ビスタ・サイズ(1.85)/ドルビーデジタル・dts
1866年、イギリスで蒸気機関の研究を重ねるエディ(声:津嘉山正種)とその父のロイド(声:中村嘉葎雄)は無理な実験で事故を起こしてしまう。エディとロイドはアメリカへ渡り、2年後、ロイドから孫のレイ(声:鈴木杏)に“スチームボール”が贈られてきて、絶対にオハラ財団の連中には渡すなと言う。ちょうど荷物を受け取った日、オハラ財団の男達が現れ、レイは夢中で逃げ出すことになる。 |
素晴らしいクォリティの絵。立体感。従来のアニメでは考えられない、まるでヒッチコックのような意表をつくカメラワーク。まさに大人向けのアニメ……でも、ノレなかった。ずっと客観的で、最後までクールに見てしまった。しかも途中眠くなって気を失ってしまったし……。なんでだろう。クォリティは決して低くないのに。 大友作品は好きで、待ちかねて見に行ったのに。なぜなんだろう。自分でもわからないので、よ〜く考えてみると……どうも話が大冒険のようでいて、実は親子孫と3代の話、1家族のそれもわずかの間のいざこざといったまとめ方が可能な、話の構造に原因があるのかも……。 しかも、イギリス(工業都市のマンチェスター)の話で、イギリス人が主人公で、日本人が作っていて、日本語を話すという何か違和感もあるのかもしれない。また、とんでもないスケールのメカが登場し、都市がつぶれてしまうかというところまで話が行くのに、その危機感が伝わってこなかった。「AKIRA」(1988・日)は良くある核による破壊後の世界を描きながらも、先の展開が読めず、またその意外さ、スケールの大きさに目が離せなくなったのに。本作ではあまりに荒唐無稽というか、現実味がなく、それを信じさせてくれる前振りもフォローもボクには感じられず、物語が進むに従ってどんどん冷めていったのかもしれない。なんか「ロケッティア」(The Rocketeer・1991・米)にも似てるような。レトロ・サイエス・フィクションというか。 ロンドンの万国博覧会とか出てくるけれど、どうも実際の開催とは年代が違っていて、おそらくファンタジーを強調するためあえて違う年代を言っているのだろう。世界最初の万博は1851年にロンドンで始まり(水晶宮での開催)、1853年ニューヨーク、1855年パリ、1862年ロンドン、1867年パリ……と続くわけで、1862年以降の現在までロンドンでは開催されていない。 しかし、蒸気機関車と鉄道の発展に貢献したジョージ・スティーブンソン、ロバート・スティーブンソン親子は、実在の人物だ。この虚実入り交じったあたりは、さすがということになるのだろう。 もちろん銃器の設定はリアルで、スチーム城に装備されたガトリング・ガンは南北戦争期にアメリカで開発され、イギリスにも輸出されていたマシンガン。そして異様な形状の自動拳銃は、1893年にドイツで開発されたボーチャード・ピストル。ちょっと時代的にきついところはあるが、ちゃんとトグルが開いてカートリッジをはじき出しているので、良しとしたい。リボルバーはチラッとしかでないが、イギリスだからたぶんウェブリー・リボルバー。 艦砲射撃による爆発や煙、炎、マズル・フラッシュなどは、もはや従来のアニメの表現を超えている。実写に近いリアルさで、たぶん3D-CGなのだろう。水、特に水面の波紋などもリアルそのもの。ハイライトと透明感はおそらく手描きでアニメートさせるのは無理だろう。おそらく、担当物光が当たっていて、人物からいくつも影が落ちているのも、手描きでアニメートさせるのは至難の業のはず。 と、言いつつも、結局はテクノロジーがどうこうよりも、違和感なく見られてその物語に没入できればいいとは思う。必要ならハイテクを使えばいいし、ローテクでも充分表現できるならそれでかまわない。 公開2日目の初回、65分前に銀座の劇場に着いたら、16人ほどの行列。なんと女性は0。年齢層は結構高い。たぶん35歳以下は4〜5人。もっと言えばほとんどは中年男性という感じ。 45分前に劇場の人が当日券の列と前売り券の列に分けた。この時点で当日10人、前売り30人ほど。女性は2〜3人だった。 非常に暑い日で、劇場前はビルの照り返しでかなり暑い。しかし開場したのは25分前になってから。ちょっと、なあ。冷たいドリンクを売るためか? 下は小学生の女の子から、上は老人までいたが、中心は中年。高校くらいから大学生くらいまでの若者もやや増えた。最終的には612席の6割ほどが埋まった。別料金のプレミアム・シートも10人ほどが座ったとはビックリ。ただ、途中から入ってきた人が暗いせいか確信犯なのか、勝手にプレミアム・シートに座っていたけれど、正規の料金を払っている人たちは腹が立ったことと思う。なぜ劇場の人はチェックに来ないのだろうか。鑑賞のじゃまになるとかだったら。着座センサーでも付けたらどうだろう。それにしても、今年度いっぱいで閉館とは惜しい。 |