2004年3月13日(土)「ペイチェック 消された記憶」

PAYCHECK・2003・米・1時間58分

日本語字幕:丸ゴシック体、下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/dts

(米PG-13指定)

http://www.paycheck.jp
(全国の劇場案内もあり)

近未来。コンピュータ・エンジニアのマイケル・ジェニングス(ベン・アフレック)は、ライバル社の新製品をリバース・エンジニアリングし、それを元により上の機能の新製品を開発。しかもその期間2ヶ月ほどの記憶をパートナーのショーティー(ポール・ジアマッティ)が消去することによって大金を得ていた。そして、今度はオールコム社の依頼によって、新製品を開発するための3年間の記憶を消すことに同意し、ビック・プロジェクトに参加することになるが……。

74点

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 2003年度の「ラジー賞」で主演男優賞を受賞してしまい、対象作品に本作が入っていたので心配だったが、面白い。SFとしてもコアなファン向けのSFではないものの魅力的だし、謎解きの面白さからミステリーとしても一級品のエンターテインメントだと思う。約2時間、まったくの別世界へのトリップを体験できる。どうして、これが「ラジー賞」? 2003年にベン・アフレックが出た作品の1つだったからということか。

 原作は「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米香)“アンドロイドは電気羊の夢を見るか”や「トータル・リコール」(Total Recall・1990・米)のフィリップ・K・ディック。どうりでよく出来たお話なわけだ。

 CMでは何だか記憶を売る男の話のような印象だったが、そうではなくて、ライバル社の新商品をリバース・エンジニアリングしてプラス・アルファした新商品を開発するという違法行為の製品開発をしているゆえに、記憶を消さなければならないのだった。これは納得できる。少し先の未来なら、限定された記憶を消すことが出来るようになっているような気がする。また、盗む商品というのが、専用の眼鏡を必要としない3Dモニターで、非常に説得力があったので、観客はいっきに引っ込まれる。しかもアバン・タイトルでさえビックリの落ちが付いていて、エッ、そうなのという驚きがある。これでイントロだからなぁ。ここから本編が始まる。つかみは完璧にOK。

 そりゃ、もちろん監督がジョン・ウーなので、すばらしいアクションものになっているのだけど、何より良いのは、自分が招いた事件でありながらも、記憶を売っているためになぜこうなっているのかがわからない。しかも本来は仕事が終わったら大金をもらえるはずなのに、自分からそれを放棄しており、残されたものはガラクタとしか思えない封筒に入れられた19個のガラクタ。そして、いきなり命を狙われる。

 この巻き込まれパターンは、まさにヒッチコック・ミステリー。しかもアクションSFなんだから面白くならないわけがない、という期待を持たせ、まさにその通り期待に応えてくれた、というかそれ以上の出来だった気がする。いや、「ラジー賞」のことがあったからヘンに期待していなかったのがかえって良かったのか。

 特に良かったのは、19個のガラクタ+封筒が事件を解いていくカギとなっていて、ストーリーの展開と共にすべてキー・アイテムとして使われていくこと。これが素晴らしい。まるで難解なパズルが解けたときのようなスッキリ感がある。考えようによっては、すべてが計算によって成り立っているような不自然さがあるということになるのかもしれないが、ボクは面白かった。あまりいい劇場でやっていないが、劇場で見ておいた方が良いと思う。

 公開初日の初回、銀座の劇場は50分前に着いたら窓口だけオープンしていて、ちょうど入り口に行列ができはじめるところ。45分前に開場し、この時点で8人。中高年のみで、やや高年齢者の方が多い。女性は3人。

 初回のみ全席自由で、それ以降は全席指定。プレミアム・シートは17席×2列。初回のみこれも自由。30分くらい前から増えだして、若い人もチラホラと。下は中学生くらいから。最終的には老若比3対1で、男女比はほぼ半々。654席の3.5〜4割ほどが埋まった。ラジー賞の影響なのか、ちょっと観客が少ない気がする。おもしろいので、ぜひ劇場で見て欲しい。


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