2004年5月15日(土)「ビッグ・フィッシュ」

BIG FISH・2003・米・2時間5分

日本語字幕:丸ゴシック体、下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ/ドルビー・dts・SDDS

(米PG-13指定)

http://www.big-fish.jp/contents.html
(全国劇場案内もあり)

ウィル・ブルーム(ビリー・クラダップ)は自分の結婚式でも大げさなホラ話を来客に自慢げに語る父エドワード・ブルーム(アルバート・フィニー)とケンカし、以後3年間ほとんど口を利いていなかった。そんなある日、父が倒れたことを知らされ、妊娠中の妻ジョセフィーン(マリオン・コティヤール)と共に実家に帰る。

75点

1つ前へ一覧へ次へ
 ちょっと泣いた。隣のオヤジも泣いていた。女の子も泣いていた。ファンタジーとリアリティが同居して、虚々実々の物語は混然一体となり、観客にも、主人公である息子のウィルにもわからない。でもファンタジーのすばらしさに、映画の中で観客も主人公も気付くことになる。そしてほら吹きのように思っていた父の優しさに気付く。その涙。しかもその時、父は帰らぬ人となってしまう。

 おそらく、父本人さえもファンタジーとリアリティの区別は曖昧になっていたのだろう。そして妻だけがそれらをすべて受け入れていたらしい……。これはホントにティム・バートン監督作品なのだろうかと思うぐらい、いままで作ってきたファンタジー作品とは違っている。だから、この父こそがティム・バートン自身の投影なのかもしれない。

 ただ、ラストはボクの好みからいうと、リアリティではなくファンタジーで終わって欲しかった。甘すぎるかもしれないが、せめて映画の中くらいは奇跡や不思議なことがあってほしいなあと。

 もし、これを教訓的な映画としてとらえるならば(そうすることも可能)、現実の世の中に起こっていることは視点を変えれば(あるいは見方を変えれば)ファンタジーにもなるのだ、ということになるだろう。これがエンディングからいうと妥当な線なのかもしれない。ただし、大人になってもずっとそれをやっている人は、たいてい精神異常だと思われる。この父のように。子どもとか恋する善男善女にのみ許される特権なのだ。

 で、そのファンタジーのひとつひとつが、めちゃくちゃうまい。この辺はティム・バートン監督の真骨頂ともいうべきところ。少しブラックな部分も入れながら(このさじ加減は微妙)思わず引き込まれて「それで、それで」と乗り出してしまうようなおもしろさ。現実とのギャップの作り方がまたまたうまい。

 ……と書いたけれど、実は小難しいことはまったく必要なし。見ればストレートに伝わってくる。考えることがあるとすれば、そのエピソードから本当にあったことを逆にたどることができるくらいだろうか。これもそうしたければということであって、普通に見るのにその必要はない。ぱーっと見て、素直に感動できる。特に父親を亡くしている人にはグッと来るものがあるかもしれない。ボクはそうなので、ラストは結構辛つらかった。失って初めて気付くというヤツで……。

 で、ビッグ・フィッシュとは「ずっと人に釣られずその川で一番大きくなった魚」のこと。これはちょっと教訓的かも。

 ボクはさだまさしの「魔法使いの弟子」という曲を思い浮かべてしまった。若い魔法使いの弟子が町一番の娘に恋をして、まだ弟子だから夢を見せる術しか使えなくて、自分が主役の夢を毎夜せっせと娘に届けてハートをゲットしたんだよ、それがママだよと幼い息子に話して聞かせる歌。だからパパはいまでもホウキくらいは飛ばせるんだと。

 公開初日の初回、銀座の劇場は55分前に到着したら、ちょうど開いたばかり。早いなあ。25人くらいが列を作っていた。老若比は半々くらいで、男女比は6対4でやや男性が多い感じ。初回のみ全席自由で、それ以降は全席指定のプレミア・シート(17席×2列)あり。次第に20代くらいの人も増えてきて、下は小学生くらいから。

 劇場の入り口に試写で見た人の生コメントがたくさん貼ってあったが、それらはほとんど女性で、だいたい20〜30代とかなり偏っている。どういうことだろうか。試写会に行くのは若い女性がほとんどということか。

 30分前で654席の1.5割ほどの入り。意外と少ないかも。特に現代人の都会の大人にはいい映画なのに……と、ここから盛り返して、25分前で4割、7〜8分前には6.5〜7割ほどが埋まった。初回としては上々の入りか。

 子どもの心をなくしてしまった大人の、特に男性にお勧めしたい。ファンタジーが苦手という人でも父と息子の話として、夫婦の愛情物語としても(すべてを優しく包み込む妻役のジェシカ・ラングが素晴らしい)感動できると思う。

 予告編に「スパイダーマン2」の新しい予告編登場。素晴らしい。


1つ前へ一覧へ次へ