2004年2月21日(土)「ドッグヴィル」

DOGVILLE・2003・デンマーク/スウェーデン/仏/ノルウェイ/蘭/フィンランド/独/伊/日/米/英・2時間57分

日本語字幕:手書き書体、下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(HDTV、Sony HDW-F900)/ドルビーデジタル

(デンマーク11指定、米R指定、日R-15指定)

http://www.gaga.ne.jp/dogville/index.shtml
(全国の劇場案内もあり)

1920年代とおぼしき時代、アメリカ、ロッキー山脈の麓に住人23人の貧困にあえぐ小さな村があった。ある日、そこに若い女グレース(ニコール・キッドマン)がギャングに追われて逃げ込んでくる。村人は相談の結果かくまうことにするが、見返りとしてたいした必要でもない雑用をやらせることにする。しかしやがて村人たちの態度は横柄になり、グレースを虐待するようになる。

68点

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 頭のいい人が作ったのだと思う。誉める映画評論家も多いと思う。だけどボクには退屈だった。舞台の芝居をそのまま映画にしたような感じ。いや、映画の撮影前のリハーサルをそのまま映画にしたというか。

 かつて天才アルフレッド・ヒッチコックも「ロープ」(Rope・1948・米)という映画で、映画の中の時間の進行を実際の時間の進行と合わせ、1カットで撮る(実際には35mmの撮影フィルムは10分の長さしかないので人の背などでカットしている)という実験作品を作ったことがある。これはボクには十分に面白かったが、ご本人は失敗作だと言い切っている。その失敗作にも達していないという印象を持った。

 「ロープ」はちゃんとセットがあり、カメラがその存在を意識させないほどスムーズに動く。さらにアップや引きなどのバランスが巧妙で、ストーリーの構成もハラハラドキドキと面白い。

 一方、本作はセットが無く、それは観客の想像力任せ。カットが変わっても風景というか壁さえないから絵が変化しない。非常に単調になってしまうのだ。しかも神の視点たる俯瞰を多用していることから第三者的な冷めた目が存在し、物語への没入を妨げている。カメラは手持ち(肩載せ)が多く、微妙に揺れ動くので軽いめまいを覚えるほど。ストーリー構成は、ちゃんと主人公がいても群像的な描き方なので、細かなエピソードを積み重ねて描きあげていく手法。どうにも感情移入しにくく、また時間がかかる。

 しかも笑顔がいっさい無い。初めから終わりまで気の重い話がじっとりと描かれていく。まるでそれが永遠に続くかのような絶望感。うーん……。お金を払ってこんな気分になるって言うのは、どうなんだろう。この不景気で、BSEやエイズや鳥インフルエンザが流行って、実生活でもうんざりしているってのに。なんでもハッピー・エンドがいいとは言わないが。3時間もそれを見せられるのだ。そういう意味では、ラストの意外なカタルシスは救いでもある。こうでもしない限り3時間の深刻劇に落とし前はつけられないだろう。

 時代的には銃は当然ストックなしのシカゴ・タイプライター。ものすごいマズル・フラッシュがソドムとゴモラの地獄の業火のように迸る。つまりそういうなのかも。「ソドムとゴモラ」だと。

 だからグレースは鎖につながれていなければならないし、町を出るとき振り返ってはならない。本作では車の中からバックミラーで見て、町の崩壊を知るようになっている。欧米の評価が高いのは、そういう宗教的な下地があるからではないだろうか。

 公開初日の初回、45分くらい前に銀座の劇場についたら当日券の列に7人、前売り券の列に20人ほどの行列。多くもなく、少なくもなく、まあ普通といったところ。男女比は3対1で男性が多く、30代らしい人が1/3くらいいて、後はそれ以上の年齢層。

 25分前に開場して、その時点で当日20人の前売り50人くらい。なかなか多いようだ。ボクと同じくトリッキーな手法に載せられた口か。最終的にはプレミアム・シートに1カップルを含む4人も座り、約600席の一般席は6.5割ほどが埋まった。

 また例によって10人くらいの関係者集団が……。うーむ。


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