2004年6月12日(土)「海猿」

2004・フジデレビジョン/ROBOT/ポニーキャニオン・1時間59分

ビスタ・サイズ/ドルビー



http://www.umizaru.jp/
(公式サイト)
http://www.kaiho.mlit.go.jp/
(海上保安庁のサイト)

全海上保安官のわずか1%だけがなることができるという「潜水士」の資格を目指して、全国から優秀な海上保安官14人が、第7管区の潜水技術課程研修を受けるため広島・呉、源主任教官(藤竜也)の下にやって来る。同じ頃、女性雑誌の編集者、環菜(加藤あい)も母親が骨折したため原稿を抱えて東京から看病のため帰郷していた。そして海上保安学校では50日間におよぶ過酷な訓練が始まる。そんなある日、訓練生の仙崎(伊藤英明)と環菜はひょんなことからホテルで一晩を過ごすことになる。

73点

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 ライトな青春グラフィティ。テレビ感覚で楽しめて、お約束どおりラストではちゃんと感動させてくれる。ちょっぴり涙が……。期待を裏切らないさわやかなドラマ。この季節にはピッタリ。楽しめた。

 原作は、小学館の「週刊ヤングサンデー」に1998年から2002年まで連載された佐藤秀峰と小森陽一のコンビによる大人気漫画。現在コミックス全12巻が発売中で、累計120万部も売れているという。ボクは未読だが、どうやら映画とは逆で、かなりヘヴィーな人間ドラマであるらしい。読んでみたい。

 要素としては、試練を乗り越えて目標を達成するというスポ根もの、そしてボーイ・ミーツ・ガール、仲間としての連帯感と友情……があって、たぶんこれは青春ものの王道。すべてバランス良く取り入れられている。そして舞台となるのが、一般にはほとんど知られていない「海保」こと海上保安庁。最近やっと不審船の問題でその存在が注目されたが、陸地で暮らしている人には縁がない存在といっても良いだろう。海難事故等が起きても、そういう人たちが活躍しているとは、誰も考えもしない。そんな組織が舞台で、しかも実際に海保が撮影に協力しているという。ここが一番の魅力。……ということは、これはひょっとして海保版「トップガン」(1986)か。

 海保は英語では“Japan Coast Guard”というんだそうで、アメリカの沿岸警備隊“U.S. Coast Guard”と同じ。なるほど、そういう組織か。英語の方がわかりやすい。

 物語の構造としては、ライバルがいて、落ちこぼれがいて、いじめがあって、仲間も応援して、どうにかみんなについていくという一般的なパターン。それはそれでわかりやすいけれど、ちょっと待って。この学校に来て潜水士を目指すということは、全海上保安官の1%になるということで、少なくとも全国から選り抜かれたメンバーのはず。しかもラスト、全員が卒業するわけだから、全員ベスト・オブ・ベストのはず。つまりアメリカのパイロットの中のパイロットを育成するトッブ・ガンみたいなものだろう。こういうタイプの落ちこぼれが、いるかどうかとても疑問だ。わずか1%という感じが希薄。

 それより映画「トップガン」のように訓練中に何か重大な事故が起こって、ビビッて続けられなくなるというのなら納得できるのに。

 ラスト、全てのエンド・クレジットが終了した後に、突然、黒い画面に文字が出て、続きが始まる。本編が終わったからといって、あわてて席を立たないように。隣に座っていた女の子2人は、だから予告イントロを見ないで帰ってしまった。ホントのラスト、「SEE YOU NEXT STAGE」の文字。後ろの若い男の子「何だよ、続編があんのかよ」。同感。

 ようするに今回の話は、海上保安学校を卒業して潜水士になるまで。次回が実践、現場だと。

 監督は、テレビムービー「恋人はスナイパー」(2001)の羽住英一郎。「踊る大捜査線The Movie」(1998)、「サトラレ」(2000)、「スペーストラベラーズ」(2000)などでは助監督や監督補を務めていた人。ついに本作で劇場映画監督デビューということらしい。どうやら続編がありそうなので、今後活躍する監督になりそうだ。

 絵作りとしては、日本らしいコントラストの低いパステル調。夏のギラリとした感じはなくて、何だか湿度の低いさわやかな風が吹いている感じ。ちょっとビデオっぽい感じもする。どうして、なんだろう。日本映画でメリハリのある絵を見たのは、記憶をたどると「助太刀屋助六」(2001)だったなあ。

 公開初日の初回、用心してちょっと早め、65分前に新宿の劇場へ着いたら0人。あれれ、あんなに広告してるのに。ヒット漫画が原作だし、伊藤英明が出てるし、日本映画だし、若い子たちがドッと来るはずだが……そうか、同じ月の中で「セカチュー」のようなヒット作があると、両方は見られないってことか。

 30分前になって、ようやく10人くらい。若い女の子が2人、若いカップル1組、20代後半くらいの男性1人、あと中高年男性。ここで開場して中へ。指定席なし。

 次第に高校生くらいが増えてきて、大学生のカップルのチラホラと。最終的には586席の4割ほどが埋まった。男女比はほぼ半々で、高校生くらいが7割、中高年が2割、そのほか1割といった感じ。


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