日本語字幕:丸ゴシック体、下、牧野琴子/ビスタ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(日R-15指定、米PG-13指定)
1973年8月18日、アメリカ・テキサス州トラヴィスの人里を遠く離れた片田舎を5人の若者がドライブ中、呆然と歩いている1人の若い女性を車に乗せる。ところが、車の向かう方向へ行きたくないと騒ぎだし、突然ピストル自殺してしまう。パニックに陥った5人は警察へ通報するため電話を探すが、付近には人家さえ見あたらない。しばらく走ってようやく古めかしいドライブ・インを見つけ、電話をしてもらうが……。 |
もう何度も映画化されているネタ。直接的にはトビー・フーパー監督の「悪魔のいけにえ」(原題同じ・1974・米、ボクは「悪魔のはらわた」とよく間違う)だが、その元ネタは1957年に起きたエド・ゲイン事件。映画ではいちはやくアルフレッド・ヒッチコック監督が「サイコ」(Psycho・1960・米)で映画化した。その後、その事件にインスピレーションを得て作られたのが「悪魔のいけにえ」で、「悪魔のいけにえ2」(The Texas Chainsaw Massacre Part 2・1986・米)、「悪魔のいけにえ3/レザーフェイス逆襲」(Leatherface : The Texas Chainsaw Massacre III・1989・米)、「悪魔のいけにえ/レジェンド・オブ・レザーフェイス」(The Return of the Texas Chainsaw Massacre・1995・米)、と続き全部で4本もある。そして一番実際の事件に近いのが「エド・ゲイン」(Ed Gein・2000・米)。 それらの中でも、本作はかなり怖い。少しも息抜きさせず、頭からしっぽまでずっと怖いテンションが連続する。それが何だったのかとか、理由を解釈しようという姿勢はほとんどない。気持ち悪さと怖さ、これがキーポトント。拳銃をくわえて自殺した女の傷口をカメラが通って後頭部を抜け、リア・ウィンドーまで突き抜けて惨状を映し出すところなど、普通だれも考えつかないんじゃないだろうか。血に混じって脳も飛び散っており、この悪趣味、気持ち悪さ。それはもうかなりスゴイことになっている。 ボクは最初のインパクトでは第1作が怖かったと思うが、迷宮・魔宮的怖さではデニス・ホッパーの2挺チェーンソーの「2」が、逃げられない恐怖はオリジナルの脚本家が監督した「4」が良かったような気がする。で、本作はどう怖いのかというと、追いかけられる恐怖だ。逃げても逃げてもチェーンソーを振り回しながら追ってくる。 このチェーンソーも怖い。怖いといってもシリーズすべてで使っていて同じように怖いのだが、本作では持っている本人までも傷つけてしまうから、その怖さは最高レベルだ。持っている狂人よりも怖いのだ。たぶん本当はチェーンソーが手から離れたら安全装置が働いて停止するはずだが、本作では改造してあるのか勝手に回り続けて近寄るものをすべてぶった切ってしまうのだ。 良い悪いではなく、気持ち悪さなどを除いて純粋な怖さだけで言うならば、ボクは逃げられない恐怖を描いた「4」の「悪魔のいけにえ/レジェンド・オブ・レザーフェイス」が怖い。イヤだ、と言うくらい怖い。 本作も美女(22歳のジェシカ・ビール)が薄いタンクトップ一枚で悲鳴を上げながら逃げるので、それはそれなりに見所満載でいい。ただしこれは基本。ヒネリがないと見終わった後に何も残らない。本作も見ているときはかなり怖いのに、見終わってしまうとすぐに笑顔で帰れるような軽さがある。 「フルメタル・ジャケット」(Full Metal Jacket・1987・米)の鬼軍曹、R・リー・アーメイ演じる警察官は、異常な感じが出ていて良い。しかし、それより何より怖いのは、車いすに乗った異常なじいさん。かんしゃく持ちですぐ怒り、いい歳をしているくせに好色で、若い女に目がない。そして何より冷酷で残忍。これは怖い。 監督はミュージック・ビデオで数多くの有名アーティストの作品を手がけてきた、ドイツ出身のマーカス・ニスベル。本作が劇場作品のデビュー作になるという。なかなか堂に入った演出で、今後注目かもしれない。 公開初日の初回、新宿の劇場はラッキーなことに見にくいところからましなところに変更になっていた。50分前に着いたら高校生くらいの男の子が2人。45分前になって7〜8人になった。ほとんどは高校から大学生くらいで、男ばかり。 寒い雨の日だったが、人が少なかったせいか20分前になるまで開場しなかった。この時点で30人程度。若い女性が3人くらい。意外にカップルは少なかった。老若比は2対8と圧倒的に若い。 最終的に、指定席なしの406席に4割ほどの入りはまあまあか。初日プレゼントがあってポストカードをもらったけど、これって……。それより、おもしろいホラー映画を撮れる監督は必ず後に良い作品を撮ってブレイクするので、映画好きはホラーをチェックすべきだと思うんだけどなあ。 |