日本語字幕:手書き風書体下、古田由紀子/ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビーデジタル・dts
(英15指定、米R指定)
フランスのリゾート地リビエラに、麻薬におぼれるギャンブラー、ボブ・モンタナ(ニック・ノルティ)がいた。彼は逆転をかけて全財産を競馬につぎ込むが、ついていない時はすべて裏目に出る。そこで、昔の仲間と組み、日本人が経営するカジノの壁に掛けられた名画を強奪する計画を立てる。しかし昔からのなじみである地元警察のロジェ刑事(チェッキー・カリョ)の監視の目が光っていた。 |
ラストの成り行きは、まるでそれまでの努力をひっくり返してしまうもので、いかがなものかと思うけれど、それまでの90%くらいは素晴らしい。ニール・ジューダン的な怪しげな雰囲気が、何とも言えない異世界の雰囲気を醸し出している。まるで1時間49分間、別の世界を体験しているような感じ。 ギャンブル、麻薬、暴力、ヤクザ、売春、性転換、強盗、世界的名画、大金……うーん、そこから抜け出せないもどかしさや、一発逆転にかける男達のあがきなど、実に見事だ。観客として安全なところから盗み見ている限りは、興味深くて面白い。しかし、これが現実だったら……カジノなどの近くではこんな物語がいくつも展開していようとおかしくない。おお、怖!! 何と言っても印象に残るのは、あどけなさと倦怠感が同居する、まさにボスニアから戦火を逃れてやってきた家出娘が売春をして稼いでいますと言わんばかりの、アン役ナック・クヒアニチェ。公式サイトにはヨルダン・ティビリシ出身とあったが、IMDbなどで調べると旧ソ連のグルジア・トビリシ出身とあった(Nutsa Kukhianidzeはナックでいいの?)。トビリシは間違いなくトルコのお隣グルジアの首都(詳しくは日本グルジア文化協会)。 http://www7.airnet.ne.jp/art/georgia/index.html ここって、そこそこ有名じゃなかったっけ? いずれにしても、本当にコケティッシュかつエキゾチックな魅力にあふれる女優だ。おそらくニール・ジョーダン監督が惚れ込んでの起用だろう。ナイス・バディを惜しげもなく披露している。1983年生まれというからまだ20歳そこそこ。大作はこれが初めてだとかで、今後期待かもしれない。 チェッキクー・カリョは珍しくおとなしい役で、ニール・ジョーダン監督はあえて逆の使い方をしたようだ。ボクはいつキレるのかとハラハラしながら見てしまった。これが狙いだろう。 渋いニック・ノルティに憧れているチンピラが、「フューチャー・ゲーム」(Gamer・2001・仏)のサイード・タグマウイ。元ボクシング世界チャンピオンと紹介されていたが、これもIMDbではフランスで2位にランキングされたことがあるとしかなかったが……。 この物語の構成は、ギャンブル映画で泥棒映画でピカレスクだけれど、ひょっとするとマカロニウェスタンなのではないかという気もした。というのも、ニック・ノルティがアンにギャンブラー10カ条というのを言って聞かせるのだが、これがジュリアーノ・ジェンマとリー・ヴァン・クリーフの「怒りの荒野」(I Giorni Dell'ira・1967・伊)のガンマン10カ条のようなのだ。まあ、パターンといえばパターンだけど。 公開2日目の2回目。銀座のマイクロ劇場も映画の日とあってか比較的込んでいる。これは困る。ここは改装してシートと音響システムなどが良くなったものの、あいかわらず前の席の人の頭がじゃまになるのだ。カップホルダーよりも先に千鳥配列にしてくれればよかったのに。客席数が減るからだろうか。真ん中の通路がなくなったので、出入りがとてもやりにくくなった。スクリーンまで小さくなったような気がするが……。 指定席なしの177席に7.5割ほどの入り。最初字幕が縦に出たのでよかったと思ったが、タイトル付近だけで始まると下に移動してしまった。これは、ここではとても見にくい。なんだか悲しくなった。 |