日本語字幕:手書き書体、下、根本理恵/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル
(韓国18指定、日R-15指定)
ある日、突然、監禁された家族持ちの男オ・デス(チェ・ミンシク)は、15年後にいきなり開放される。その間にオ・デスは妻殺害の犯人にされるが、時効が成立していた。オ・デスは知りあった若い女性ミド(カン・ヘジョン)に助けてもらい、一緒に暮らし始める。そして監禁した男イ・ウジン(ユ・ジテ)が現れ、なぜ監禁されたか解き明かせと告げるのだった。 |
すごい。まいった。この作品にみなぎるパワーに圧倒される。カンヌは基本的に映画の芸術性を問うコンペティションなので、受賞作品はだいたいボクのようなパンピーには面白くない。それが、2004年はクエンティン・タランティーノが審査委員長になったということで、多少はエンターテインメント性が評価されるようになったのか……よくわからないけど。 あえて難点を挙げれば、暴力に満ちているということ。「ソウ」くらい、あるいはそれ以上のインパクトがあった。どう見ても、タコに生きたままかじりつくのは特殊効果には見えない。そしてのどを詰まらせ気絶する。むむ、夢に見そう。 原作の日本の漫画は、土屋ガロン(=狩撫麻礼、「ボーダー」「ア・ホーマンス」など)作、嶺岸信明・画で「漫画アアクション」に1996年11月12日号から1998年7月21日号まで全79話にわたって連載されたそう。韓国でもこの映画のおかげで人気が再燃しているという。日本でもそうなるのではないだろうか。ボクもぜひ読みたいと思った。お金さえあれば。 漫画では10年間監禁されるのが、映画では15年になっているそうで、たぶんそれは主人公が殺人犯にされてしまうので、その時効(日本と同じなら)15年が必要だったのかもしれない。とにかくそれは発狂するほど長く、彼は数回自殺を試みる。その辺の描写も実にうまい。 アクションで言えば、くぎ抜きのついたハンマー1本を武器に、20人くらいの暴力団員と闘うところがスゴイ。細長い廊下をシネスコの画面を生かして横にカメラが移動しながら1カットで見せる。昔、林海象監督が「ZIPANG」というSFで、狭い橋の上で高嶋政宏が50人切りを1カットで見せるというのがあったけれど、あの比ではない。ハンマーだから流れるように人の間をすり抜けて行けばいいというわけにはいかない。1人1人、足とか手とか頭とかを殴る動作が必要なのだ。これを1カットで横に移動しながら見せるのだ。 ブロダクション・ノートによると、この1カットは2分40秒で、全編を緻密な絵コンテで設計していた監督が、現場で1カットで撮ることにし、何度かテストした後、本番は1回でOKだったという。これは暴力に満ちているけれど、見る価値がある。もうアートの域なのだ。 さらにいいのが、これだけの暴力にあふれていながら、コメディの要素まで入れて、ちゃんと笑わせてくれること。なかなか面白い。たいていは滑るものだが、ピタっと決まる。これは脚本と演出が絶妙ということだろう。 しかもエロティックなシーンも韓国映画としては相当過激だ。確か、セリフのある女性は2人しか出てこなかったと思うが、2人ともが美女で、2人ともが脱いで美しい胸を露出している。かつて日本の漫画は猥褻だとして持ち込めなかったあの韓国でだ。そのせいもあってか韓国では18禁映画だが。これも特筆すべきで、見る意義があるだろう。 鬼気迫るスゴイ演技を見せてすばらしいのは、チェ・ミンシク。すぐに思いつくのは日本でリメイクまでされたブラック・コメディ「クワイエット・ファミリー」(The Quiet Family・1998・韓国)。いんちき臭いおじさんをいやらしく演じていた。日本で大ヒットした「シュリ」(Swiri・1999・韓)でも北朝鮮兵としてチラリと出ていた。 謎の男を演じるのがユ・ジテ。「アタック・ザ・ガス・ステーション」(Attack the Gas Station・1999・韓)の暴走する若者、「リベラ・メ」の若手消防員などで見かけた。イケメンだし、いい感じだと(特にエレベーター内のラストがいい)思うが、本作の設定で行くと主人公の年齢と違い過ぎる気がする。俳優の実年齢で13歳も違うと、事件の15年前があまりに幼すぎで、ここまでの大きな陰謀をたくらめるとは思えない。チェ・ミンシクは結構老けて見えるとしても、15年前だと26歳くらいで、冒頭描かれる飲んだくれオヤジの年齢としても若過ぎる。やはり監禁10年が精いっぱいだったんじゃないだろうか。謎の男も15年前にせめて25歳(つまり今40歳)くらいでないと説得力が無い。ここが唯一、惜しかった。 相手役のカン・ヘジョンは、なんなんだろ。この美しさ。ちょっと沢口靖子に似ていなくもない。日本的な顔だちであどけない感じがまたたまらない。相当過激なベッドシーンも、トイレシーンまで体当たりで(?)というよりは実に自然に演じている。モデル出身だそうで、すでに初出演映画「バタフライ」(2001年、東京国際映画祭のみで上映)で来日を果たしているらしい。でも、ボクにはインタビューなどで見るよりこの映画の中の彼女の方がキレイに見えるのだが、やはりカメラマンと監督、そしてメイクさんの力か。 もう一人の美女、主人公の同級生ウジンもいいが、名前がわからない。プログラムには載っていたのだろうか。公式サイトにも名前はない。IMDbでは3人くらい女性の名前があって役名が記されていなかった。むむ、気になる……。 書こうと思えば、「モンテ・クリスト伯」とかいろいろ要素はあるが、キリがないので、後は見てのお楽しみということで、最後に銃のことを。最後にはレミントンのダブル・バレル・デリンジャーが登場する。なぜ、この銃だったのか、これはぜひパク・チャヌク監督(「JSA」(JSA・2000・韓))に聞いてみたい。パク監督は「JSA」でも銃にこだわっていたので、何か意味というか意図があったはずだ。なぜこんなクラシックな銃だったのか。 公開2日目の初回、新宿の劇場は60分前についたら早過ぎて1階のシャッターが開いていなかった。さすがに8時じゃ開いてないか。待っていたのは20代らしい男性1人。50分前にシャッターが開き、4Fの劇場へ。この時点で男性3人。ボク以外は20代。むむ。 35分前に開場となったが、すでに列は10〜12人くらいに。老若は半々で(良かった)、男女比は7対3で男性が多い。原作が男性向けだったということだからだろうか。ここは指定席はないが縦に細長い劇場で、イスが低いからかなり全席の人の頭が邪魔になる。できるだけ前に方に座る。 30分前から人が増え始め、R-15なのに下は中学生くらいからいて、上は白髪の老人まで。中心は20代後半から40〜50代というところか。 上映前に場内に流れている音楽は、非常に音質悪し。違うスピーカを使っているからか。ボリュームが大きいだけでドンシャリ系の鳴り。予告編も画質が悪く、途中何かのトラブルで音が出なくなり、何が何だかわからないまま本編へ。本編では最初から音が出て良かった。 最終的に224席ほぼ全席が埋まった。早朝からに凄いなあと思ったら、そうか早朝の初回のみ1,000円均一だった。普通最終回を割引するもんなのだが……。わざわざ朝早く起きて行ってるのに、混んで迷惑だからやめて欲しいなあ。 入場プレゼントがあって、純銀を使った「韓国コスメ試供品」(練り歯磨きと石鹸のセット)をもらった。話題になりつつあるヤツだ。いい映画見て、試供品までもらってとっても得した感じ。 |