/英/仏/米)」のコ・ブロデューサーをやっているらしい。今後注目かもしれない。ほかにジェラール・ピレス監督も脚本に協力している。

 何と言っても強烈に印象に残るのは、組織に雇われる処理屋を演じるスティーブン・バーコフ。「ビバリーヒルズ・コップ(Beverly Hills Cop・1984・米)」でラスト、エディー・マーフィーに射殺される金持ちの役が印象深い。そして「ランボー/怒りの脱出(1985・米)」では、拷問を行うロシアの将校がすばらしかった。てっきりロシア系の人なのかと思っていたら、なんとイギリス・ロンドン出身。

 本作では、教会で子供たちにリーゼント・ヘアでエキセントリックに教えているかと思えば、眉一つ動かさず人を平気で殺せるタイプを好演。かなり怖い。リーゼントはカツラだし。

 そして、不気味なマグルーダー警部を演じたのは、これまたイギリス・ロンドン出身のブルース・ペイン。よく見かける顔だが、何に出ているかというと思い出せない。

 美しさで行けば、女刑事のカレンを演じたナターシャ「スピーシーズ」ヘンストリッジなのだろうが、ボクがお薦めなのはアレックスを演じたカレン・クリシュ。ほとんど日本では知られていなかったのではないだろうか。もともとはブルネットのようだが、本作のブロンドがとってもよく似合っていた。この人も要チェックかな。

 公開2日目の初回、音響設備がどうやらデジタル対応に改装されたらしいあの古い劇場へ行くと、45分前でボク1人。30分前になって開場した時点で、30代1人、40代以上3人、中年カップル1組、オバサン1人というところ。

 この劇場も床面に傾斜をつけて、座席を千鳥配置するなどすれば、スクリーン・サイズも、規模もなかなかいい劇場になるはずなのに……。惜しい。でも、音響が良くされたのだから、きっと次は……。

 最終的に、272席に40人ほどの入り。しかし、面白い作品だしもっと入って良いと思う。白髪が目立ったけれど、若い人たちにも見て欲しい。たぶん映画は高価ということなんだろうなあ。


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