日本語字幕:丸ゴシック体、下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(DV撮影、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts
(米PG指定)
1920年代のカンボジア、アンコールワット遺跡。そこで2頭の虎が結ばれ、2匹の兄弟虎が生まれた。ところが、遺跡の彫像を盗みに来ていたイギリス人の冒険家でハンターのエイダン・マクローリー(ガイ・ピアース)率いる一隊に見つかり、父虎は射殺、わんぱくな子虎を捕まえる。やがてクマルと名付けられた子虎はサーカスへ売られる。一方おとなしかった子虎は母虎と生き別れ、フランス高官の家に引き取られサンガと名付けられる。 |
傑作動物版西部劇の「子熊物語」(L'ours・1988・仏)を彷彿とさせる動物ファンタジー。もちろん感動的で、ホロリとさせてくれる。今度はギャングもの的物語になっている。 つまり、人間たちという虎から見れば最悪の環境によって2匹の兄弟は本来覚えるべき狩りではなく、屈折した人生(虎生?)を送る羽目になる。やがて2匹は殺し合いの場で再開することになるが、一緒に脱出し、町を荒らし回る。そして追いつめられ、最後には……。このパターンはギャング映画によるあるパターン。虎というどう猛な動物を主人公にする時点で、ある程度こうならざるを得ない部分はあったのではないだろうか。 一番最後にテロップで「このはフィクションです」と出る。そして「実際の虎は猛獣です。決して近寄らないでください」と。そう書かざるを得ないほど、映画の中では虎たちが魅力的で、兄弟は動くぬいぐるみといった感じでカワイイ。人間のような心があって行動するように見えてしまう。心はあるにしても、人間のような行動規範や価値観では決してないはずなのに。確かに、この映画を見た後は動物園などで虎に手を差し伸べてしまうかもしれない。 全体の印象としては、虎の視点から描かれているので、人間は「悪」でしかない。あまり愉快な設定ではないが、実際動物たちからしてみれば、人間なんて悪以外の何者でもないだろう。だから、登場人物は一人として(少なくとも大人は)いい人はいない。最後に象徴的に銃を捨てるガイ・ピアースでさえ、金持ちのクライアント(殺戮者)を連れてくるし、自らハンティングするし、盗掘までする。いくら生きるためとはいえ、どうなんだろうと。 監督は名匠ジャン=ジャック・アノー。なんと言ってもショーン・コネリーの「薔薇の名前」(Der Name der Rose・1986・仏伊独)がすごかった。これでガツーンときたら「子熊物語」で、驚くべき西部劇を見せられ、エロティックで重厚な「愛人/ラマン」(L'amant・1992・仏英)に驚き、IMAX-3Dの「愛と勇気の翼」(Wings of Courage・1995・米仏)でやはり重厚な絵の3Dに驚いた。「セブン・イヤーズ・イン・チベット」(Seven Years in Tibet・1997・米)は今ひとつの感もあったが、「スタリーングラード」(Enemy ay the Gate・2000・米独英アイルランド)で再び度肝を抜かれた。なんなんだ、この人は。とんでもない才能の持ち主なんではないかと。とにかく、この人が撮る作品は見ておくしかないのだ。いや見なければならない。そんな気持ち。 今回も銃はしっかりしていたようだ。あまりアップで写ることはないのだが、当時ハンターが使っていたという水平二連のライフル銃。平気で100万円とか、300万円とかいう値段が付く高級銃だ。ちゃんとそれを使っている。 一部ビデオっぽい画質のところがあり、あれれと思っていたら最後のクレジットでDVカム撮影とあった。やはりこういう動物相手の映画ではカメラを回しっぱなしにして撮影することが多いだろうから、フィルム代がもったいないということがあるのだろう。それに動物をリラックスさせるためか、リモコン・カメラも多用されたということだ。だから、まるで動物たちが本当に演技しているかのような絵が取れたのだろう(それでもコピー防止のドットは入っていたようだが……)。トレーナーもスゴイということだが。もう一度「子熊物語」を見たくなった。 公開2日目の2回め、銀座の劇場は初回は日本語吹き替えということで、字幕初回は2階席は指定席になってしまった。残念。ただ。全席指定なので60分前について、前売り券を当日指定券と引き替え、有楽町のビックカメラへ。時間をつぶして15分くらい前に戻るとすでに入れ替えがすんでいた。 最終的には802席の4割りほどの入り。中心は20代から中高年の女性で、男女比は2対8といったところ。男性はほとんどが中高年。下は小学生くらいのファミリーから。 上映前にJBLスピーカーのデモがあったが、本当に音がいい。特にこの低音の迫力は絶対に家庭では不可能。クリスチャン・ベール主演の「バットマン」の予告が始まった。まだ内容に関わるものではなかったが。2005年公開らしい。 |