日本語字幕:手書き書体、タテ右、訳者表記なし/ビスタ・サイズ(1.66、IMDbでは1.85)/ドルビーデジタル
(西13指定、米R指定、日本PG-12指定)
1939年、内戦末期のスペイン。最寄りの町まで歩くと丸一日かかるという荒野の真ん中に、実はフランコ軍打倒のための共和国軍を密かに支援している孤児院があった。そこへカルロス少年(フェルナンド・ティエルブ)が連れてこられる。施設の真ん中には巨大な不発弾が刺さったままで、これが投下された夜、ひとりの少年が犠牲になったという。孤児院には霊を巡る噂がささやかれていた。 |
なぜ2001年の作品が今頃? まさかDVD発売の前に劇場公開しておこうということか。字幕の翻訳者の名前も出ないし。もしそうならあまり期待できないかも……という不安を見事に覆して、おもしろい。 こんないい作品がなぜ今まで公開されなかったのだろう。確かにハリウッドのような予算もかかっていないし、特に有名な俳優さんが出ているわけでも、派手さもないが、ずっしりとした手応えのある作品に仕上がっていると思う。細かな特殊効果なども使われていることから、これは劇場の大きなスクリーンで見ておいた方がいいと思う。 ホラーということだったが、「箪笥」(薔花、紅蓮・2003・韓)のように怖さより他の要素の方が立っている。本作でも悲しさ、悔しさが、怖さを超えている。霊は明らかに存在し、現れ、生きている人たちに影響を及ぼしてくるのだが、結局は恐ろしいのはあさましい人間の心であり、戦争(内戦)がもたらした悲惨さの方なのだ。 おそらくこの事件の後にバルセロナやマドリードが陥落し、フランコ将軍のファシスト政権が勝利することで、スペインはナチスのような独裁政権となる。そんな未来を象徴するかのように、大人たちは皆死んで、子どもたちだけが傷ついて、何の宛もなくトボトボと孤児院を出て行くことになる。うーん、辛い。 うまいのは、孤児院を舞台にして、子どもたちを主人公にしたこと。子どもの視点からこの辛い時代とおどろおどろしい話が描かれることで、本当にいやな感じは薄まっている。多くの映画で描かれているように(「禁じられた遊び」「戦場の天使たち」などなど)、子どもはどんな状況にあっても遊びを見つけ、毎日のあらゆることが冒険なのだ。そのわくわくした感じが悲惨な物語をさわやかにしている。 タイトルの「悪魔の背骨」というのは、劇中に登場する特殊な液体に漬けられた奇形胎児の背骨のこと。背骨だけが背中から奇妙に浮き出て、まるでとげが生えているようになっている。これをアルコール漬けのようにして、その液体を飲むと体にいいと言い伝えられているのだという。特にインポテンツに効くと。 監督は、奇想天外な物語が展開する傑作「クロノス」(Cronos・1992・メキシコ)や「1」に負けないしっかりした続編だった「ブレイド2」のギレルモ・デル・トロ。今年アメリカで大ヒットした「ヘル・ボーイ」も彼の作品らしい。作風としては「ロスト・チルドレン」(La Cite Des Enfants Perdus・1995・仏)〈これにもあの怪優ロン・バールマンが出ている〉のジャン=ピエール・ジェネ監督や、「ツイン・ピークス」(Twin Peaks・1990〜1991・米)のデビッド・リンチ監督に近いだろうか。今後も大期待だ。 劇中、ドイツのビストル、ワルサーP38が登場し火を噴くが、その銃声の大きくて暴力的なこと。恐ろしいほどだ。わざと甲高くしてあるようで、神経を逆なでする。対する孤児院の男先生は水平二連のショットガン。子どもたちがこれを持ち出すが、大きくて長く、とても手に負えるものではない。でもラスト、子どもたちがその銃を先生の手に返すあたり、なかなか泣かせる。 公開初日の初回、池袋と新宿の小さな劇場でしか上映しておらず、新宿のマイクロ・シアターはパスして、久しぶりの池袋へ。ところが、初回の前にモーニング・ショーで「サンダーバード」の日本語吹き替え版を1回だけ上映しているとかで、なかなか中へ入れない。 35分前についた時点で20人くらいの行列。男女は半々くらいだが、ほとんどが20代前後の若い人たち。中高年は2割くらいいただろうか。おばさんに至っては1人のみ。 30分前になって係が整列に来たが、作品名の案内をしない。入り口が見えない状態なのだから間違って並んでいる人もいるかもしれないのに……。この時点で30人くらいに。地下に続く階段室は空気の流れが悪く、人いきれでムンムンしてきた。暑い。だから池袋は嫌なんだ……。 10分前でようやく前回の客が完全に出てしまったらしく、入場へ。時間がなく、トイレがごった返していた。飲み物など飲む余裕もない。まあおいしいコーヒーが飲めるとも思えないが。 最終的に指定席なしの176席に9割の入り。なんだ人気があるんじゃないの。こんな小さな劇場でなくても良かったのに。しかも客席がフラットでスクリーンの下はよく見えない。それを知ってか、字幕がタテに入っていて助かったが、悲しい。空いているときは、スクリーン・サイズがまあまあなのでいいとしても、混んだら下の字幕はかなり辛い。音も良かったんだけど……。 またまた関係者だろうか、5〜6人の怪しげな集団が。しかも上映が始まると出て行くから気になる。光が入るっての!! |