ビスタ・サイズ/ドルビー
2010年の横浜市八千代区。小学校教師の市川新市(哀川翔)は34年前に7話で打ち切られた伝説の変身ヒーロー、ゼブラーマンの大ファンで、自作のヒーロー・スーツを夜な夜なコスプレを楽しむ毎日。しかし、父の勤務先と同じ学校に通う息子は「オマエの父親は暗い」といじめられ、娘は援助交際、妻は不倫と、家庭内はぐちゃぐちゃだった。そんなところへ離婚したばかりの看護婦の可奈(鈴木京香)が足が不自由な1人息子、晋平(安河内ナオキ)を連れてやってくる。そして密かに宇宙人の事件を追う防衛庁の特殊機密部の及川(渡部篤郎)が調査のため八千代区にやってくる。 |
おもしろい。さすがは宮藤官九郎の脚本。ただ希望をいわせてもらえば、後半はリアル志向で行って欲しかった。それで、感動させておいて最後の最後にまたコメディに戻して笑わせて終わる、というのが良かったなあ。 難しいのは、結構ベタなギャグが多くて、心底笑えないこと。これらを笑っていたのは子供かお年寄りだけ。で、つらつら考えてみるに、この手の映画を見に来る人というのは、かつてヒーローものをTVで見ていた大人ではないだろうか。かつて夢中になった架空の正義のヒーローが、せめて映画の中だけでも本物になってくれるという、その期待があって劇場に足を運んでいるのではないだろうか。 もし、そうだとするならば、全体がコミカルな作りになっているのはいいが、後半のクライマックス部分などはもっと真剣でリアルなものの方が良かったのではないだろうか。前半で特撮ヒーローもののおかしなところに突っ込みを入れるのは大歓迎。でも後半では徐々に真剣モードに入っていって、キッチリと事件の落とし前をヒーローらしくつけて欲しい。 もちろんつまらないとか言うのではなく、なんだか真剣に見えない感じがするのだ。あるいは特撮ヒーローものに対して愛情が感じられないというか……。真剣なのかチャカしているのか、非常にビミョー。 主演作品100本目という哀川翔のコネなのか、それに近い映画を量産し続ける三池崇史監督のコネなのか、有名人(タレント、俳優ら)が多数チョイ役で出演。それはそれで楽しめるものの、映画全体としては雰囲気が壊れるというか、そこだけ突出してしまうというか。あまり良くないと思う。その場限りのキャラはまだいいが、職員室にいるべきような人が後でいないというのは、どうなんだろう。 ボーナスのようなお得感があるのは、あの鈴木京香がコスプレで(ゼブラナース)しかも胸の谷間までクッキリと見せていること。ちゃんとギャグとして入れられ、意味のあるカットなので大変結構。ごっつぁんです。鈴木京香、えらい!! 脱帽!! ヒーローのコスチュームは3グレード作られており、主人公の哀川が手作りするバージョンと、TV番組用のいかにもの着ぐるみスーツと、本当に変身してしまった時に着用するレザー風の本当にカッコいいバージョン。この表現がまた素晴らしい。こうでなくては。特にレザー風のは「本気」を感じさせる。 なのに、それと対決する宇宙人がチャチ。狙っているのだろうが、主人公の「本気」さと釣り合いが取れない。まるでおちゃらけ。怖くない。敵が強そうで怖くなければ、ヒーローの活躍も引き立たないし、ありがたみが薄れてしまう。ここが問題なのでは。途中で出てくるカニ男(柄本明)とか顔が真ん中についてる丸い怪人とかは、設定上これでいいのだけれど、あのゼリーみたいな2等身の宇宙人はどうかなあ。 主題歌は素晴らしい。ザ・ハイロウズの「日曜日よりの使者」。覚えやすくてノリが良く、耳に残ってついつい口ずさんでしまう。 公開2日目の初回、これも用心して55分前に着いたら8人しか並んでいなかった。2日目だというのに。20代らしき女性3人に、30〜40代くらいの男性5人。やっぱりかつてヒーローものに夢中になった世代ではないのか。 30分前に開場になった時点で50人くらいの人。下は小学生くらいからいるが、中心は30〜40代の中年世代。初回のみ全席自由で、2F席もOK。最終的には1F席に6割ほどと、2F席に16人(うち女性2人)。ちょっと物足りない感じが。 今回は2F席から見たとき、とてもスクリーンが遠い感じがしたのだが、どういうことだろう。他の映画では感じたことがなかったのに。HD編集とかって出ていたけど関係ないよなあ。 外で並んで待っていた時、外国人の人が通りかかって「SEBRAMAN」のタイトルに大受けしていた。わざわざ口に出していたから、よほど面白かったんだろう。 |