2004年8月29日(日)「LOVERS」

十面埋伏 LOVERS・2004・中/香・2時間00分(IMDbでは1時間59分)

日本語字幕:手書き書体、下、水野衛子・太田直子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル


http://www.lovers-movie.jp/
(全国劇場案内もあり、音に注意)

西暦859年、中国、唐の時代。腐敗した政治に対して多くの反政府組織が乱立した。その中でも有力な組織と見られていたのは飛刀門グループで、捕吏のリウ(アンデイ・ラウ)と同僚のジン(金城武)は朝廷からそのボスを逮捕するよう命じられる。唯一の手がかりは一味の刺客が遊郭「牡丹坊」に潜入しているらしいということだけ。二人は一計を案じ、ジンが遊び人として「牡丹坊」に探りを入れることにする。

75点

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 アクション満載のラブ・ストーリー。なんだか香港映画のようだが、そこは中国人監督チャン・イーモウ、しっかりと違ったテイストに仕上げている。それは前作「HERO」(英雄・2003・中)と同質のもので、特によく現れているのは、京劇がベースと思われる日本の歌舞伎にも通じる「タメ」と「ミエ」という感じがした。

 だからアクション・シーンはリアルではない。「グリーン・デスティニー」(臥虎蔵龍・1999・中/米/台)のように竹林の上で戦うなど、あり得ない設定も多い。しかし、これは型を楽しむというか見せるものであって、端からリアルに撮ろうとなどしていない。もちろん3D-CGもたっぷり使われているが、それも現実感を出すためと言うよりは、ファンタジーの世界をリアルに描くための手段としてなのだ。

 そしていいのが、チャン・イーモウらしい見事な色彩設計と豪華なセット。ため息が出るほどすてきな衣装(ワダエミが担当)。「城を傾けさせ、国を傾けさせる」ほどの美女、チャン・ツィイーを堪能する映画なのだ、きっと。

 そんなわけで、このファンタジーの世界が受け入れられない人はおもしろくないと思う。ラブ・ストーリーの部分だけはOKだろうけど。

 とにかく1コ1コの絵が決まっている。竹林のシーンもいいが、「牡丹坊」での踊りを使ったやりとりは最高。美しくて、カッコ良くて、緊張感とスピード感もある。すばらしい。金城武はいい役だよなあ。あのアンディ・ラウが引き立て役になってしまっているもんなあ。

 わずかながら気になったのはラスト・シーンで、少々長すぎたんではなかろうか。しつこいくらいに戦いが続く。もう観客は泣きたがっているんだから、早く泣かせてくれればいいのに。

 それと、画面の左右端にピンボケというかブレたような感じがあったが、あれは何だったんだろう。安物の撮影レンズのせい? それとも上映時のピント調整ミス?

 ラスト、字幕で「アニタ・ムイに捧ぐ」と出るが、なんでも本作にはもともとアニタ・ムイが出演することになっていて、脚本にもちゃんとその役があったという。ところが彼女が癌に倒れたため叶わなかった。それで「アニタ・ムイに捧ぐ」というわけ。

 アニタ・ムイと言えば、香港の女優さんで、ジャッキー・チェンが全米へ進出するきっかけになった作品「レッド・ブロンクス」(Rumble in the Bronx・1995。香)で、元気なコンビニのオーナーを演じていた人。いい女優さんだったのに。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は時間を間違えて85分前に着いたら、オヤジが2人だけ。早すぎたと思ったが、並んでいるヤツがいたか。劇場のシャッターもまだ開いていない。

 で、60分前にオヤジが3人になり、20代の若い男性が1人。50分前に10人くらいになると、45分前には20人くらいへ。さらに40分前には30人くらいと順調に延び、30分前に開場したときには50人以上になっていた。

 初回のみ全席自由で、スーパー・ペア・シート以外はOK。男女比は半々で、中高年と20〜30代の比は6対4くらいで中高年が多かった。下は父親に連れてこられたらしい小学生の女の子。理解できたんだろうか。あとはだいたい高校生くらい。

 最終的に1,064席の6.5割ほどが埋まった。なかなかよろしいのでは。


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