日本語字幕:丸ゴシック体、下、根本理恵・戸田奈津子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル・dts・SDDS
1950年、韓国ソウル。弟を大学に進学させるため靴磨きをしているイ・ジンテ(チャン・ドンゴン)は、その弟で高校生のイ・ジンソク(ウォンビン)、ジンテの婚約者ヨンシン(イ・ウンジュ)、自己で声を失ってしまった母、そして幼い兄弟たちと貧しいながらも仲むつまじく暮らしていた。しかし、6月25日、突如として北朝鮮が38度線を越えて南に侵入、朝鮮戦争が勃発したことで、すべての家庭から18歳以上30歳以下の男が1人徴兵されることになった。弟ジンソクを軍に取られそうになったジンテは、徴兵列車に乗り込んで乱闘騒ぎまで起こして抵抗するが、結局2人とも戦場へ送られることになってしまう。 |
これは泣ける。実話に基づいた話ではないけれど、実際に50年前に起こった事実に基づいた話で、朝鮮戦争を韓国人の視点から描いたという点でハリウッド映画よりも悲惨さが伝わってくる。韓国の人たちにとって、朝鮮戦争とはどんなものだったのか。それがじっくりと描かれている。 とは言え、これはたぶんカン・ジェギュ監督の「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)だ。物語の構成がそっくりだし、戦闘シーンでは早いシャッター・スピードで、手持ちカメラを多用。あたかも戦場に立ち会っているかのような演出がなされている。そして、つまりかなり台予算を掛けられる監督でないとこういう映画は作れないと思う。アメリカではスティーブン・スピルバーグで、韓国では「シュリ」(Shuri・1999・韓)を韓国でも日本でも大ヒットさせたカン・ジェギュだと。 冒頭、現代から始まって、生き残っている老人が誰だかはっきりしない。そして、かつての戦場を発掘し遺骨と遺品が出てきたので、孫娘と確認に行くと。……これは家族で墓参りに行く「ブライベート……」と一緒ではないか。そして、赤の他人1人を戦場から家族の元へ返すのと、弟を返すのとちょっと違うが、話がウエットになっただけで、同じ話だ。 それはともかく、戦場でこういうことがあったという、1つ1つのエピソードがたまらない。どれもが悲惨なものばかりで、次第に気分が悪くなってくる。いちいち書くことはしないが、それこそがこの映画の全てなのだ。小さなエピソードのより集まったもの。 韓国軍の装備は、ほとんど第二次世界大戦時の米兵と同じ。というか当時の米軍も第二次世界大戦時のままだったのだが。小銃はM1ガーランド、一部がM1カービン、拳銃はガバメント、サブマシンガンがM3グリスガン、分隊支援火器がBAR、軽機関銃がブローニングM1917、M1919、重機関銃がブローニングM2。戦車に至ってはM4A3E8シャーマン、装甲車M8グレイハウンド、大砲は105mm榴弾砲……といった具合。 一方、北朝鮮軍は、小銃がモシンナガン、サブマシンガンはPPSh-41、拳銃はなぜか日本の南部十四年式、軽機関銃がデグチャレフ、重機関銃にマキシムのような機関銃……などなど、どうやら本物を取りそろえているようだ。これら銃器だけを見てもかなりの予算が掛けられていることが分かる。 効果音作りも画面の絵作りも重厚な感じで、とてもいい。色は「ブライベート……」のように洗った感じがあるものの、色のノリが良くややコントラスト高め。 公開初日の初回、少し用心して60分前に着いたら銀座の劇場はすでに開場済み。素晴らしい。中にはいると50人くらいの人。男女比は2対8くらいで圧倒的に女性が多い。みんな「冬ソナ」を見てにわか韓国映画ファンになった人たちか。韓国イケメン男優のとこりらしい。20〜30代が女性の中人。男性も全体に若い人が多い。オヤジは少々。 初回のみ全席自由で、2回目からは全席指定。17席×2列のプレミアム・シートも初回は自由。さすがに空いたばかりらしく、冷房がほとんど効いていない。 30分前になって、654席の3.5割ほどが埋まった。ビデオカメラ(TV局らしい)の取材が入っていて、なんだか落ち着かない。こんなのに撮られてボケーっと映画を待っているところなど放映されたら恥ずかしくてしようがないではないか。 10分前で6.5割ほど。最終的には7割ほどが埋まった。満席にならなかったとは。でも内容が重いからなあ。 上映直前に主演のチャン・ドンゴンとキムタク似のウォンビンの日本向けビデオ・メッセージが流れ、異常な盛り上がりを見せた。あちにちで、女性陣がカメラ付き携帯でバシバシ撮っていた。初日の舞台挨拶を規定していたのかも知れない。劇場もこの日は見逃してやっていた感じ。 |