日本語字幕:手書き書体、下、水野衛子・太田直子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル・SDDS
(シンガポールPG指定)
紀元700年の中国。遣唐使として日本から中国にやってきて25年になる来栖(中井貴一)は、皇帝により犯罪者の処刑の執行をやらされていた。そして長年の帰国要請が受け入れられ、最後の使命としてかつて同じ処刑人で皇帝の命令に逆らって罪人を処刑しなかった男、李(チアン・ウェン)の処刑を命じられる。 |
歴史を前面に押し出した「大河ドラマ」的な映画かと思ったら大間違い。痛快チャンバラというか、豪快西部劇というか、思いっきりのアクション時代劇だった。雰囲気としては韓国・中国合作の「MU武士SA」(Musa・2001)と似ている。あるいは「アウトライブ」(飛天舞・2000・韓)とも言えるかもしれない。特にラストの攻城戦などそっくりだ。 それでも本作が際だって面白いのは、カッコいいサムライ的な生き方と、これでもかの激しいアクション、そしてこだわったカッコイイ絵作り。よくできた西部劇と共通するものがある。中井貴一があんなに体が動くとは。しかも中国語がうまい(ようだ)。 だいたいタイトルからして良い。英語の文字が出てから漢字の文字が出るのだが、その出し方がカッコいい。漢字ってカッコいいなあと、再認識した。アメリカ人とかがわけもわからず漢字のTシャツを着る気持ちがわかる。 とにかく西部劇なのだ、これはきっと。刑執行官が逃げているという設定には、南北戦争の敵味方的な人間関係を読みとることもできるし、連邦保安官と犯罪者という関係を読みとることもできる。襲ってくるトルコ軍はインディアンやメキシコ軍のようで、馬賊はアウトローの○○一味やワイルドバンチに相当する。そしてアクション・シーンではサム・ペキンパーのようにスローモーションを多用する。城は当然、砦だ。砂漠(ゴビ砂漠)も出てくるし、渓谷は本当にグランドキャニオンのようで圧倒される。馬も当たり前のようにたくさん出てくる。旅籠はサルーンで、だからそこで決闘のようなことも起こるし、敵の力を測るためにわざと刺客を差し向けたりする。うん、西部劇だコレは。間違いない。 砂漠の水をめぐるエピソードも、ハンフリー・ボガートの「サハラ戦車隊」(Sahara・1943・米)と似たような感じで、ボクの映画の師匠の話では「サハラ……」も西部劇のリメイクだそうで、さらに「廃墟の守備隊」(Last of The Comanches・1952・米)で西部劇としてリメイクされているという実は定番ネタ。うまく取り込んでドラマを盛り上げている。 監督は北京生まれで、満州皇族の末裔という、実はおぼっちゃまのフー・ピンという人。いろんな作品で助監督を務めてきたらしい。そして監督デビューした後はたくさんの賞を受賞、世界的にも注目されているらしい。なんでもアートとエンタテインメントのバランスの良さが持ち味なんだとか。うん、本作はエンタテインメントの方が多めだが、決してアートも忘れていないことがよくわかる。「ハッピー・フューネラル」(Big Shot's Funeral・2003・中/香)では製作総指揮を務めているという。 公開2日目の初回、45分前で銀座の劇場は3人の待ち。オヤジ2人のおじいちゃん1人。あれれ。30分前くらいに開場した時点で17〜8人ほど。 最終的には、初回のみ11席×2列×左右の指定席を含む全席746席が自由で、3.5〜4割の入り。ハイ・ティーン1人、30代以下は2割ほどで、8割近くが老寄りの中高年。男性が多かったものの、夫婦連れが目立っていた。 それにしても、都内では小さい劇場のみでの公開。シネスコでスペクタクルが売りなのに……。銀座の劇場も席数だけは多いものの、縦長で半分より後ろはスクリーンが遠すぎでほとんど人が座っていないし……。その真ん中くらいにある指定席って意味があるんだろうか。しかも座席は他の席と一緒で、2列前に人が座っていても頭がじゃまになる劇場なのに……。ああ、悲しい。 |