2004年10月31日(日)「コラテラル」

COLLATERAL・2004・米・2時間(IMDbでは1時間59分)

日本語字幕:丸ゴシック体、下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(with Panavision[数シーン]、Sony HDW-F900 CineAlta[HDTV]表記はなし)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定)

http://www.collateral.jp/
(入ったら音に注意)

ロサンゼルスの空港に1人の男(トム・クルーズ)が降り立った。彼はそのまま1台のタクシーを捕まえると、700ドル出すから一晩貸し切りにしろという。自分の高級ハイヤー会社を持ちたい夢があるマックス(ジェイミー・フォックス)は、しぶしぶ引き受けるが、最初の訪問地でタクシーの屋根の上に死体が落ちてきて、男が殺し屋であることを知る。

84点

1つ前へ一覧へ次へ
 すごい。最後まで目が離せない。このスリルとサスペンス。一言で言えばアクション映画なんだけれど、サラリと描かれる殺し屋の男の生き様がすごく醒めていて怖いほど。妙な暖かさを見せるかと思えば、顔色一つ変えずに平気で人を殺してしまう。まずこれがすごい。

 そして何か胸に迫ってくるものがある。一体何なんだろう。冷酷な殺し屋のクセに、完璧なワルに見えないからだろうか。トム・クルーズらしい愛嬌がキャラクターにあるからだろうか。よくわからないが、とにかく不思議な感じだ。

 しかも、大都会の夜景がとてつもなくキレイに捕らえられている。思わず見とれるほど。このシズル感あふれる夜景の艶は、フィルムではなくソニーのHDTVカメラの感度の高さゆえかもしれない。ただし、一部走査線が目立つカットがあるのと、素早いパンだと画面がカクカクなってしまうところにビデオっぽさがでてしまっているが。

 念のために書いておくと、撮影にはフィルムも使われていて、エンド・クレジットではパナビジョンの商標がでる。公式サイトのプロダクション・ノート(たぶん劇場で売っているプログラムにも載っているはず)によれば、全体の80%がDVカム撮影、残り20%がフィルム撮影だったらしい。たぶん室内シーンだろう。ついでに、マックスの乗るタクシーは17台も使ったということだ。

 そして曲のカッコよさ。特にマックスの好みの曲として前半に車内に流れる曲がいい。タクシーの中から見る都会の夜景にぴったり。このアルバムは買いかも。

 銃は「月刊Gun」誌で紹介されていたように、トム・クルーズが使うのがH&K社のUSPというオートマチック。なんと.45ACPモデルだ。捜査に当たるファニング刑事(マーク・ラファロ、持っているのはどうもあとで出てくるS&Wオートと同じものを使い回しているらしい)が被害者は.45で撃たれたと言っている。最近は.45の空砲も簡単に用意できるらしい。しかもカスタム化されていて、フィンガー・レストの付いたマガジンと、指掛け部分を大きくしたスライド・ストップが装着されているらしい。装弾数は12発+1(約室内)。トム・クルーズとマイケル・マン監督で相談して決めたという。

 そして撃ち方は、ボディ・アーマー(防弾チョッキ)に対処したダブル・タップというヤツ。レスリー・チャンの「ダブルタップ」という映画があったけど、あれと同じ。ダブルクリックと一緒で、素早く二度続けて叩くこと。それが転じて素早く2発撃ち込むこと。これを街の2人のチンピラ相手にやって見せる。トム・クルーズは銃を向けられても近づいて行き、手が届く距離でそいつの銃を左手で払いのけつつ、右手で素早くUSPを抜くと腰だめのまま胸を狙って2発撃つ。それから体を90度回転させるとも隣にいた男を、今度は腕を伸ばしてほととんど狙わずに胸に向けて2発撃つのだ。

 これは見事としか言いようがない。早送りをしているようには見えないのに、ものすごく速い。週2回以上射撃場に通って訓練を受けたらしい。

 ラスト、ガードマンから奪って使うのがS&W・M5906(といってもバリエーションが多く、フレームなどの刻印を見ないとわからない)オートマチック。こちらは9ミリなので15発+1(約室内)。

 ジャズ・クラブでオーナー兼プレーヤーのダニエル(バリー・シャバカ・ヘンリー)を射殺するのはルガーMl.Iのサイレンサー付き。Gun誌によればダミーの筒がついているだけで、空砲は全くマズル・フラッシュの出ないソリッド・プラグ弾が使われたという。頭に3連射。それもかなり速い。眉間の辺りを撃っているが、プロの殺し屋が22口径で頭を撃つとしたら、確実に殺害できる鼻の下を狙うべきだろう。頭蓋骨の上部は被弾経始に優れていて、22口径だと弾かれてしまうことがあるという。

 クラブにFBIの特殊部隊が突入する場面では、いまや特殊部隊ご用達のM4カービンやG36Cなどが使われている。

 タクシー・ドライバーのマックスが殺し屋のヴィンセントに言われてショックを受ける言葉があるのだが、マックスが受けただろう衝撃をボクも受けてしまった。たぶんヴィンセントの言うことは正しい。いわく「一般人は夢があるとか言いながら、それを本気でやろうとしない。ある日夢がかなうはずだと言いながら、ただテレビを見て1日が終わってしまう。そしてある日、老いたことを知るんだ」というような内容のことを言うのだ。リスクを冒さないんだと。これは効いた。グサッときた。確かにヴィンセントは殺し屋だが、何か目的を持ってリスクを冒している。それは犯罪だが、食べて行くために努力している。自分はどうだ。目標を持って本気で努力しているか。

 単なる娯楽作品のつもりで見て、とんでもない問題を突きつけられた。正直、参った……。

 疑問だったのは、ラスト近く、ビルに入ろうとしてマックスがヴィンセントから盗んだUSPで撃とうとすると引き金が引けない。見た感じハンマーは落ちていて、安全器もかかっていないようだったが、やはり慌てていて安全器を外すのを忘れたという設定か。しかし、マイケル・マン監督は銃が好きで、トム・クルーズと一緒に射撃場に通ったくらいだから、知らないはずはない。とすると、やはりハンマー・ダウンで安全器がかかっていたと考えるか、ダブル・アクションのトリガーをうまく引けなかったと考えるしかない。オートマチックのダブル・アクション・トリガーは意外と重く、一気に引かないと引けないので、シロートのマックスは引けなかったと考えるべきではないだろうか。それで思わず安全器がかかっているのではないかと確かめて、あらためてトリガーを引き直したと。

 公開2日目の2回目、35分前くらいに着いたらロビーには25人くらいの人。すぐに列を作るように案内があった。20代後半以上の人ばかりという感じで、男女比は半々。30分前に前回が終了し清掃に。25分前に入れ替えとなって場内へ。この時点では50人くらい。

 最終的にはプレミアム・シートへ15〜16人が座り、612席に4.5割ほどの入り。少ない。もっと入っていい作品。予告編のピントは甘かった。

 本編には例によって画面撮影防止(トレース)用のドットが入っていた。目障り。


1つ前へ一覧へ次へ