2004年12月11日(土)「五線譜のラブレター」

DE-LOVELY・2004・米/英・2時間06分(IMDbでは125分)

日本語字幕:手書き書体、下、松浦美奈/シネスコサイズ/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.foxjapan.com/movies/delovely/
(全国劇場案内もあり。音に注意)



1920年代のパリ、上流階級のパーティーでピアノの弾き語りをしていたコール・ポーター(ケビン・クライン)は、「パリで最も美しい離婚女性」リンダ・リー(アシュレイ・ジャッド)と運命的な出会いをする。コール・ポーターには男色の癖もあったが、彼の音楽の才能を見抜いたリンダは、二人で夢をかなえようと告げ、結婚な踏み切る。

73点

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 前半は往年のハリウッドを彷彿とさせるハッピーなミュージカル。ところが後半は楽しい夢が覚めてしまったかのような悲惨な話になり暗澹たる気持ちに。実話に基づいているわけだから勝手にハッピー・エンドにはできないわけで、これはしようがないとしてもやり方はあったのではないだろうか。この時期見るのにどうなんだろう。もっと心がほっこりするものであって欲しかったような気も。

 ただ、意外と昔からミュージカルには悲惨で悲しい話が多い。それをストレートに描いたら、誰もお金を払っては見たくなくなるようなものになってしまう。それを美しい音楽に載せると、緩和されて取っつきやすいものになるというわけなのだろう。「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1965・米)、「ウエスト・サイド・ストーリー」(West Side Story・1961・米)なども考えてみると結構な悲劇だ。

 映画が終わって場内が明るくなる頃、かなり周りから鼻をすするグシュグシュという音が聞こえてきた。ほとんど女性だったと思うが。

 アメリカの音楽家を描いたミュージカルは、ジョージ・ガーシュインの生涯を描いた「アメリカ交響楽」(Rhapsody in Blue・1945・米)、ジェームズ・スチュワート主演でグレン・ミラーを描いた「グレン・ミラー物語」(The Glenn Miller Story・1954・米)、ベニィ・グッドマンを描いた「ベニィ・グッドマン物語」(The Benny Goodman Story・1955・米)、ダニー・ケイ主演でレッド・ニコルズを描いた「5つの銅貨」(The Five Pennies・1959)……などがあって、どれも素晴らしい物語で、映画で、ミュージカルだが、はたしてこれらに加えていいか。正直に言うと、悪くはないが微妙なところ。

 コール・ポーターが男色だったというのは意外だった。アメリカでは有名な話なのかもしれないが、初めて知った。別にそれでどうこうということはないが、予告からは妻とのラブ・ストーリーという印象があったので、驚いた。アーティストというのは感性が人一倍ゆたかな人達だろうから、いろんな愛の形があるのだろう。ただ、映画からは、それが愛というよりは快楽だけのような印象しか得られなかったが……。

 とにかくいい曲が満載。「夜も昼も」「エニシング・ゴーズ」「ビギン・ザ・ビギン」「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」「エヴリ・タイム・ウィ・セイ・グッドバイ」……などなど。これもコール・ポーターだったかと。感心して聞いてしまった。

 登場するミュージシャンも豪華で、エルヴィス・コステロ、ナタリー・コール、シェリル・クロウ、アラニス・モリセット……有名ミュージシャンが11人も登場して見事な歌声を聞かせてくれる。これもすごい。お得。

 残念というか物足りない感じがしたのは、スランプがほとんど描かれていないこと。あるにはあるのだが、すぐに脱出してしまって、あまりにも簡単に名曲が次々と生み出されたような印象。実際そうだったのかもしれないが、ほかのアメリカの音楽家を描いたミュージカルにはあったような気がする。映画の焦点は音楽より、彼の人生にあてられていたということかもしれない。主役の老けメイクはリアル。

 公開初日の初回、銀座の劇場は55分前に着いたらまだボックス・オフィスが開いておらず、その前に3人の列。ここは前売り券があっても必ず当日券と交換しなければならず面倒くさい。45分前に6人ほどになり、30分前に20人くらいになった。25分前、ようやく窓口が開き、エレベーターで上へ。

 初回のみ全席自由で、以降は全席指定らしい。朝一に交換しておけば、夕方でも余裕で入場できるということだ。

 226席のうち9席×2列×左右にカバーがかかっていた。ただ座席は階段状になっているスタジアム形式なので、どの席からも比較的スクリーンは見やすい。最終的には8割ほどの入りで、8時45分からという早い時間にしては素晴らしい入り。20代から老人まで幅広くいたが、中心は中高年。男女比はほぼ半々くらい。若い人は女性が多かったが。

 カーテンなしで、またまたた予告編なしのいきなり上映。味もへったくれもない。関係者らしい一団がいたがあまり場内に入ってこなかったので、まっいっか。それにしても後半場内が寒くなってきたのはなぜ。まさか演出じゃないよね?

 初日プレゼントで、クリニークのシンプリーという香水のサンプル版をもらった。でも、たぶんこれって女性用だよね。


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