2004年9月26日(日)「モンスター」

MONSTER・2003・米/独・1時間49分

日本語字幕:手書き風書体、下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(with Panavission)/ドルビーデジタル、dts

(独16指定、日R-15指定)

http://www.gaga.ne.jp/monster/


1986年、売春でその日の生活費を得ていたアイリーン・ウォーノス(シャーリーズ・セロン)は、たまたま入ったゲイの集まるバーでセルビーと名乗る若い女性(クリスティーナ・リッチ)と運命的な出会いをし、何人もの男たちにだまされた末ようやく愛を見つけたと思った。アイリーンはセルビーを連れ出し、彼女を養うために売春をするが、あるときサディストの変態にレイプされ身の危険を感じ自殺しようと持っていたリボルバーで射殺してしまう。しかし、警察は何も手がかりをつかめず、しかも彼女は男が持っていた現金を手に入れることができた。やがてアイリーンは連続殺人を始める。

72点

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 うーん、凹んだ。実話だとは思わなかった。この閉塞感。まるで出口のない迷路にはまって、むなしくもがいている感じ。特にサラリーマンではなく自営やフリーでやっている人には結構つらいものがあるのではないだろうか。決して安くないお金を払ってこんな気分になるのはどうなんだろう。何でもハッピー・エンドがいいとは思わないけれど。

 複雑な家庭環境で、13歳から売春をして1人で生活してきたという主人公。映画では描かれていないが、実際には父地が獄中で自殺、母は家出をし、祖父に虐待されながら育ったという。彼女が愛を求め続け、レズの少女にそれを見いだしのめり込んでいっても無理はない気がする。そして彼女を買う客に変態が多く、次第に男性がそして人間が信じられなくなっていく感じも良く出ている。

 しかも愛があると思った少女セルビーも、悪気はないのだが、我がままでどんどんアイリーンを追い詰めていってしまう。その無垢な小悪魔的感じを「ギャザリング」(The Gathering・2002・米/英)のクリスティーナ・リッチが好演している。

 もちろんすばらしい演技を見せるのは、体重を13kgも増やし、特殊メイクで本物のアイリーンに似せた別人になってしまっているシャーリーズ・セロン(自らプロデューサーも兼任)。男のような仕草、しゃべり方は、見ていてあまり心地いいものではない。テレビだったらチャンネルを変えているかも。

 そして、13kg太ってだぶついた裸を見せている。そこがまたスゴイ。女優というのは過酷な職業だと思う。いくら高額なギャラを取っているとしても、DVDなどで発売され、たぶん後生までずっと残るのだ。逆にそれが輝かしいこととだと思うこともできるけど……。

 小品だと思うが、有名俳優がたくさん出演している。アイリーンを気遣っているホームレス風のオヤジに「奴らを高く吊せ!」(Hang 'em High・1968・米)の名優ブルース・ダーン。客として現れ男たちにも何人か有名な俳優が。気弱な客は「アイデンティティ」(Identity・2003・米)で精神に異常を来した犯罪者を演じていたブルーイット・テイラー・ヴィンスが演じていたし、品のいいお客は「パール・ハーバー」(Pearl Harbor・2001・米)で将軍を演じていたスコット・ウィルソンだったり。

 脚本と監督はバティ・ジェンキンスという女性で、多くの映画やCMやMTVに関わってきたものの、ほとんど新人に近い人。しかし実際にアイリーンと交流があり、彼女が12年間の刑務所暮らしの後、政治的に利用されて死刑となる前日、それを受け入れた彼女から手紙を託されてシャーリーズ・セロンとともに映画化を決定したのだという。

 雨降りの公開2日目の初回、渋谷の劇場は65分前に着いたら、ボックス・オフィスが開いておらず、5〜6人ほどの行列。男女は半々でほとんど20代とおぼしき若い人ばかり。45分前にシャッターが開いて、案内があった。前売りは階段を上がり、当日は窓口に並ぶ。

 20分前に開場。この時点で30人くらい。2階席も全席自由だったので2階へ。最終的に2階席は8割りほどの入り。20代から30代が中心で、9割りは男性。みなシャーリーズ・セロンとクリスティーナ・リッチのファンか。

 数分のぬいぐるみアニメ「こまねこ」の上映が先にあった。


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