2005年1月30日(日)「スパイ・バウンド」

AGENTS SECRETS・2004・仏/伊/西・1時間50分(IMDbでは109分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(2.2比率上映?、マスク、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts

(スイス16指定)

http://www.spybound.jp/
(全国劇場案内もあり。音に注意)

フランス対外自治総局DGSEのグラウセ大佐(アンドレ・デュレリエ)は、武器商人イゴール・リボウスキー(セルジュ・アヴェディキャン)が武器の輸出に使っている貨物船アニタ・ハンス号を沈めるようにジョルジュ(ヴァンサン・カッセル)のグループに指令を出す。ジョルジュは女スパイのリザ(モニカ・ベルッチ)と夫婦を装いモロッコのカサブランカに潜入する。

74点

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 実話に基づいた怖いリアルなスパイ・ドラマというかアクション。まるで描かれた全てが真実であるかような気がしてくる。セリフが極端に少ないのもいい。重くズッシリと来るが、それほど後味は悪くない。ただ、こういったスパイの話は本当にあって、政治や国際ビジネスの世界ではこんな話が良く展開していると言われれば、そうなんだろうと思う。特に最近のイラクをめぐるアメリカやフランスの動きを見ているとそう思える。

 最近ではロバート・レッドフォードとブラッド・ピットが競演したトニー・スコット監督の「スパイ・ゲーム」(Spy Game・2001・米)でもそんな非情なスパイの世界は描かれていたし、まもなく続編が公開される「ボーン・アイデンティティ」(Bourne Identity・2002・米/独)や、ヨーロッパでは「暗殺の瞬間」(Sista Kontraktet・1998・スウェーデン)も似た雰囲気があった。

 ヴァンサン・カッセルとモニカ・ベルッチという実際の夫婦が出ているのに多少抵抗が無いわけでもないが、あまりそれを感じさせないようにはなっている。むしろモニカ・ベルッチは誰にも心開かず、ヴァンサン・カッセルがそれを追っている感じ。これは許せるだろう。不快なバイオレンス映画「アレックス」(Irreversible・2002・仏)よりはずっといい。

 リアルさを追い求めるためか、スカイ・ダイビング・シーンでは実際にヴァンサン・カッセルが空を飛んでいる。そしてモニカ・ベルッチもうねる大海原を実際に泳いでいる。この辺もいい。リアルな映画を作るためみんな本気なのだ。

 ただ、考えて見ればおかしなところもあった。空港の入管職員が手荷物の中から怪しげな白い粉を発見してすぐ舐めるのは、「ショウタイム」(Showtime・2002・米)でロバート・デニーロも指摘していたがありえない。もし麻薬ではなく青酸カリなどの毒物だったら死んでしまうではないか。

 それでも銃は流行りのものを使わず、自転車の空気入れに見せかけた自作のショットガンを使うなど、いい細部もたくさんある。高速道路での爆発シーンも本当に突発的にぶつかったように見える。また潜水シーンで使われているタンクは実際に軍が使用しているものだそうで、まったく泡が出ない。このへんも凄い。

 リアルにこだわった監督は、脚本も手がけたフレデリック・シェンデルフェールという人。2000年に劇場映画に監督デビューし、これが2作目とか。それまではTVの助監督をやっていたらしい。父親のピエール・シェンデルフェールも監督なのだとか。公式サイトで写真を見るとあまり若い人ではなさそうだが、今後の作品も注目だろう。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は50分前に着いたらオヤジが3人。45分前に8人になって、40分前には20人ほどに。ほとんどは35歳以上、特に中高年が多かった。何組か中年夫婦もいたが。

 30分前に開場し場内へ。2F席も含め、2列ある白いカバーのレディース・シート以外全席自由。15分くらい前から劇場案内を上映。

 2F席は15分前に30人くらいに。中年くらいの夫婦が5組ほどとあとはオヤジ。最終的には2Fは5割の入り。これはどうなんだろう。

 予告は、アニメの「ガンダムZ」に、タイトルが出なかったような気がするが、なかなか面白そうな「亡国のイージス」、「ベイブ」のチームが再び挑むアニマル・ムービー「レーシング・ストライプ」、チャン・ツィイーがオダギリジョーと共演する日本映画(!)鈴木清順監督の「オペレッタ狸御殿」、妙に音の良かった「阿修羅城の瞳」、なんかとても見たくなった「MAKOTO」、そして世紀の傑作かそれとも世紀の駄作なのか、ラジー賞候補に上がっている「アレクサンダー」、予告編だけで泣いてしまいそうになる「君に読む物語」。うーん、どれを見ようか。


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