日本語字幕:手書き書体、下、松浦美奈・監修:岡野啓子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル・dts・SDDS
(米R指定、日本PG-12)
キリスト(ジム・カヴィーゼル)は12使徒の一人、ユダ(ルカ・リオネッロ)の裏切りによってユダヤ教の大司祭カイアファ(マッティア・スブラージア)に捕らえられ、裁判にかけられる。王と名乗り、神の子と名乗ったことから有罪とされ、自分たちの刑罰に死刑がなかったために、身柄を統治者であるローマ軍に預け、死刑にしてくれと要請する。最初は無実で釈放しようとしたピラト総督(リーストゥ・ショポフ)も暴動が起きかねない勢いに重い鞭打ちの刑を科すが、それでも収まらない群衆に、しいに磔にすることを承諾する。 |
日本でPG-12指定? 実際小学生くらいの女の子が見に来ていたが、ボクは正直、見せたくないと思った。あまりにも残酷シーン、流血が多すぎる。子供には刺激が強すぎると思う。映画の出来が良い悪いの前に、子供はこんな血まみれの映画を見てはいけないと思う。ボクは小学生低学年の頃、たまたまヤクザ映画を見るハメになって、凄いショックを受けた覚えがある。しばらく頭から暴力シーンが消えなかった。アメリカでは成人映画なのだ。なぜこれが日本ではPG-12(親または成人の同伴が望ましい)なのだろうか。ボクはR-15(15歳未満入場禁止)か、あるいはR-18だと思うけど。特に犯罪の低年齢化が指摘されるようになっている昨今では。暴力を肯定しているわけではないけれど、あまりに暴力に満ちている。 キリスト最後の日を、新約聖書のマタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝の4つの福音書をもとにリアルに構成した物語。すべの罪をユダヤ人に押しつけようとしていると批判されて話題になったが、確かに本作ではローマ軍は積極的にキリストの処刑に関わっておらず、暴動を避ける(またその発生に対する責めから逃れる)ため、しようがなく処刑したという形になっている。ただし、直接関わったローマ兵はサディスティックで、処刑を楽しんでいるかのように描かれてはいるが。 といっても、どんなに過激に表現されようとも、キリスト教の知識がないとこれは観客の「パッション(激情)」にはつながっていかない。映画ではその前の部分、病人や恵まれない人々、虐げられた人々を助けるさまや、真理につながる教えを説く部分がほとんど描かれていないので、怖いとか気持ち悪いとは思っても、痛みを自分のものにしたり、悲しんだりすることができない。ボクは聖書物語とか、「ジーザス・クライスト・スーパースター」(Jesus Christ, Superstar・1973・米)や「最後の誘惑」(The Last Temptation of Christ・1988・米)「ベン・ハー」(Ben-Hur・1959・米)などいくつかの映画でしか知らないから、いまひとつピンとこなかった。 映画「偉大な生涯の物語」(The Greatest Story ever told・1965・米)の3時間45分は長すぎるとしても、普通その誕生から死と復活までを描くことが多い。しかし本作は90%が肉体的虐待と鞭打ちの刑と磔の刑なのだ。フックの付いたムチは肉に食い込み、皮膚を引きちぎる。殴られた顔ははれあがり、K-1でミルコに倒されたサップみたいになっている。……うーん。 悪魔がなかなか恐ろしい。声は太いが顔立ちは女性っぽい。眉を剃っているのでどこか中性的だ。狙いなのだろうか。実際にはロザリンダ・セレンターノというイタリア女性が演じている。黒いずきんが不気味だ。 公開3日目の初回、上映館が少ないので用心して65分前に着いたら新宿の劇場はデパート内にあってデパートが開いていないので、デパートの入り口に行列が。全員が映画というわけではないだろうが、かなり比率は高そうだった。 50分前くらいで20人くらいだろうか。45分前にデパートの入り口が開き、あちこちのドアからエレベーターめがけて客が走る。危ないなあ。いくらデパートの人が席は十分ありますから、などと言っても効き目ナシ。こりゃしようがないかも。 当日券との引き替えが必要で、入場に手間取る。下は小学生くらいの女の子から中高年までいたが、結構白髪が目立つ。1/3は高齢者だろう。男女比はほぼ半々。 初回から指定席があって、14席左右に4席左右(ぴあ席のカバーが掛かっていた)。スタジアム形式なので前の席の人の頭は気にならないが、いかんせんシートが硬い。1時間もしないうちに尻が痛くなる。それともともとアイ・マックス劇場なので、アイ・マックス用のスクリーンの中央上寄り、1/2〜2/3弱しか使っていない。下の方の席はアイ・マックスの時は良かったが、普通の映画ではかなり見上げることになる。辛いのではないだろうか。左右の端も結構、見にくいはずだ。もったいない。 入場10分で340席の4割は埋まってしまった。30分前には7割が埋まり、15分前には指定席も含め満席に。すごいなあ。そこまでの映画とは思えないが。 残念ながら、カーテンなしのスクリーンむき出し。セリフはすべてラテン語とアラム語だそうで、英語の字幕が下に出て、その下に日本語字幕が出るという形式。わざわざ最初に制作者の意図により英語字幕のあるセリフにしか日本語訳を付けていません、とかいう内容のテロップが出たが、当たり前のことなのではないだろうか。クレームを付けるヤツがいるのを恐れてか。 聖書に出てくる言い回しが多いと言うことで字幕監修がついたようだが、ボクはあまり感心できなかった。聖書の日本語訳はかなり昔のことなので、言葉遣いが古くて文語調だから非常にわかりにくいのだ。あまり軽くてもいけないが、旧仮名遣いのような言葉遣いはより深い理解を妨げている。訳者の人ではなく、映画会社の方針と言うことになるのだろう。DVDでは文語体版と普通語体版の2つの日本語字幕を付けても良いのではないかと思った。信者の人はどうということはないのだろうけれど、映画の字幕は短時間しか出ていないので、考えるような難解な表現は辛い。いまひとつピンとこなかった理由はそこにもあるのかもしれない。 |