2004年10月13日(水)「マッスルモンク」

大隻liu/Running on Karuma・2003・香/中・1時間33分

日本語字幕:手書き書体、下、風間綾平/ビスタ・サイズ/ドルビー

(香IIB指定)

http://www.at-e.co.jp/musclemonk/index_content.html
(全国劇場案内もあり)

大陸から香港へ渡ってきたボディビル選手のビッグガイ(アンディ・ラウ)は、男性ストリッパーとして生計を立てていたが、潜入女性捜査官リー・フンイー(セシリア・チャン)によって逮捕されてしまう。しかし彼女の計らいで大陸への強制送還ですんだビッグガイの本当の姿は、修行によって死ぬ人の業(カルマ)が見えるようになった元武僧だった。リーの背後に大量虐殺をした日本兵を見たビッグガイは彼女を救おうと奮闘するのだが……。

77点

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 うーん、爽やかにつらい映画。ムキムキ特殊メイクのアンディ・ラウを見たときは完璧にコメディだと思ったが、かなりハードな刑事アクションで、そうかと思うと途中からラブ・ストーリーになり、ラストは宗教的な道徳話になるという驚くべき映画だった。カルマや前世、仏の教えなど欧米人には理解しにくいだろうが(IMDbでたったの6.2点)、アジア人にはとてもわかりやすく心にぐっとくる作品だと思う。あやうく涙が流れるかと思った。

 とにかくアンディ・ラウがすごい。この香港の二枚目スターは、最近どんどん映画に出演している。そればかりか、積極的に自分プロデュースで実に多彩な、そしていい映画を作っている。かなり危険なアクションも自分でやっている。これは香港スターの常であるかもしれないのだが。

 ちょっと古いが泣けたアクション名作「上海グランド」(新上海灘・1996・香)、日本の反町隆史と競演した「フルタイム・キラー」(全職殺手・2001・香)、ハリウッドでリメイクする「インファナル・アフェア」(無間道・2002・香)、金城武史と競演した「LOVERS」(十面埋伏・2004・香)と大作・話題作につぎつぎ出演している。

 本作では全身筋肉のスーツをつけ、何度も全裸を公開している。しかも最後のヒモパンまで取って……。スーツを着ているので恥ずかしくなかったのだろうと思っていたら、ラストには本物の全裸も(もちろん後ろから撮っているので念のため)公開している。がんばっているなあ。それでか、本作で2度目の金像奨主演男優賞を獲得したという。

 そして、ヒロイン役のセシリア・チャンのかわいいこと。実際はわからないがスクリーンではちょっと小悪魔的な魅力にあふれ、すばらしい。「喜劇王」(1999)でデビューし「星願 あなたにもういちど」でトップ・スターになったということだが、どれも見ていなかったりする。本作を見て、それらを見てみたい気になった。特にラブ・ストーリー部分が良い。「私に1分間だけ時間をちょうだい」と言ってだまってただ手をつないで深夜の街をあたりで歩くところなんぞ、キューンとくるかわいさ。参りました。これで、もうこの映画は成功したようなものでしょう。

 本作はアンディ・ラウと組むことの多かったジョニー・トゥ監督と、彼と共同監督をすることが多いアクション満載の傑作「大陸英雄伝」(和平飯店・1995・香)のワイ・カーファイ監督の共同監督作品。2人は1997年に「銀河映像」という映画製作会社を作ったのだそうで、共作が多いらしい。日本での最新作はちょっと古いが金城武の「ターンレフトターンライト」(左向走、右向走・2002・香/シンガポール)の公開が控えている。どうもこれはラブ・ストーリーで、珍しくアクションではないらしい。それで公開が遅れたのか……。

 本編で日本兵の殺戮行為が何度も繰り返された後、ラストに仏像が写る。仏の教えは許すことなんだと主人公は悟り、復讐を止める。怒りにまかせて復讐をすれば、業は幾度も繰り返してしまう。許されないことを許して初めて前に進むことができると気付く。そこが爽やか。

 中国の人々の心には第二次世界大戦の日本軍の暴虐ぶりが深く刻まれていることだろう。このテーマは重い。しかし本作はそれをエンターテインメントの中でうまく描いている。それがまたすばらしい。

 受付番号順の入場で混乱は無し。ただ、劇場前には入場を待つ人の塊ができていたが……。別な映画の上映が終了してからの入場で、15分前に開場。20〜30代が中心で中高年は1〜2割り程度。男女比はやや女性が多く、5.5対4.5という感じか。最終的には指定席無しの340席に7.5割〜8割ほどの入り。レイトショーでこれはすごいが、水曜日は毎週1,000円の割引らしい。しまった。わざわざ混む日に見てしまった。

 毎日先着5名にアンディ・ラウの生写真プレゼントあり。


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