日本語字幕:手書き書体、下、石田泰子/ビスタ・サイズ(Arriflex 535)/ドルビー・dts・SDDS
(米R指定)
ミシシッピー州ソーシエの町に住む未亡人、マンソン夫人(イルマ・P・ホール)の家に、間借り人として自称教授と名乗る男(トム・ハンクス)がやってくる。クラシック音楽の仲間と楽器の練習をしたいからと地下室を借りるが、実際にはすぐ近くの川に浮かぶカジノ船から売り上げを強奪するためのトンネルを掘るのが目的だった。ところが完全犯罪になるはずの計画は、思わぬところからほつれていく。 |
うーん、何も予備知識なしで行ったのがいけないのか、コメディなのにほとんど笑えなかった。アメリカでは18禁映画で、かなり残酷な描写や、汚いネタも多く、あまり気分もよくなかった。そこへ至る過程は意外な展開をするものの、最後はたぶんこうなるんだろうなというところへ落ち着き、まるで寓話のような感じ。かなりブラックだけれど。 雰囲気としては、コーエン兄弟の3作前の「オー・ブラザー!」(O Brother, Where art Thou?・2000・英仏米)にそっくり。アメリカ南部の雰囲気と、独特の曲。そしていかにもコーエン兄弟らしい犯罪と残酷さとブラックなコメディ……そして汚さ。「オー……」はまだ笑えたけど、これはなあ……。IBS(過敏性腸症候群)だって? 病気だあ? いつもおなかがゴロゴロして、おならがやたら出たり、下痢をしたり……本当にその病気の人には申し訳ないが、あまりお金を払ってまで見たいものではない。別に単なる食あたりでも良かったのでは。 あえていうと、キャストは(キャラクターではなく)魅力的かもしれない。トム・ハンクスを筆頭として、アホな黒人パンク野郎を演じるマーロン・ウェイアンズ(「最終絶叫計画」)、IBSのドジな特殊効果マン、J・K・シモンズ(「オーシャン・オブ・ファイヤー」のバッファロー・ビル)、拳銃に素手で立ち向かうヘビー・スモーカー、ツィ・マー(「ダンテズ・ピーク」の調査員)、力だけが取り柄の白痴、ライアン・ハースト(「プライベート・ライアン」の心優しき兵士)、特殊効果マンの恋人、マウンテン・ガールに「ヒューマン・キャッチャー」のバス運転手、ダイアン・デラーノ。 実は本作はリメイクなのだそうで、オリジナルは「マダムと泥棒」(The Ladykillers・1955・英)というコメディ。IMDbで7.9という高得点を得ている傑作だ。それに泥を塗ってしまったかも。 舞台は古風な南部の田舎なのに、出てくる銃は結構、現代的。ツィ・マーの店を襲う強盗はなんとデザートイーグル。教授が持っているリボルバーが.357マグナム(M19?)の2.5インチとは。 でも一番印象に残るのは、物言わぬ目撃者、猫。本物、パペット、CGなどを混ぜて使っているらしいが、これが後々にあとあと利いてくる。つまり大人のおとぎ話というわけか。 ラスト、冒頭に出てきた同じゴミの山が写る。しかし、あそこへ行くのは死体ではなくて、この映画そのものということになりかねないかも。いやあ、危ない、危ない。 公開初日の初回、新宿の劇場はちょっと時間を間違えて35分前に着いたら、ちょうど開場するところ。待っていたのは、たったの3人。若い男性に、若い女性が2人。まっ、この出来ではしようがないか。 その後、中年夫婦や小学生(こんなに暴力であふれていて、気分悪くなりそうな映画を見せて良いのか)も現れて、15分前にどうにか30人くらい。男女比は6対4で、老若比は4対6。 最終的には、初回のみ指定席なし(初回が終わった後、カバーを掛けていた)の400席に4〜4.5割の入り。ただし、スタジアム式に傾斜の付いた床面ながら、スクリーンが低いこともあって、ちょっと座高の高い人が前に座ると頭がじゃまになって字幕がよく見えない。一体、字幕が下で良いなんて、誰が決めたんだろうか。 |