日本語字幕:丸ゴシック体、下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(英15指定、米R指定)
まもなくクリスマスを迎えるロンドンはヒースロー空港。たくさんの人々が別れと再会でごったがえしていた。そのころ録音スタジオでは老ロック歌手(ビル・ナイ)が往年のヒット曲の詩をクリスマスに言い換えて再リリースするため録音中だった。同じ頃、新しいイギリス首相(ヒュー・グラント)が首相官邸でお茶くみ秘書のナタリー(マルティン・マカッチョン)を紹介されていた。また教会ではジュリエット(キーラ・ナイトレイ)とピーター(キウェテル・イジョフォー)の結婚式がピーターの親友で画家のマーク(アンドリュー・リンカーン)のお膳立てで始まろうとしていた。さらに、小説家のジェイミー(コリン・ファース)は妻が自分の弟と不倫している現場に出くわしてしまう。 |
実に良くできたイギリスらしいコメディ・タッチのラブ・ストリーズ。ロンドンのヒースロー空港でのたくさんの人々が別れと再会で始まり、同じくヒースロー空港での別れと再会で終わる。できればバレンタインの2月ではなく、映画で描かれているとおりクリスマスに見たかった。ホントに素晴らしい。そうか、クリスマスってこういう日だったんだと、あらためて思った。 老ロック歌手、イギリス首相、若い画家、失意の小説家、妻を失った男、学校一人気のある少女に恋する11歳の少年、映画のスタンドイン、デザイン会社のボス、チーフ・デザイナー、もてたくてアメリカ行きを計画する若者……10コのラブ・ストーリーがそれぞれに進行しながら、ラストに向かって収束していき、ちゃんとみなそれぞれどこかで関連していて、バラバラでないところがいい。 冒頭のナレーションで語られるように、人生にはたくさんの別れと出会いがあって、世界には実は愛が(Love Actually)たくさんあると。あのアメリカでの911の事件の時も、一番多かった電話は愛の電話だったと。 すべてが丸く収まるわけではないし、そのままという関係もある。その辺がハリウッドっぽくなくていいのかも。アメリカも出資しているものの、イギリスらしい気骨も見せる。 チラッと出るアメリカ大統領がプレイボーイという設定で、実生活でもプレイボーイのビリー・ボブ・ソーントンというのもおかしい。最後にちょっとだけ出る、アメリカからやってくるイケイケギャルが「スターシップ・トルーパーズ」や「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」のデニス・リチャーズ。また、あまり重要な役ではないけれど、ちらっと出てきて笑わせるのは「Mr.ピーン」ことローワン・アトキンソン。オール・スター・キャストだが、チョイ役も豪華なこと。これもまたお得。 監督と脚本を担当しているリチャード・カーティスは、ローワン・アトキンソンとTVの「ミスター・ビーン」で組んでいた人。ずっと脚本を担当している。あの番組はローワン・アトキンソンの個性もさることながら、脚本が良くできていて面白いのだから成功の立役者でもあるわけだ。劇場作品としては「フォー・ウェディング」(Four Weddings and a Funeral・1994・米)や「ノッティングヒルの恋人」(Notting Hill・1999・米)、「ブリジット・ジョーンズの日記」(Bridget Jones's Diary・2001・米英)などの脚本を担当している。いずれも、さりげないコメディ・タッチがいい雰囲気を醸し出している作品。この人はたぶん、とても優しい人なんだろうという気がする。 公開2日目の初回、銀座の劇場は「混雑緩和のため」ということで、「タイムライン」と入れ替わって一番大きな劇場へ。ここはいい。ラッキー、得した気分。45分前に着いたら、258人くらいの行列。クリスマスに公開していたらもっと人が入ったことだろうと思う……。一番多かったのは20代の女性。まうラブ・ストーリーだし、ハンサムなヒュー・グラントが出ているし、まあ予想通り。上は白髪の老人まで。 35分前に開場した時点で70人くらい。初回のみ全席自由で、12席×7列(!!)のカバーの掛かった席も自由。最終的には948席の6〜6.5割が埋まった。最近はスクリーンがむき出しの劇場が多いが、ここはカーテンが降りている。これもまたいい。とにかく、もっと人が入っても良い映画だと思う。 |