2003年12月23日(火)「コール」

TRAPPED・2002・米・1時間46分

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/ビスタ・サイズ/ドルビー・dts・SDDS

(米R指定)

http://www.call-movie.jp
(音に注意、画面最大化)

ポートランドの麻酔専門医ジェニングス家に誘拐犯が侵入し、6歳のひとり娘アビー(ダコタ・ファニング)が連れ去られた。そして主犯のジョーと名乗る男はそのまま居座り、母親カレン(シャーリーズ・セロン)を監禁する。逆らえば娘が死ぬという。さらに同時刻、シアトルの学会に出席していた父親のウィル(スチュワート・タウンゼント)も一味の女シェリル(コートニー・ラヴ)によって監禁されることになる。この誘拐はすでに4回行って、いずれも警察沙汰になることなく成功したやり方だった。しかし、今回だけは計算外のことがあった。娘が喘息を患っていたのだ。発作が起きるとすぐに吸入器を使わなければ死んでしまうのだ。

75点

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 怖い。ケビン・ベーコンはこんな役をやらせると、とてつもなく冷酷で怖く見えるが、それにも増して状況の怖さがすばらしい。幸せな家族が引き裂かれ、危機的状況に追い込まれるだけでなく、娘の喘息の発作など、思わぬ事態が次々と起こって、犯人たちにとっても危機的状況が連続するのだ。ここがまたすばらしい。

 ただ、犯罪映画であり、この年末から年始に向かって見る映画としてふさわしいのかどうかは疑問だが。決してアンハッピー・エンディングという訳ではないが、犯罪は割に合わない、因果応報という映画だから、気分爽快すっきりというわけにはいかない。

 宣伝ではダコタ・ファニングばかりが大きく扱われているが、あまり出番はない。ボクは見ていないが「アイ・アム・サム」で数々の賞を受賞し、ついこの前WOWOWで放送されたUFO大河ドラマ「TAKEN」で宇宙人との間に生まれた超能力少女を完璧な演技でこなして絶賛されたばかり(しかもかわいい)の、本当に超能力というか天才少女。「TAKEN」もそうだが、本作もけなげな彼女の存在は確かに大きい。

 しかし、ほとんど出突っ張りなのは、ケビン・ベーコンと母親役のシャーリーズ・セロンだ。ケビン・ベーコンは「激流」(The River Wild・1994・米)などと同様の慣れた役(最新作の「ミスティック・リバー」でも何だか似たような役をやっているような……)だろうが、シャーリーズ・セロンとしては初めての母親役なのではないだろうか。ほぼ全編、泣きはらして目を真っ赤にしているのだが。なかなかがんばっていると思う。

 父親役は「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」(Queen of the Damned・2002・米)で主役を演じたスチュアート・タウンゼント。さすが役者だけあってそれとは全く違う雰囲気で、誠実な父親役を演じていた。なかなか好印象。

 そして、妙な色っぽさで印象に残るのは、父親の監視役をやるシェリルを演じたコートニー・ラヴ。ボクはあまり見ていないのだが、ちょっと地味な作品に出ていたようだ。

 監督はルイス・マンドーキという人で、最近は、入場料を安売りした「メッセージ・イン・ア・ボトル」(Message in a Bottle・1999・米)や「エンジェル・アイズ」(Angel Eyes・2001・米)と、愛をテーマにした映画を撮り続けている。ボクの印象としてはその中で一番いい出来なのではないかと思うが。

 公開4日目の初回、新装なった銀座の劇場は35分前でエレベーターは動き出しており、5Fの劇場ロビーまで行けた。ここでの列は8人ほど。ほぼ30代以上で、女性は3人。しかし続々と人が増えてきて、30分前に開場した時点では20人くらいになっていた。

 男女比はほぼ半々で、中心は40代以上。10分前くらいになって10代と20代もやや増えたが数人程度。最終的に540席の3割ほどしか埋まらなかった。でも、もっと入って良い映画だと思うが、やはりみんな「ラスト・サムライ」と「ファインクディング・ニモ」に行ってしまったか。

 改装された劇場は大変に快適になった。スクリーンも高くなり、バケットふうのシートはハイ・バックで背もたれがやや倒れ気味なので、頭が上に出にくい。どの席からもほとんどスクリーンがストレスなく見えるようだ。しかも新しいスクリーンは大変に明るく、場内の照明がついたままでもハッキリ見える。それを利用して渋谷のシネフロントのように、上映前に新しいサービスなどのスライドが映されていた。

 音響も素晴らしい。とてもクリアでダイナミック。重低音の爆発音では身体が振動するほど。センサラウンドのようだ。上映前にJBLスピーカーのデモがあったが、本当に大迫力。二段重ねの大きなスピーカーが、側面と背面に合計12本も取りつけられていて、サラウンドの定位はっきりわかる。

 もともとキレイだったトイレはさらにキレイになり、オート水栓とエアー・タオルを完備。車いす用のトイレも設けられていた。すばらしい。

 新サービスでは、耳の不自由な人のために赤外線を利用した聴覚補助システムの貸し出し、膝掛けの貸し出し、チャイルド・シートの貸し出し、無料の携帯電話充電サービスなどが加わった。さらに、場内右より中央付近に薄いピンクのカバーを掛けたシートが3列ほどあり、レディース専用席とされ、座った男性は注意を促されていた。女性一人でも安心して、という配慮だろう。ちゃんとチェックに来るところが偉い。やりっぱなしでは意味がないのだ。

 さらに、非常口の表示ランプが小さくなり、上映中は消灯するようになった。上映効果を妨げるので、古い劇場ではどこでも気になるが、それがまったくない。

 唯一気になったのは、喫煙コーナー。これが設けられたことは大歓迎だが、上映前ドアが開いていると、空気の流れの関係でそこの煙がストレートに場内の入ってくるのだ。強力な排煙機か何かを取りつけられないものだろうか。

 同じ料金を払うのなら、こういう快適な劇場で見たい。ここで上映するのなら、多少マイナーな作品でも見たくなる気がした。古い劇場っていったい……。


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