2004年11月16日(火)「爆裂都市」

EXPLOSIVE CITY・2003・香・1時間49分

日本語字幕:手書き風書体、下、瀬尾友子/1.66ビスタサイズ/ドルビーデジタル



http://www.bakuretsu.jp/
(簡易の劇場案内あり)

香港の空港に中国政府の要人が下り立つ。厳重な警戒態勢をしく中、謎の女(白田久子)が現れその要人に3発の銃弾を浴びせ逃走する。しかし逃走途中、正体不明の狙撃者に狙撃され、重傷を負って逮捕。捜査に当たることになったミン刑事(アレックス・フォン)は女の正体を突き止めようとするが、狙撃のショックで記憶を失っていた。そこへ、ミン刑事の家族が誘拐されたという連絡が入る。

70点

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 うーん、……。あの凡作「カラー・オブ・ペイン 野狼」(野狼・2001・日/香)を撮ったサム・レオン監督の、またまた日本と香港合作のアクションもの。澤田謙也が出ないだけで、たいした変わりなし。またまた凡作。しかも、意図したのかどうかわからないが、全体に蛍光灯で撮影したようなミドリかぶりした色調。解像度は低くないのにこれはどうしたことだろう。

 アクションもたいして良くはないが、実銃ベースのプロップ・ガンは迫力があってそこそこ楽しめる。ただ、デジタルで後から足されているのが見え見えの紙に描いたようなマズル・フラッシュが興ざめだが。

 今回つらいのは、サム・レオン自身が手がけたという脚本。何の説得力も無く、当然リアリティもない。展開は強引で、観客は納得できないままおいてきぼり。おーい、あんたはどこへ行くんだあ〜って感じ。

 そのせいか、役者も納得できないまま演じている感があって、ノッている人は1人もいない気がした。主人公のミン刑事を演じる「ダブルタップ」(Double Tap・00・香)のアレックス・フォンもがんばってしいるが、がんばっているだけにますます空回りに見える。かろうじて管理官のチョンを演じる「フルタイム・キラー」(Fulltime Killer・2000・香)のサイモン・ヤムがいいが、出番も少なく演じるキャラクター自体に説得力が無く損をしている。

 今回、特に悲しいのは日本人出演者。まずプロの殺し屋を演じる白田久子が悲しい。かわいらしい役者さんなので、プロの殺し屋の説得力まったくなし。サングラスをして表情を隠しても、あらゆる所作にかわいらしい女性らしさが出て、訓練を受けたプロに見えない。つまりのっけからの映画にはノレないことになる。

 たとえば「クローサー」(So Close・2002・香)に出てくる香港の女優さんのスー・チーやヴィッキー・チャオやカレン・モクくらいできれば、観客をノセて信じがたい話も楽しめただろうに。やっぱり香港の女優さんとはアクションにおいて差があり過ぎる。チャン・ツィイーだって、あれだけ美しくてもアクションの切れは抜群だしなあ。

 さらに悲しいのがソニー千葉。どうして、あんなに低音の作り声を出すのだろう。「キル・ビル」(Kill Bill:Vol.1・2003・米)でもその傾向はあったが、どうにか抑えられていた。それが本作では短いセリフが多いものだから、存在感を出そうとしてかかえって作り声になってしまったらしく、こっけいなほど。客席から彼のセリフになると失笑がこぼれていた。

 ご本人は意識していないのかもしれないが、つくり声だから長いセリフになると声が普通の調子になり、そこはまともに聞ける。普通がいいのに……。

 ただ、銃の撃ち方はさすが元「キーハンター」(1968〜1973・TBS)うまい。クエンティン・タランティーノ構え(銃を水平に寝かせて構える。実銃だと全く実用的ではない)は興ざめだが、他はいい。ちゃんと反動をつけようとしているところもいい。実際問題として実銃ベースのプロップ・ガンはそこそこの反動があるので、手で反動を付けなくてもいいのではあるが。むしろ手ではね上げると作動不良の原因になってしまう。それにプロップ・ガの実際の反動のタイミングとズレるので、カクカクした二重反動になってしまう。日本映画でまったく反動の無い電着ガンやモデルガン・ベースのプロップ・ガンを長年撃ってきたクセなのだろう。

 それにしてもベレッタM1934のニッケル・メッキ・モデルというのはシャレている。いい。他には、最初の空港での狙撃にチラリと出るのがPSG-1かと思ったら、公式サイトからリンクされている東京マルイによると、1ランク下のSG-1らしい。

 ミン刑事の別居中の妻を襲うイレズミ男が持っているのはたぶんCZ75。この役者さん、結構いってしまっている感じがうまく、今後どんどん出てきそうだ。残念ながら名前がわからなかった。

 女殺し屋ジェイドのルーム・メイトが持っているのは定番ベレッタM92。襲いかかってくるテロリスト一味はなぜかほとんどサブマシンガンで武装していて、イングラムやウージーやベレッタM12、H&K MP5などで武装している。

 ラストの方ではM16も出てくるが、京マルイによると、M16A2らしい。ミン刑事はこれまた定番グロック。

 なかなか音質も音響設定もすばらしい。狙撃シーンでは銃声が後ろから聞こえ、弾着と応戦が前方から聞こえる。なにしろドルビー・デジタルだ。このへんはいいんだけどなあ。

 なんとエンド・クレジットには協力H&Kと出た。ドイツの銃器メーカーが協力しているのか。まあ十分考えられることだけど。ただH&K協力といってもSG-1とMP5くらいしか出ていないが。

 公開4日目の新宿でのレイト・ショー、20分前に着いたら劇場が暗く10分前にならないと開かないという。出直して10分前に着いたら誰もいなかった。すぐに開場。5分前に増え出して、若いカップル1組、30代くらいの女性3人連れ、30代くらいの男性サラリーマン、20代くらいの女性2人、20代くらいの男性、オヤジ4人くらいで、全15人弱。まあ、こんなもんでしょ。


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