日本語字幕:手書き書体下、田中武人/シネスコ・サイズ(マスク、スーパー35)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米R指定)
アメリカ、カリフォルニア州にあるスウィート・ウォーター刑務所では、更生プログラムの一環としてボクシングが推奨され、年に一度、看守長がレフリーを努めて刑務所内のタイトル・マッチが行われていた。そこでのチャンピオンは、シャバでもチャンピオンだったモンロー・ハッチェン(ウェズリー・スナイプス)だった。ところが、そこへヘビー級のスター・チャンピオン、ジョージ・アイスマン・チェンバース(ヴィング・レイムス)が入所してきて、自分と勝負しろと挑んでくる。 |
2001年の作品が今ころになってやっと公開ということで、期待していなかったからか面白かった。分かり切ったストーリー展開ながらハラハラドキドキ、最後まで面白く見せてしまうところがいい。 たぶんこの映画はマイク・タイソンをモデルに、あるいは彼の刑務所入りをヒントに作られたのではないだろうか。ヴィング・レイムスはとてつもなく大柄で、女性をレイプして刑務所に収監される。それでもスター扱いなので、一般の囚人ならバスで運ばれてくるところ、ヘリコプターでやってくる。この辺から何か起きそうな雰囲気が漂ってくる。 しかもコイツが根っからの乱暴者で、大スター気取り。本当にボクシングのリングで相手の耳を食いちぎりそうなほど悪いから、クライマックスの試合が盛り上がる。 これに、隠然たる刑務所のボス、メンディ・リップステイン(クセのあるしゃべり方であのピーター“コロンボ”フォークが好演)が絡んでくるから面白い。彼が仕切らなければ、刑務所内での試合は実現しないのだ。もちろん刑務所内外で多額の掛け金が動く。面白いなあ。 で、この刑務所の看守長を演じているのが、これまたくせ者のマイケル・ルーカー。どちらかといえば犯人向きの雰囲気だが、最近は刑事役などが多い。バッグ・グラウンドが描かれていなくても、複雑な環境にある人なんだろうと思わせる深さがある。 アイスマン(殺し屋という文字が当てられていた)と同室になるのが、「ラスト・オブ・モヒカン」(The Last of Mohicans・1992・米)でインディアンを演じたウェス・ステューディ。これまた大きな役ではないながら存在感がある。こんなにすごい人たちが出ていて、なんで2年も上映されなかったのか。しかも小劇場での公開だし……。 そして監督は男臭い映画を撮り続けているウォルター・ヒル。だからほとんど女性は出てこない。ちょっとB級の感じはつきまとうものの、定評のある監督のはず。それが、なぜ。ただ前作「スーパーノヴァ」(Supernova・2000・米)は完成させられなかったらしいが……。 ここで展開されるボクシングが、普通ボクらの知っているボクシングのルールとは違うところも良い。それは「ロンドン・ルール」。基本的にはレフリーなし、グローブもなし(ただし、思いきり打ち合いをさせるため6オンス=約170グラムをつけることになる)。ランドに時間制限はなく、相手が立てなくなるまで何ラウンドでもある。相手がダウンしたら1ラウンド終了。60秒のインターバルで立てなければそれで終了。これで戦われるのだ。これが、また、面白い。どちらも倒れなければラウンドは延々続くのだ。 公開8日目の初回、新宿の劇場はお昼近く、通常の2回目からの上映。遅いスタートで、これ1本見ただけで2時30分になってしまうので困るのだが、30分前でボク1人。20分前に開場した時点でも、わずかにオヤジが2人だけ。でも、こういうマイナーに扱われている作品までしっかりチェックして見に来ているオヤジは本当の映画好き。入場と同時にプログラムを買ってきて読んでいる。 最終的に指定席なしの300席に16人ほどの入り。オバサン1人、20代後半らしき男性2人、以外はすべて40代以上のオヤジの方々。もっと客が入っていいと思うが、ほとんど知られていないようで残念だ。ピーター・フォークが出ていることなんか、見るまで知らなかったもんなあ。おかげでうれしい驚きがあったけど。 |