2004年8月21日(土)「華氏911」

FAHRENHEIT 9/11・2004・米・1時間52分(IMDbでは2時間2分)

日本語字幕:丸ゴシック体、タテ右、石田泰子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(米R指定)

http://www.kashi911.com/
(全国劇場案内もあり)

2000年アメリカ大統領選挙で、ゴア候補優勢と伝えられる中、疑惑プンプンの大逆転劇でブッシュ候補が大統領に就任する。そしてほとんどの時間を休暇に費やした後、9/11の事件で直接関係がないと思われるイラクへ戦争攻撃を仕掛けていく。果たしてこの大統領が再選されていいのかと映画は問いかける。戦争によって生じた悲劇を、イラクの家族側から、アメリカの家族側からそれぞれコラージュする。

73点

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 マイケル・ムーア自身が言っているように、これは普通のドキュメンタリーではないと思う。ブッシュを大統領にしないためのキャンペーンなのだろう。盛り込まれている内容は、いずれも新しいものはなく、以前から各方面で指摘されていたことばかり。特に新しいことはない。

 ただ、攻撃を仕掛けられたイラクの人々の悲痛な叫びや、息子をイラクで失ったアメリカの家族の叫びは、見るものの心を打つ。なんで、こんな無意味な戦争をしなければならないのか。分かり切ったことでも、あらためて当事者の生の声を聞くと、涙がにじんでくる。

 だから、決して気持ちよく見終わることができる映画ではない。悔しくて、悲しい。笑えるシーンもあるが、落ち込む。斬首刑、虐殺、たくさんの死体、涙、絶叫、欺瞞、裏切り……暗い気持ちで劇場を後にした。

 一番興味深かったのは、日本のあるテレビ局がニュース番組でこの映画のことを取り上げていたこと。番組では映画を紹介するという位置づけではありながら、その中の1シーン「NYの世界貿易センタービルが攻撃を受けている」との知らせをブッシュ大統領が訪問中の小学校で聞き、7分間何もしなかったという場面を取り上げ、マイケル・ムーアの演出手法に疑問を呈していた。

 その番組はわざわざアメリカまで出かけ(本当だろうか?)、オリジナル・テープを保つ人物を捜し出し、映画での使われ方とオリジナルとを比較して見せたのだ。そして、実際の現場の音を消し、いかにもブッシュ大統領が無能だったように見せているのだと。そういうシーンもあるのだから、この映画を見るときには一方的な意見なんだと意識してみた方がいいという。

 たまたまその番組を見てからこの映画を見に行ったので、そのシーンは気になった。ところが、実際にはそのシーンはちゃんと背景音が入っていた。ただちょっと絞ってあるだけだった。

 基本的にドキュメンタリーにこの種の疑惑を突きつけられると、作品全体に疑わしさが及び、作品そのものの成立が疑わしくなってくる。ということは、公開前の放送であったことも考えると、映画紹介の名を借りた中傷ということも考えられるわけで、その内容から、どこかからの情報提供かつ圧力とも考えられなくもない。なにしろ、実際の上映と違う内容を指摘しているわけで、スタッフは作品を見ていないと思われるからだ。音は消されていないのだ。うーん、その筋からの圧力か……。作為を感じるなあ。

 拡大公開初日の初回、新宿の劇場は、チェーン劇場の一番広いところと交換になっていて、ああ良かったと。で、60分前についたら、すでに20人ほどの列ができていた。老若比は4対6でやや若い人が多い感じ。男女比は6対4で男性の方が多いか。

 10分ほどの間に50人くらいに行列はのび、暑い日だったので階段室は人いきれでムンムンしてきた。この時点では中高年が増えて老若比は半々に、そしてやや女性が増えた。

 劇場も気温を考慮してくれたらしく、40分前には開場。むむ、またコーヒーが飲みたくなってしまう。自動販売機じゃなく200円でそこそこウマイし。

 初回のみ全席自由で、カバーの席はなし。30分前で400席の半分が埋まった。5分前で8割、最終的には9割が埋まった。ファミリーもいて、下は小学生くらいからいたが、これだけの作り物ではない死体と暴力がある映画を見せていいものだろうか。なにしろアメリカではR指定だ。18未満は見ることができない。理解できんなあ。


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