2004年11月3日(水)「キャットウーマン」

CATWOMAN・2004・米・1時間44分

日本語字幕:手書き書体、下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.warnerbros.co.jp/movies/catwoman/
(音に注意)

化粧品会社の広告部門のグラフィック・デザイナー、ペイシェンス(ハル・ベリー)は、社長から広告デザインのやり直しを命じられ、深夜、それを届けに行って新製品開発の影に隠された恐ろしい秘密を知ってしまう。そしてそれを気付かれ、排水溝から逃げるとき廃液を放出され死んでしまう。しかしそこへ猫のエジプシャン・マウ、ミッドナイトが現れ、彼女に命を授けるのだった。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 前評判があまり芳しくなく、IMDbでは10点満点で3.3と信じられないほどの低得点。ワースト100に入っていて85位なものだから、とんでもない作品を予想して行ったのが良かったのか、結構楽しめた。まあハル・ベリー・ファンだからということで、始めからハードルが低かったのかもしれないが。

 こんなに評価が低いと、「007/ダイ・アナザー・デイ」からスピン・オフしそうなハル・ベリーが演じた女エイジェント、ジンクスを主人公としたスパイ映画は実現しないかもしれない。

 たしかにハル・ベリーの猫演技がわざとらし過ぎるというのはあると思う。しかし、これは監督の指示だろうし、彼女とてやりたくなかっただろうが仕事ということで割り切っているのではないだろうか。

 キャットウーマンになり切ってしまってからよりも、宝石店を襲う強盗をやっつけるシーンがとにかくイイ。顔の上半分を完全に覆ってしまうキャットウーマンのマスクより、宝石店のショーウィンドー内にある目のところだけを覆うマスクの方がセクシーだし、あざとく露出度の多いキャットウーマン・コスチュームより、普通の革ジャンを身に着けた姿の方がむしろカッコいい。

 隣で深夜まで大音響の音楽をかけてパーティをやってるヤツらのところへ文句を言いに行くところがまたグッド。何もそこまでやらずとも、ボリュームを回すかスイッチを切るだけでイイではないかとも思えるが、スカッとするのは確か。実生活でもこんなふうに迷惑をかけてるヤツらに言えたら気持ちいいだろう。実際には言ってしまうとかえって気分が悪くなることの方が多いが……。

 相手役のセクシーな刑事を演じているのは、ベンジャミン・ブラット。ペルー系の人で、メリル・ストリープとケビン・ベーコンが出た「激流」(The River Wild・1994・米)で人のよさそうなレンジャーを演じていた人。

 敵役は、もう普通の美女役ができなくなってしまった感のあるシャロン・ストーン。ヘアが話題になった「氷の微笑」(Basic Instict・)の続編はどうしてしまったのだろう。もうすぐ50歳だし……とても見えないけど。リメイクの「グロリア」(Gloria・1999・米)が最悪で、「キング・ソロモンの秘宝」(King Solomon's Mine・1985・米)とか「イヤー・オブ・ザ・ガン」(Year of the Gun・1991・米)の時はめちゃくちゃ正統派美女で良かったのに……。

 男の方は「マトリックス・リローデッド」(The Matrix Reloaded・2003・米)のメロビンジアンを演じたフランス生まれのランバート・ウイルソン。冷酷な感じがとてもいい。

 監督はフランス生まれのピトフ。これは子供のころのあだ名なんだそうで、それをそのまま芸名(?)にしたらしい。もともとは特殊効果(視覚効果)を手がけていた人で、監督としてはこの前にジェラール・ドパルデューが出た「ヴィドック」(Vidocq・2001・仏)なんていう凡作を撮っている。なんで本作の監督を任されたんだろう。ボクは悪いと思わないが、アメリカでは最低の評価を受けてしまったわけだし……。次作が鍵となるかもしれない。あるとすればだが。

 前作でもうフィルムでは撮らないと宣言していたはずなのに、本作ではちゃっかりフィルムカメラを使っている。彼の主張は通らなかったのだろう。もし使っていたら前作のように色をいじりまくり、妙な効果を使いまくり、もっと酷い作品になっていたかもしれない。

 視覚効果のピトフらしく、映像的には見るべきものがたくさんある。ただそれが空回りしているのは否めず、たとえばやたら俯瞰が多く、カメラは鳥のように上から舞い降りて被写体の周りを回る。ここぞという1〜2回くらいはいいが、多用されると鼻に付く。カメラは落ちつきなく常に動き回るのだ。これはイカン。

 でもいいカットもあって、カメラだけがゆっくりとパンするのに、写っている人々はぶれるほど素早く動いていたり、建物が反射して写っている窓ガラスに寄って行くと、そのまま建物にズームしてその場所へ行ってしまったり、ショーウインドーに写ったネックレスが寄って行くとそのまま現物になったり、面白い絵は多い。内容が追いついていないと、だからどうしたってことなんだけど。

 キャットウーマンの武器は手袋に付けられた宝石らしい爪とムチ。使い方を特訓したらしく、うまい。刑事のトムが持っているのは定番ベレッタM92で、敵のボディカードはS&Wのオートマチックを使っていたりする。ほかにシルバーのPPK/Sも出てくるが、どれも最近の映画にはよく登場している。流行でもあるんだろうか。

 銃声はとても大きく、リアルでいい。音響効果のいい劇場で聞くと、体が振動するくらい低音が効いている。びっくりした。

 ハル・ベリーが乗り回すバイクは、劇場に展示されカタログが配られていたドゥカティ・モンスター(http://www.ducati.com/)。客を見るのかパンフをくれなかったので、どのモデルだったのかはよくわからない。150万位だったと思うが。

 公開初日の初回、新宿の劇場は55分前オヤジが1人。45分前で7〜8人、30分前には15人くらいになり、20分前で30人くらい。男女比は7対3で男性が圧倒的に多い。やっぱりハル・ベリー狙いか。老若比は最初半々くらいだったが15分前に開場した時点では6対4で中高年の方が増えていた。この時点てで列は50人くらいに。

 最終的にはペア・シート以外全席自由の1,064席に2〜2.5割ほどの入り。うーむ、全米の酷評が伝わってしまったのか。もうちょっと入ってもいい気がするが。

 予告編ではなかなか場内の明かりが消えず、明る過ぎて効果半減。最新の劇場ならスクリーンが明るいのでいいのかもしれないが、この劇場ではいかがなものか。イライラした。はやく明かりは消して欲しい。しかも予告のピントは甘い。本編までもかと冷や冷やしたが、良かった本編はちゃんと合っていた。

 本編に画面撮影防止(トレース)用のドット入り。目障り。それにしてもハル・ベリーの歯って白いなあ。


1つ前へ一覧へ次へ