日本語字幕:丸ゴシック体、下、太田直子/ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビー・dts
(米PG-13指定)
デューイ(ジャック・ブラック)はちゃんとした職に就かず、アマチュア・ロック・バンド「ノー・ヴェイカンシー(No Vacancy)」のリーダーとしてバンド・バトルの優勝を目指していたが、異常なまでの悪ノリにメンバーから逆に追い出されてしまう。アパートに戻れば、ルーム・シェアしている親友のネッド(マイク・ホワイト)と彼と同棲中のパティ(サラ・シルヴァーマン)から滞納した家賃2,200ドルを払わないと追い出すと言われる始末。そんな時、ネッドあてに小学校の代用教員の依頼の電話があり、デューイはネッドになりすまし教師をやることにする。 |
抜群のノリ。面白い。思わず足でリズムを刻んでしまう。すべてがお約束通りの展開だが、すっかり映画の魔力にのせられて自分までロック・ミュージシャンになったような気になる。 パターンとしてはありふれたもので、最近で言えば「2」も作られた「天使にラブ・ソングを...」(Sister Act・1992・米)と同じ。落ち目のミュージシャン(ロッカーとクラブ歌手)が音楽で盛り上げる(バンド・バトル出場とローマ法王の前での披露)プロットはピッタリ重なる。「天使……」もヒットしたが、本作もヒットするのではないだろうか。ていうか、ヒットして欲しい。 とにかく、招待試写とか、プレミア上映でもないのに、一般公開で上映中に拍手が起こり、上映終了と同時に拍手がわき上がる映画なんてそうはない。感情表現が控えめだと言われる日本の観客をこれだけ盛り上げ、ノセてしまうこの映画はスゴイ。「天使……」以来ひさしぶりだ。しかも「天使……」は大受けだったが、拍手までは起きなかったから。素晴らしい。内容は軽く、ご都合主義の展開だが、これは素晴らしい。 しかも思わずリズムを取ってしまうような曲がたっぷり。自分も音楽ができたら、こんなに楽しいんだろうなっていう思いが募る。 いい映画のことを書くといつも書くが、つまりは小さなエピソードの作り方とキャラクター作りがうまいのだ。それにここでは体が自然に動き出すゴキゲンな曲の数々が加わるわけで。 エキセントリックな主人公を演じたのは、ジャック・ブラック。姓と名を入れ換えると大変な大当たりとなりそうだが、結構いろんな大作の脇役で出ていた人。それが、日本では小劇場での公開ながら「ハイ・フィデリティ」(Hi Fidelity・2000・米)で注目され、「愛しのローズマリー」(Shallow Hal・2001・米)で主役を得た。アメリカでは「愛しの……」の方が評価が高いようだが、日本では本作がブレイクのきっかけになるかもしれない。 実生活でもロック・バンドの活動をやっているそうで、まさにはまり役だったのだろう。 監督は、リチャード・リンクレーターという人で、あの傑作ギャング青春映画「ニュートン・ボーイズ」(The Newton Boys・1998・米)を撮った人。どうりでうまいわけだ。 そうそう、エキセントリックなジャック・ブラックのおかげでかすみがちだが、ハイソな小学校の厳格な校長を演じたジョーン・キューザックがいい。最近では「隣人は静かに笑う」(Arlington Roard・1999・米)なんかが怖くて良かった。いつも脇できらりと輝く演技をする人という印象がある。弟のジョン・キューザックは主役級だが、姉も主役をはれる人ではないだろうか。足りないとすれば「華」か。ちなみに「ハイ……」でジャック・ブラックと共演している。 公開4日目の初回、銀座の劇場は50分前で5人。45分前くらいに20人ほどになった。男女比は4対6といった感じでやや女性が多く、老若比は半々くらい。ファミリーもチラホラいて、下は中学生くらいから。高校生も多い。どうもふだんはあまり映画を見ないというような層が多いようだ。 40分前くらいに当日券と前売り券で列を分けるよう案内があり、35分前には開場した。最終的には648席に7.5割ほどの入り。しかもプレミアム・シートに2カップルプラス1人の5人も座っていた。今後もクチコミで増えていくのではないだろうか。ロングランしそうな予感。どの世代にもお勧め。 |