日本語字幕:手書き書体、下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル
(米R指定、日R-15指定)
ケンブリッジ大学の男子寮に住む学生ガイ(スチュアート・タウンゼント)の部屋に、ある夜、教授と付きあっているという良家の娘ギルダ(シャーリーズ・セロン)が飛び込んできて、朝までかくまって欲しいという。無事ギルダを逃がしたガイは、そのお礼にとバーティーに招待され、成り行きでギルダと一夜を共にする。しかしギルダはまもなくパリへと旅立ち、ガイは彼女への想いを伝えることができなかった。数年後、大学を卒業したパリのギルダからガ手紙が届き、ガイはすぐにパリへと向かう。 |
これは恋愛物で、通常なら見ない類いなのだが、舞台が第二次世界大戦のパリというのでただの恋愛物ではないだろうと見に行った。あえてたとえると、「嵐の中で輝いて」(Shining Throu・1992・米)と「シャーロット・グレイ」(Charlotte Gray・2001・英独豪)を混ぜたような感じというか。あるいは、シャーリーズ・セロン自身が出た「スウィート・ノベンバー」(Sweet November・2001・米)とも似ている。つまり、あまりオリジナリティはない……。 でも、感動した。ハリウッド的なエンディングではないが、それが良かったのかもしれない。アメリカ・バージョンは長いから、ひょっとするとそっちは違うエンディングなのかも。イヤらしさもかなりのもの。ガイと抱きあって「あら、もう元気になったの」なんていう生っぽいセリフも随所に。いいい雰囲気を出しているなあと思ったら、ガイ役のスチュアート・タウンゼントとギルダ役のシャーリーズ・セロンは実生活でパートナーなのだそうだ。そりゃ相性ぴったりだろうと。たぶんアメリカで酷評されているのは、これが原因ではないだろうか。ベン・アフレックとジェニファー・ロペスとか、本当のカップルが共演すると、やっかみもあるのか、アメリカではたいていぼろくその評価をされることが多いから。 とにかくシャーリーズ・セロンが魅力的で良い。運命論者ゆえに他人からどう思われようと、自分のやりたいことをやる自由奔放な女なのだが、シャーリーズ・セロンが演じることでなんだか許せてしまう魅力的なキャラクターになっている。ギリギリだがたぶん観客(少なくとも男の観客)からは見捨てられない。衣装も登場するたびに違って素晴らしかったり、化粧もさまざまだったりと七変化(古い?)。ペネロペ・クルス演じる足の悪いナース、ミアとの微妙な三角関係もいい。ただしIMDbでの評価は低く、136人の投票で5.3点。 第二次世界大戦の描写もかなり正確なようで、Dデイ後のシャーマン戦車は増加装甲板が溶接されたM4(初期型?)。軍服などもしっかり考証されていたようだ。銃もレジスタンスによく使われたというイギリスのステンMkIIサブマシンガンや、ドイツ軍はMP40サブマシンガンなどを使っている。 それに先立つスペイン内乱では、短時間でよく確認できなかったが、ドイツのマキシムあたりの水冷機関銃、そしてイタリアのプレダ風の軽機関銃なども出ていたようだ。この内戦では世界各国が関わって兵器の実験場と化したと言われているので、世界各国の銃器があっていいのだ。この辺はDVDが手に入ったら確認してみたい。 物語はただの恋愛ものではなく、ヒネリの効いたミステリー仕立てになっているので、ストーリーを詳しく書くのはやめておこう。とにかく、第二次世界大戦の終了間近の1944年6月、連合軍がノルマンディに上陸し、8月にはパリが開放される。このへんもちゃんと描かれていて、「秋の日のヴィオロンの……」というラジオ放送があったり、パリ開放によってドイツ軍と親しくしていた女達がリンチに掛けられたりということもちゃんと描かれている。これがまたすごい。 核となるのは、幼い頃の占いがきっかけとなっている主人公ギルダの考え方。運命は定まっていて変えられないと。心と体は別だと。結婚したらお互いに努力しなくなり、子供を欲しがるから結婚しないと。それらがこの物語を動かして行く。そして最後の最後に、彼女は運命と闘う気になるのだが、ここから先は劇場で見て欲しい。 公開2日目の初回、銀座の劇場は55分前についたら誰もいなかった。35分前になってやっと7〜8人。ほとんど中高年のオヤジで、若いカップルが1組。 25分前に開場して、この時点で15〜20人くらい。最終的には710席に50人くらい。男女比は6対4で男性の方が多かった。たぶん男性は胸を露出しているシャーリーズ・セロン狙いか第二次世界大戦もの狙いただろう。でもこういう映画は女性が来ないとつらいかも。広告不足か全米での不評が影響したのか、ちょっと寂しい。プレミアム・シートには1カップル。予告編が始まってから入ってきた若い女性が、迷いながらプレミアム・シートに座ったが、注意には来なかった。なんだ、これってアリか。高いお金を払って座ったペアは気分が悪かったことだろう。 |