2004年2月1日(日)「ニューオーリンズ・トライアル」

RUNAWAY JURY・2003・米・2時間8分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー/dts

(米R指定)

http://nt.eigafan.com/
(音に注意。全国劇場案内もあり)

会社をクビになった男が、オフィスで拳銃を乱射、11名を次々と射殺、5人に重傷を負わせ自分もその銃で自殺してしまう。2年後、事件の犠牲になったある未亡人が銃器メーカーを訴える。原告側弁護士はウェンドール・ローア(ダスティン・ホフマン)で、被告側陪審コンサルタントはランキン・フィッチ(ジーン・ハックマン)。お互いに裁判に有利なように陪審員を決定していくが、その2人に、陪審員の票を売るという女から電話が入る。

76点

1つ前へ一覧へ次へ
 おもしろい。アメリカの裁判制度は、今度日本も導入しようかという陪審員制度。それがどういうものなのか、本作を見れば一目瞭然。なかなかいいシステムだと思うけれど、すでにアメリカではそれを巡ってビジネスになっているという驚き。

 日本人にはなじみの薄い制度なのだが、たしかに陪審員1人1人のバックボーン、生き方、信条までを調べ上げないと裁判はどう転ぶかわからない。この映画のように不法侵入してまでも個人情報をほしがるものなのかもしれない。

 おそらく狙いだと思うけれど、「十二人の怒れる男」(12 Angry Men・1957・米)を彷彿とさせる面白さがある。そして本作では、カメラは陪審員室を飛び出し、町へ出て裁判の裏側までも描き出す。陪審員の日常、陪審コンサルタントの信じられないほど豪華なチーム編成と、その仕事。話に厚みが加わっている。

 そして、早めに明かされる陪審員の1人の若者と、謎の電話の若い女の関係。はたして2人の狙いは何なのか。そして裁判の行方は。

 特に陪審員から自分たちに不利なメンバーを外していく仕掛けというか、テクニックがすごい。これぞ映画というべきか、はたまた詐欺のテクニックというべきか。ここも見所のひとつ。

 キャストがとにかく豪華。ダスティン・ホフマンとジーン・ハックマンだ。直接のからみはほとんどないけれど、この2人の演技は見応えがある。特にジーン・ハックマンがいい。ほんとに素晴らしい役者だと思う。どの作品でも、良い役でも悪い役でも、とにかく存在感がある。

 ジョン・キューザックはつい最近「アイデンティティー」(Identity・2003・米)に出ていたし、その前だと「セレンディピティ」(Serendipity・2001・米)にも出ていて、とにかく面白い作品ばかりという印象がある。彼の役所は、控えめで誠実な好青年というのが多く、ほんとにそれがピッタリ。しかし、今回はそれを利用して技を仕掛けていくわけだが、そこはそれ、最後の最後にその理由が明かされ、納得ということに。

 したたかな女に見えるマーリーを演じているのは「ハムナプトラ」でブレイクしたレイチェル・ワイズ。このしたたかさと可愛さが同居したキャラクターがこの映画では重要な役割を果たしている。

 意外だったのは、冒頭のシーン。最高のクリスマス映画「34丁目の奇跡」(Miracle on 34th Street・1994・米)や人気TVドラマ「ザ・プラクティス/ボストン弁護士ファイル」でおなじみのディラン・マクダーモットが出ていること。てっきり弁護士を演じるのだと思ったら……これは狙い、ですね。とても贅沢な使い方。

 ほかにもランキンのチームに「X-men」のトカゲ男がいたり、弁護士に「X-men」で溶けた上院議員を演じたダーウッド・ケーブルがいたり、陪審員にもよく見かける俳優さんたちがいるし、裁判長や原告側の陪審コンサルタントなど、ほんと贅沢だ。

 公開2日目の初回、40分前に銀座の劇場に着いたら、地味な映画にもかかわらず13人ほどが並んでいた。しかも、みごとに中高年のみ。女性は3〜4人。

 35分前くらいから増えだして、30分前に開場した時には30〜35人ほどに。若い女性がわずかながら増えたようだ。ただし女性のほとんどは中高年。

 指定席は特別な椅子を使ったくくりつけのプレミアム・シートなので、初回から指定席(6席×4列)はあり。なんとオバサンが2人ここに座った。うらやましい。

 最終的には、612席に8割ほどの入りで、近頃珍しいが、映画の日で入場料金が1,000円均一になることを忘れていた。そうか、そうだったか。このうち20代〜30代とおぼしきは2〜3割ほどという感じだった。


1つ前へ一覧へ次へ