一部DLP上映/ビスタサイズ/ドルビーデジタルEX、dts ES
蒸気機関全盛の時代、魔法使いと普通の人間が共存していた頃、ある国の女性向けの帽子屋に、帽子職人の18歳の少女、ソフィ(声:倍賞千恵子)がいた。しかしある日、兵隊達にからまれているところを魔法使いのハウル(声:木村拓哉)に助けられたことから、店にハウルを探しているという荒れ地の魔女(声:美輪明宏)がやってくる。その横柄な態度に腹を立てたソフィはすぐに店から出ていくように命じるが、それを怒った魔女はソフィーに呪いをかけて90歳の老婆にしてしまう。 |
面白いなあ。約2時間、完璧におとぎの世界の住人になってしまった。古き良き時代、不思議な魔法、奇妙な蒸気機関の機械、愚かな戦争、ドキドキする恋、家族、愛、夢……そんなものがぎゅっと詰まった缶詰めを開けたみたいというか。 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの原作「魔法使いハウルと火の悪魔」を読んでいなかったので(読んでみたい気になった)、予告編から想像して、本当に90歳のおばあちゃんの話で老人問題なんかをテーマにした映画かと思ったのだが、18歳の少女の恋のお話だった。 もちろん、全編に宮崎アニメらしさがあふれていて、主人公は始まってすぐ空を飛んでしまう。元気なばあさん、奇妙な相棒、羽ばたき飛行機も出てくる。宮崎ファンにはたまらない映画だろう。絶対に見るべきだと思う。見終わった時、優しい気持ちになって、たぶん少し笑顔で劇場を後に出来ると思う。 この映画には明確な悪人が出てこない。ちゃんと悪役的な人物はいるのだが、根っからの悪人では なく、それぞれに事情があったり、根はいい人だったりする。ソフィだって、呪いをかけた相手に怒ってはいるが、ちょっと優しさを向けたりもする。ものすごい憎しみもないのだ。あるとすれば、それは愚かな戦争という行為に向けられたもので、だれか個人を攻撃もしていない。 魔法使い、弟子の幼い子、火の悪魔、魔法使いの使いの犬、呪いをかけられたカブの頭の案山子、老婆にされてしまった少女と、どういうつながりなのかよくはわからないものたちが、1つの大きな家族となって深い絆を結ぶ。これがいい。 ただ、よくわかりにくい部分もあって、なぜ王に仕える魔女サマリン(声:加藤治子)は戦争をやめることが出来るのか。そして、やめる気になったのか。火の悪魔のカルシファー(声:我修院達也)とハウルの関係。なんでラストはああすると元に戻るのか。どことどこの国が戦っているのか。その理由は……とかいろいろあるのだが、それらがわからなくても、まーったく問題なし。大丈夫。ちゃんと楽しめる。 一部の劇場はDLP上映(デジタルデータをそのままフィルムに変換せずに上映)なので、その劇場で観たのだが色がキレイ。草原の緑とか空の青のクリアさ、みずみずしさが素晴らしい。 一番スゴかったのは、倍賞千恵子の声。1941年生まれというから18歳の少女は無理があるとしても、物語の中で90歳になったり18歳に戻ったりするのだが、本当に声が歳を取ったり若返ったりするのだ。もちろん美輪明宏もやっているが、倍賞千恵子ほど驚きはなかった。なにかデジタル的な処理をしているのだろうか。本当に驚いた。素晴らしい。エフェクト無しだとしたら、倍賞千恵子の能力はとてつもないと思う。まるでマジックだ。ぜひ音の良いデジタル館でご確認いただきたい。 公開2日めの初回、銀座の劇場は8時45分という早朝からの上映で、65分前(7時40分!!)に着いたらすでに30〜40人ほどの行列。この人達は一体何時から並んでいたんだろう。そして起きたのは何時?みんな朝日が昇る前に起きているに違いない。すごいなあ。 男女比は4対6で女性が多い。下は小学生低学年くらいから上は中年まで、まんべんなくいる感じ。ただし老人はほとんど見かけなかった。 ちょっと肌寒い感じの日だったので、50分前に開場してくれて助かった。思わずコーヒーを買ってしまった。お菓子やサンドイッチなどを買っている人が異常に多い。やっぱり朝食をとらずに来た人達が多いのだろう。 初回のみ全席自由で、17席×3列のカバー席も自由。この時点で50〜60人。どんどん増え続け、5分前には654席の7割、最終的には8割が埋まった。早朝でこれはスゴイことだと思う。さすが宮崎アニメ。 上映前にDLPのデモがあり、一部から「おおっ」というおそらく色に対する驚きの声が上がった。しかもドルビーEX(dtsESには劇場が対応してないのでたぶんこちちらだろう)の7.1chサウンドは大迫力。 しかし、初回のみなぜか予告が無く、「スター・ウォーズ最終作」の予告が上映されるという噂は噂のままに終わってしまった。「スター・ウォーズ最終作」自体に対して興味はないが、予告編は見たかった。 |