2004年5月23日(日)「トロイ」

TROY・2004・米・2時間45分(アメリカ版は2時間43分)

日本語字幕:手書き書体、下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、Arriflex)/ドルビデジタル・dts ES・SDDS

(米R指定)

http://www2.troy.jp/
(全国の劇場案内、劇場リンクもあり。映画情報はFLASHサイトに。音に注意。どこに何があるのかよくわからない)

3200年前のギリシャ。諸国を征服し統一しようとする野望に燃えるアガメムノン王(ブライアン・コックス)は、最高の戦士アルキメデス(ブラッド・ピット)を従え、連戦連勝を重ねていた。しかしアルキメデスはアガメムノンの強引で狡猾なやり方に納得できず、距離を置こうと考えていた。そんなとき、アガメムノンの弟でスパルタを統治するメネラウス王(デレンダン・グレッソン)の妻、ヘレン(ダイアン・クルーガー)がトロイの王子ヘクトル(エリッマク・バナ)の弟パリス(オーランド・ブルーム)によって連れ去られる事件が起きる。トロイを手中に収めたかったアガメムノンは、すすんで協力を申し出て、ヘレン奪還を口実に数万の軍団をトロイに上陸させる。

Troy 3 Troy 2 Troy 1
東京・歌舞伎町に出現した“トロイ”の木馬

75点

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 なんと壮大な叙事詩。ホメロスの「イリアス」をベースにした物語は、スケールの大きな史劇として、そしてアクション映画として、まとめられている。ラブ・ストーリーに関しては事件の要素であり、それほどスポット・ライトを当てられていない気がした。

 ブラピのアキレスと、エリック・バナ演じるヘクトルとの一騎打ちが話題になっているが、印象としてはアキレスが物語の中心ではなく、全体としてのギリシャの歴史のうねり、それに翻弄される人間を描いた大河ドラマのように感じた。

 これはスゴイことだと思う。普通は誰か1人主人公を決めて、その人物に焦点を当てて描くことで、感情を揺り動かし、物語に引き込んで全体を語るという手法を取ることが多い。しかし本作では、群像とまでは行かないが、登場人物はそれぞれ平等にあるいは第三者の視点(神?)からややクールに捕らえられている感じで、敵同士もそれぞれに理由があり、戦うことになる。一方的に悪いとか、酷いヤツというのはアガメムノン以外にはいない。アガメムノンにしても、なぜそういう行動に出たかは、納得できるかどうかは別にしても、理解はできる。これが素晴らしい。

 だから、戦いもどちらかに荷担して見るのではなく、どちらにも負けないで欲しいという感じで見てしまう。普通ならありえないことだ。スポーツ観戦と一緒で、どちらかに入れ込んでみなければ、その戦い自体に興味が持てなくなるのに。なぜなんだろう。

 個人的には「トロイの木馬」のエピソードしか知らないので、どんな木馬なのか興味があったが、扱いはさらりとしたもの。ある朝、5万近くいた軍勢が海岸から忽然と姿を消している。トロイ軍が駆けつけるとそこに木馬がおいてある。ボクの聞いた話は、戦いの最中、ある朝敵が姿を消していて城壁の入り口前に木馬がおいてあったというもの。説得力としては海岸では遠すぎて燃やしてしまうような気がするのでNGだが……。

 映画より驚いたのは、その撮影に使われた実物の木馬が、歌舞伎町の広場に設置されていたこと。でかい。とにかく想像していたよりでかい。ペーターゼン監督は人間にしか興味がなかったのか映画の中ではあっさりと触れられているだけなので、こんなにスゴイものだとは思わなかった。これは一見の価値あり。たくさんの人が携帯のカメラでパチパチと。いまどきは携帯のカメラなんだなあ。

 もうひとつ有名なエピソードとしては、いま我々の体に残っている「アキレス腱」の名前の由来となった、無敵のアキレスが「かかとの腱」を斬られてやられるシーケンス。ボクはてっきりヘクトルにやられると勘違いしていて、いつ斬られるのかとハラハラしてしまった。それで、それでヘクトルを倒した後は、じゃあ対決ではなく象徴的に無名戦士に斬られるのかと想像していたら……。こんなにもあっけなく、しかも強調もされずに織り込まれているとは……。つまりは神話的にではなく、人間として、史実として描きたかったということなのだろう。

 特に「ロード・オブ・ザ・リング」からありふれた手法になりつつある大軍勢によるモブ・シーンがここでも使われており、これは巨大スクリーンで見るべきだが、そろそろ飽きてきた。矢が飛び交うのも「ロード……」「HERO」「ラスト・サムライ」……枚挙にいとまなく、なにか工夫が必要な気がする。3200年も前のことなので、1隻あたりの収容人員が少ないため5万の軍勢は1,000隻ほどになるのはわかる。しかし、14万人以上が上陸した第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦を描いた「史上最大の作戦」の船団をしのぐ、海を埋め尽くすほどの密集した形での大船団はどうなんだろう。これで接岸して上陸できるとはとても思えないのだが、ボクの無知か。

 ただ、冒頭の大男との戦いで、剣が確かに鎖骨あたりにズブリと刺さるのは、ゾッとした。日本では入場規制がないようだが、暴力シーンだらけなのでR-15くらいが適正なような気がする。犯罪の低年齢化は、イラク問題や北朝鮮問題で吹っ飛んでしまったのだろうか。なんでも規制すればそれで良いということではないが、性表現に厳しく暴力表現に甘い規制はボクには理解しにくい。

 公開2日目の初回……のつもりが急遽早朝の回が追加されたらしく、遅れて35分前に着いたらロビーに50人くらいの列ができていた。男女比は4対6くらいで女性の方が多く、中高年は1/3くらいと若い人が多い。やはりブラピ人気ということか。下は中学生くらいからいた。

 15分前に入れ替えとなり、場内へ。2回目の上映だが、初回と同じ扱いで4席×2列×左右のスーパー・ペア・シート以外は全席自由。良かった。

 最終的に1,072席の7割ほどと、スーパー・ペア・シートも3席が埋まった。

 ところで、舞台が古代ギリシャだから、映画の中で話されている言葉は古代ギリシャ語でなければならないはずだが、違和感がない。これは昔から西洋の古代神話的なものがハリウッドの映画を通してたくさん日本に入ってきたからだろうか。ハリソン・フォードが主演した「K-19」(K-19 The Widowmaker・2002・米)のような現代の話になるとロシア語でないのが気になるのに。「K-19」でロシア語じゃないと指摘した映画評論家の方々はどう思っているのだろうか。意見を伺いたいところではある。


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